☆2012-2013冬の白快SP☆
陰夢《2/2》(白馬×キッド)R18
※TVアニメ版スパイダー登場回『華麗なるライバル達』のダーク系妄想パラレル白Kの後半です。
※タイトルこのままいっちゃいます。スパイダーによる〝陰謀の悪夢〟という意味合いで…(*_*;
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身動きのとれない俺の背に、触れる者がいた。ゾッと肌が粟立つ。
スパイダーが操る〝隷(しもべ)〟だ。
恐る恐る振り向いた。
「……は…白馬!」
そこにいたのは────表情を無くし、瞳だけを硬く輝かせて俺を喰らおうとしている、白馬探だった。
白馬が蜘蛛の巣の絲を引き千切り、背中越しに俺の両手に巻き付ける。
草むらに転がされた。
これは…幻覚だ。
蜘蛛の絲など現実には存在するはずがない。すべてがスパイダーによる呪縛……それを解かない限り、体の自由は戻らない。
(白馬…!)
人の心に忍び込み、ここまで操るスパイダーのテクニックは凄い。俺自身が気付かぬ内にヤツの術中に深く嵌まってしまっている。
……なぁんて感心してる場合じゃない!
「白馬っ、目を覚ませ!!」
懸命に訴えかけるが反応はない。
白馬の瞳は凍り付いたように冷たく輝いている。ただ俺を奪うことだけを目的として動かされる指が、容赦なく怪盗の衣装を剥ぎ、俺の肌を暴いてゆく。
(ああっ…!)
下肢が外気に曝(さら)される。白馬の指が肌を伝う感覚に、思わず顔を背けた。
(!)
耳元を白馬の唇が這っていた。喉に指が伸ばされ、シュッという音とともにタイが引き抜かれる。
「やめろっ白馬、やめろぉっ!」
のし掛かる白馬の下で懸命にもがくが、どうしようもない。脚を割られ片脚を腕に担がれて、腰が浮き上がろうとしている。
眩暈に襲われる。
どうにもならないのか。
為す術なく、操られている白馬にこのまま貫かれるのか。 この異世界のどこかでほくそ笑み、俺たちを見下ろしているだろうスパイダーの目の前で…。
「!!」
白馬に不意に唇を塞がれた。顎を掴まれ、強引に割ってきた舌先に咥内深くまで侵される。
苦しい。シルクハットが転がり、モノクルまでが外れかける。
も、う、だめだ……!
(…………)
その時、何かを感じた。何か伝わる……意志のようなもの。
目を開けて白馬を見た。唇を合わせている状態だったが、それでも白馬の瞳に微かな揺らぎが浮かんでいるのが判った。
躊躇している余裕はない。
〝ガリッ〟という歯堪えがあった。
血の味が広がる。
う、と白馬が呻いて目を閉じた。
そして次に白馬が目を開け、唇が放された時には、その瞳は白馬のものに戻っていた。
(つづけて)
目を見て囁くと、一瞬動きを止めかけた白馬だったが、すぐ了解した。
スパイダーが見ている。
白馬は俺が舌を咬んだ痛みで正気を取り返したようだが、俺の方は意識は自分のものでも呪縛は解けてない。
スパイダーを倒すか、俺自身がショックを受けて目を覚ますしかない。
(このまま、して下さい)
(しかし)
(構わない……白馬探偵ご自身に貫かれるなら、堪えられます)
じっと俺を見つめる白馬の瞳に浮かんでいるもの。それは間違い無く情欲だった。スパイダーに煽られ焚き付けられたものだったとしても。白馬が自分の意志を取り戻しているとしても。それはもう退くに退けないほど熱く膨らんでいた。
「うぁ!」
白馬の指が奥深くに届く。いきなり自身を穿たないだけ俺を思いやっているのだろうが、スパイダーを騙すためとはいえ荒々しい。しかし、俺がやれと言ったことだ。堪えるしかない。
(キッド…)
見上げた白馬の瞳が揺れる。そして奥に今度こそ白馬が押し当てられた。
俺は頷いた。
これで、呪縛は解ける─────!
自由になった腕を動かし、俺は怪しいと感じた頭上の塀の上を立て続けにトランプ銃で撃った。
スパイダーは俺たちが繋がるのを哄いながら高見の見物をしていたのだろう。避ける動きが間に合わず、まともにトランプを目玉の付いた仮面に受けて、よほど慌てたようだ。
仮面を傷付けられたスパイダーは怒りの言葉を吐き残し、今度こそ完全に俺たちの前から立ち去った。
屋上に残された俺たちは────どうしたかって?
そのまま最後まで続けたさ。
呪縛を解きスパイダーを追いやった安堵とともに、互いに高みへ登り詰めつつあったから。
俺たちは異常な状況で結ばれながら、それでも深く互いを感じ合っていたのだ。
外れていたモノクルを付け、立ち上がった。ふらつくのをなんとか誤魔化す。
「キッド」
「何もおっしゃらなくてけっこう。今宵のことはお忘れを…、白馬探偵」
「僕は……日本に残る。スパイダーは殺し屋だ。そのスパイダーのターゲットが君だと判ったからには」
「私を護って下さるというわけですか」
ふと笑って白馬を見ると、白馬は今夜の成り行きに責任を感じているのか俯いて手を握りしめていた。
すいと近づいて白馬の首に腕を回し、驚く唇に軽く触れるキスをする。
「………キッド、君は…僕を許すのか?」
「許すも許さないもありません。一蓮托生だったのです。今宵の私たちは」
「キッド…!」
「警察もスパイダーの呪縛が消え、そろそろ上がってきますよ。では失礼」
俺は飛び立った。
後ろは振り向かず。
また逢えるのだから。スパイダーの魔の手から俺を護るために、白馬探偵は日本に残ると言ったのだから────。
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「ロンドンブリッジ・ハイスクールから転校してきました。白馬探です、よろしく」
ま…まじ…!!?
寄りによって江古田高に、寄りによってこのクラスに編入してくるか?
白馬探よおーっ(@@);;!??
俺の席の近くを通り過ぎながら、白馬がちらりと俺を見た。
ポーカーフェイスでスルーする。
素顔を見られたといっても、学ラン着てる今の黒羽快斗と証拠もなしに〝怪盗キッド〟を結びつけられはしない。
…はずだ、と思う。
────ねえねえ快斗、かっこいいね、白馬くん。
となりの幼なじみに言われて〝けっ〟と呟いた。女子どもがキャアキャア言ってる。
やれやれ。
スパイダーと白馬探。それに魔女と、幼なじみの父親であるシツコい警部。
まったく……、怪盗キッドの周りはヤヤコシイ連中だらけだぜ!
チャイムの音とともに教科書を開いて立て、俺は机に突っ伏した。眠い。いろいろ考えて対策練るのは後でいい。
白馬探と繋がったのは怪盗キッドだ…、俺じゃない。 うとうとしながらそれだけを自分に言い聞かせて、俺は目を閉じた。
20121228
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※一応R18表記したんですが……お粗末様でした~っ(+_+)(*_*;
[20回]