moonlight 新一×快斗

トラベル／スタート（新一×快斗）

※トラベルシリーズのすべての始まり、ということに…(汗)。

――――――――――――――――――

工藤と付き合うようになって、ずっと互いの自宅を行ったり来たりしている。

て言うか、まぁ、ほぼ俺が工藤ん家に通ってるんだけど。

探偵と怪盗という互いの柵(しがらみ)と、実生活では男子高校生同士という恋愛事情も絡んで、はっきり言って、…はっきり言わなくても、俺たちの仲は〝お忍び〟だった。

そりゃ仕方ない。それについて別に文句があるわけじゃない。全然ないこともないけど。
公にできない分、余計に想いが募ったり、切なくなったり、連絡取れなくてイラついたり、刹那的に求め合ったりしてしまうわけだけど。

で、今回の話だけど……。

今度の連休どうすんの？ って話から始まって、それぞれの予定を伝えあって、珍しく互いに丸二日間予定がない事が分かった。俺の方の〝仕事〟のスケジュール的にも大丈夫だし、工藤大好きな謎の事件さえ起きなきゃだけど。
そしたらここらで一発、二人で一緒に小旅行なんぞどうか。という話になった。まじで？
照れくさいし、別に工藤ん家で過ごしたって同じ事だし、ヤメロヨこっぱずかしい。って言おうとしたけど、ふと頭の中で〝一度くらい、いいかな～〟って気持ちがプクッと湧き出てきちゃったんだ。
チラと見ると工藤は俺がなんて言うかじっと待っていて、その目が若干マジで、なんつーか……。へんにこだわって断る事もないか、普通に楽しくお出掛けすりゃいいんだ、と心の中で自分に言ってみた。
そうすると、なんだか急に楽しみになってきて、どきどきし始めた。

〝そーだな、まぁいっか、たまには外泊も〟と返事すると、工藤はキラッと目を輝やかせてからさっと視線を逸らして、横顔で〝だろ〟と言った。

すごく照れくさい気分になって、じゃあどこに行くかとか相談を始めても恥ずかしくってお互いの顔がちゃんと見れない。異様な(？)テンションのまま行き先を決め、ネットで宿の予約をしたら、なんだか――

なんだか、すごくハッピーな気分になった。
恥ずかしいけど。照れくさいけど。
でもものすごく楽しみなイベントの予定が出来たんだ。

二人で相談しながら、ワクワクして笑いながら、それでも心の奥底では〝そんなうまくいかねーんじゃないの〟とは思っていた。
毎日何が起こるか分からない俺たちだから。いまこうしてても、ヘタすっと今夜なにかの事件に巻き込まれて離ればなれになって永遠に逢えなくなってしまうかもしれないから。先の甘い夢は見ないようにこれまでもしてきたから。

――果たして今度の連休、二人でちゃんと出掛けられるんだろうか？

なんだかドキドキして宿題忘れそうだ。普段も忘れるっつーか、時間なくて朝ガッコ行ってから慌てて片付けたりするけど。でも今は時間があっても手につかない。ホントどきどきしちゃって。俺、自分がこんなに喜ぶと思わなかった。こんなに普通のイベントに飢えてたとは思わなかった。

どきどきする。

どきどき。






『トラベル』各編へつづく

[10回]