名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
Script:Ninja Blog 
Design by:タイムカプセル
 

はじまりのサヨナラ(新一×キッド)

──────────────────



屋上の扉を開けると、白く朧に霞む怪盗の姿が目に飛び込んできた。



煌々と輝く十二夜の月明かりのもと、長いマントが優雅にたなびいている。

「───まだいたのか、キッド。とっくに飛び去ったと思ってたぜ」

「ふふ。それでも確かめにわざわざここ迄おいで下さったのでしょう? 名探偵。待っていなければ失礼にあたるというもの」

振り向いた怪盗のモノクルが揺れ、一瞬だけ月明かりを弾いて輝く。
しかしその表情はシルクハットの影になり、微笑んだ口もと以外は完全に隠れている。

「今宵の月はまた格別に美しい。名探偵にお別れのご挨拶をするに相応しい夜です」

「なに?」

どきりと胸が鳴る。

別れ…と言った、いま確かに。

「どういうことだ、キッド。ふざけるな」

「ふざけてなどおりません。私は今宵を最後に〝怪盗〟を封印します。やっとその時が来た」

「その時…?」

どくん、どくんと、心臓が内から強く胸を打つ。
オレはキッドに一歩、二歩とゆっくり近付いた。

「!」

白い手袋の指先が緩やかに大きく弧を描いて持ち上げられる。

「待て、キッド、怪盗を封印するって、どういう意味だ」

「アデュー、我が愛しの名探偵殿。貴方が小さかったあの頃から、私はずっと…」

「キッド…?」

「それでは───これにて失礼」

「おい待て!! 最後までちゃんと言え! ずっと…何だっていうんだ!」

〝答えはいまお伝えしたでしょう〟そんなふうに肩を竦め、ヤツは持ち上げた右手を勢いよく振り下ろした。


》》カッ《《


閃光弾。真っ白な闇。


あと少しで届くところだったのに、オレの手はマントを掠めただけだった。

「キッド、行くな!」

オレの叫びは上空の風にかき消され、ようやく視力が戻った頃には怪盗の気配は完全に失せていた。

そんな…。

嘘だろ。これが〝最後〟だっていうのか。オレとおまえの。

こんなにあっけなく。

やっとオレが元に戻って、これからは本当に対等におまえとぶつかることができると──思っていたのに。

ふざけるな。

おまえにもう逢えないなんて、オレは信じないからな。

怪盗キッド。

キッド─────!!!










・・・・・・・・・・・・・





「新ちゃん、もう着替えた? 仕度できたんなら、早くこっち手伝ってよ!」

うるせぇなぁ。

オレはまだ半分ぼうっとしながらノロノロ階段を降りた。

「新ちゃん、これ、テーブルに並べて。もうすぐお客さん来る時間なんだから!」

「わ、スゲ〜ご馳走!」

「だめよ、食べちゃまだ! もうっ、新ちゃん顔洗ってらっしゃい。夜ふかしばっかりして。寝癖、直して!」

ああもうオフクロ今日は特にウルサイ。
お客さんって誰だよ。オレ関係ないだろ。

オレの心の声が聞こえたかのように後ろからオフクロの声が追っかけてくる。

───新ちゃんのいとこの家族が来るんだから、新ちゃんもピシッと挨拶してよ!

へえへえ。

そういや、こないだそんなこと言われたな…。
小さい頃に離れ離れになった親父の兄貴が、家族を連れて家に会いに来るって。

オレにイトコがいるなんて初めて聞いたし。

そもそも親父に兄弟がいるって、オフクロもちょっと前に知ったって言ってたし。
怪しいよなぁ。
数十年ぶりの再会とか?
ほんとにそれ親父の兄弟なのかよ。

まあ、ここ数年はSNSで連絡取り合ってたらしいけど…。

それよりこっちは警察の捜査協力やら毛利探偵事務所の手伝いやら灰原の使いっ走りやら海外から取り寄せた原文の新作ミステリの解読で毎日忙しいんだって。
来週からは大学生活もスタートするし…。

あーあ、一日が48時間あればいいのに。

そうしたら。

……そうしたら、消え去ったヤツの痕跡を辿る時間も作ることかできるのに。


(いや──そうじゃない)


わかってる。

オレは、ヤツのことを思い出すのを必死に避けてるんだ。

ヤツを追いかけたい、捕まえたいと思いながら、オレはまったく動けずにいる。

この思いがなんなのか、はっきりさせることを恐れている。
自分自身の〝想い〟を認めてしまえば、その喪失の大きさに打ちのめされることがわかっているから。

だから、オレはヤツの事を考えることを避け、封印してしまっているんだ───。








「新ちゃん、 お客様を迎えに行った優ちゃんから連絡きた! もう着くって! 早く早く!」

「どーでもいいけど、母さんやたらテンション高けーな。少し落ち着けよ」

「これが落ち着いていられると思う?! もう二度と逢えないと思ってた人に再会できるのよ!私、嬉しくって嬉しくって、泣いちゃいそうなんだから!」

───え?

〝二度と逢えないと思っていた人に再会できる〟?

胸の奥に引っかかる言葉。

どういう意味だ?

これから会うのは、事情があってずっと離れて暮らしていた親父の兄弟が家族を連れてやってくるって話だろ。
オフクロはその親父の兄弟に会ったことがあって、でも二度と逢えないと思っていたってことか…? 


「ただいま! 有希子、新一、お連れしたよ。来てくれ!」

「ハイハイ〜ッ! 新ちゃん!!」

「ったく、落ち着けよ、母さん…────」





有希子、新一、こちら黒羽盗一氏ご一家だ。

盗一は私の双子の兄だよ。色々あってずっと離れて暮らしていたが、ようやくお前たちに紹介できて本当に嬉しいよ。今日は彼のマジシャンとしての復帰祝いも兼ねてるんだ。
そして奥方の千影さんと、一人息子の快斗くん。
快斗くんは新一と同い年で、彼もマジシャンの卵だそうだ。それにな、来週から新一と同じ東都大学に進学するんだそうだ。


─────途中から親父の声が遠のいて、オレは夢の中にいるような気分になった。

黒羽盗一…だって?

数年前に公演中の事故で亡くなったはずの世界的マジシャンが、親父の兄貴? 穏やかな眼差しでオレを見て微笑んでいる、この男性が…。

だが、その時本当にオレの心を捕らえていたのは、黒羽夫妻の後ろに立つ、黒いキャップを被った少年だった。
そいつはキャップのつばを指で押さえ、口元だけでふっと笑ったのだ。

キャップを脱いだ〝黒羽快斗〟の癖毛がふわりと跳ねる。



知ってる。



オレはこいつを───前から知っている…!




「新一?」

親父に肩を叩かれ、はっと我に返った。

今は…いつだ。

ここは…オレん家で。

いまは、家族全員で親戚一家を出迎えていていて。

そして…、そして───。


「父さんたち、積もる話もあるだろ。俺、ちょっと新一クンと上で話してくる」

「快斗、お食事の用意していただいてるのよ」

「わかってるよ母さん。すぐ戻る。新一クン、部屋見せてよ!」

快斗がオレの腕を取り、階段の方へ駆け出す。
オレは信じられない思いで快斗の横顔を見ていた。




「へへっ、はじめまして…新一クン。いとこ同士って急に言われても驚いちまうよな」

「おま…黒羽快斗…って、本名か」

「あっはは! 何いってんの。新一クン」

弾けるような笑顔に、わけがわからなくなる。

あまりに印象が違いすぎて。

だが、理屈抜きでオレの直感が告げている。

間違いない。

こいつは、こいつは、あの─────

「またお目にかかれて光栄ですよ、名探偵」

不意に放たれる不敵な笑み。声。                       

「キッ…」

「なんちゃって。あはは」

からかわれてるのか? かあっと顔が熱くなって、次にやたら腹が立ってきた。

「テメー、すぐに化けの皮ひん剥いてやるからな!!」

「やだな、化けてなんかいねえっつうの」

信じられない。

とても信じられないが、オレの〝従兄弟〟が───まさか、あの怪盗だったっていうのか。

「とにかく、これから新しい生活が始まるんだ。よろしくな、工藤」

今度は工藤、と呼ばれた。
いかにも〝タメ〟だという態度。
そしてオレを正面から見つめてくる蒼い大きな瞳。吸い込まれそうだ。


「・・・・・」


腹が立っているはずなのに、言葉が出てこない。
いろんな感情がいっぺんに押し寄せてきて、泣き出しそうだ。
オレはそれを誤魔化すために足を踏み出した。

抱き締めると、黒羽は少し驚いたように身動いだが、抗わずそのままじっとしていた。

階下からオレたちを呼ぶ両親の声がする。

暫くの間ただ黙ってオレたちは互いを抱き締めあっていた。お互いの頬に顔を埋めて。

温もりで一つに溶け合いそうだった。













20241111

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お粗末! 盗一さんにセリフなかった…(汗)。パラレルの一つとしてご容赦を。細かいことは全部すっ飛ばして(汗)従兄弟同士として互いを認識した二人の日々がこれから始まるお気楽話でした。幸せになってくれ。

●拍手御礼
「束の間の夕刻」「この腕の中で」「休息」「欠けたクローバー」「闇に棲む蜘蛛」「異形の者」「未明の道」

しぐ様●拍手コメントありがとうございました!


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