有り得ない(コナン&快斗)
※お気楽系です。
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「名探偵、なにやってんだよ! すっかり濡れちまってるじゃねーか」
「ヘーキだよ。もう夏だし。…ヘ、へッ、ヘクショッ!」
ぶるっ。
霧雨くらいどうってことねえ。と思ったけど、クシャミしたら急にゾワゾワ寒気がきた。
「ったくもう…傘持ってねーなら、そこに店あんだから入ってりゃいいのに」
「だって」
ここで〝待ち合わせ〟したんだろ。このまえデートした時。次も同じこの公園の、このベンチでって…約束したから。
「バカ正直だねえ。名探偵がどこにいたって、たとえ隠れてたって、臨機応変・神出鬼没の怪盗が簡単に見付けてやんのに」
「……いまは怪盗じゃねえだろ」
「まぁそうだけどさ。さ、とにかく着替えないと風邪ひくぜ、マジで」
「着替えなんかねえよ」
「子ども服なら置いてありそうじゃん?」
快斗がオレの手を掴み、公園のグッズ売場兼カフェに引っ張っていく。
「ええっ? まさか、ここで買う気かよ」
お天気のせいか店内はガラ空きで、買い物したい放題、カフェ座りたい放題だった。
「上はTシャツでいいよな? 水着、じゃなくて……あった、半ズボン。これカワイイ!」
「ヤメロ! ぜってー着ねえ!!」
快斗のヤツ、オレの文句をガン無視でロケット&惑星柄の半ズボンに決めたらしい。
「おっ、パンツもあるよ。よかったな名探偵~、半ズボン直履き避けられたぞ」
トイレで一式着替え、確かにすっきりサッパリした。
が、しかし。
「ううっ、やばい、名探偵まじカワイイ! 小学校一年生らしくていいっ♪」
「ちっともよくねえ!!」
「おっと」
向こう脛を蹴っ飛ばしてやろうとしたが、快斗のヤツ読んでいたのか軽く避けやがった。
「ほら、見てみ」
「・・・っ (汗)」
快斗に抱き上げられて、鏡に映った自分の姿に絶句する。
なんだよ、この公園ロゴが入った真っきっ黄のTシャツと惑星柄の青い半ズボン! クマさんマークの黄色い長靴は!
「どうせならTシャツもクマさんが良かったなぁ。クマさんパンツとクマさん靴下が隠れてんのも残念…」
「快斗。オボエテロ」
「そんな青筋たててジト目で睨むなよ~。へへ、写メ撮ってお隣の哀ちゃんに送ろうっと」
「は?! てめ、フザケンナ! 灰原のメアド知ってんのかよ?」
「あはは。実は俺、こないだ名探偵ん家こっそり訪ねたんだ…。だけど名探偵、留守でさ。淋しく引き上げようとしたら、通りかかった哀ちゃんが俺に声かけてくれて」
「ええっ?」
「それで哀ちゃんトコで博士と三人でお茶してさ。仲良くなって、メアド交換しちゃった♪」
「な・・・ん、だ、とおぉ~っ??!」
灰原だけでも有り得ないのに、博士とも一緒にお茶して仲良くなっただとぉ?
「聞いてねえぞ、そんな話!」
「哀ちゃんがおもしろいからしばらく内緒にしときましょうって言ってさ」
「有り得ない!」
「哀ちゃんも名探偵と同じでホントはオトナなんだってな。人生やり直すから私はこのままでいいわ~、素敵なお義父さんも出来たし。って言ってたよ」
「有り得ない!」
「哀ちゃんに〝お義父さん〟って呼ばれて、博士超うれしそうだったぜ」
「有り得ない!」
いや、博士が嬉しそうなのは有り得るかっ(@@)??
「まあとにかくだな、俺と名探偵が恋人同士って哀ちゃんと博士は了解済だから、ノープロブレムってことよ」
喉が痛い。
有り得ない!って叫びすぎたせいだ。
挙げ句の果てにクマさん模様の子供用マスクまで付けられて、ほぼ無抵抗になったオレを快斗はおんぶして家まで連れて帰ってくれた。
だって…カフェで温かいミルク飲んだら、急にポカポカしてきて睡くなっちゃったんだ。
子どもって一度睡くなると我慢できないんだよな…。そんで寝ちゃったら、ちょっとやそっとじゃ目が覚めない。
快斗のヤツ…脱いだオレの服、売店で買ったビニールの手提げに律儀にたたんで入れて持ってやんの…。
変なヤツ……。怪盗として出逢った時は、素の快斗がこんなに世話好きで天真爛漫なヤツだとは思わなかった。褒めてんじゃねえからな。ただ…一緒にいると…楽しくて……また逢いたいって…バイバイしたあと、すぐ思うんだよな……。
ふわあぁ…。
目を閉じたまま、快斗の背中で欠伸をすると、快斗がくすりと笑う気配がした。
好きだぜ、名探偵。
子供でも、オトナでも。
そうつぶやく声が伝わってくる。
オレも好きだ…。
おまえが怪盗でも、怪盗でなくても。
睡くって、もう声にすることはできなかったけれど。
オレは眠った。快斗の背に凭れて、温かな揺りかごに包まれたように。安堵して。
20140705
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●拍手御礼
「不機嫌な恋人」「ハッピー・スウィート・ニュー・イヤー」「潜行」「想定外」へ、拍手ありがとうございました~!(^^)!
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