名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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奇跡の月と運命の彗星《11》
カテゴリ★インターセプト4
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「邪魔しないで欲しいって言ってるのは、あのボウヤたちのことよ」

「ホウ…それは工藤新一と、誰のことだ?」



「さあね。ウフフ…、とにかくもう時間がないの。残念だけどお別れよ、赤井」

ベルモットは俺にコルトポケットを突き出しながら、僅かに首を回して視線を後方へ向けた。



ガァン!



銃声が響いた。ベルモットが髪を乱して崩れ落ちる。

「シュウ、無事っ?!」

「ジョディ」

「間に合ってよかった。ボスが殺られて、次はシュウが狙われるんじゃないかって…大急ぎでこっちに来たのよ!」

「そうか」

駆け付けたジョディには、ベルモットが俺を撃とうとしているように見えたのだろう。ベルモットがそう見えるように装ったのだ。
倒れたベルモットのプラチナブロンドが血に染まってゆく。

「……」

風が吹きつける。
遠くの轟音が空気を震わせ微かに伝わってきたようだった。

月と交差した彗星の帯は、まるで月を突き抜けんとする矢のように細く、長く伸びていた。










・・ー・・・・・ー・・・・・ー・・

   



大きな波飛沫があがる。
湾岸から数百メートル離れた沖合に建つ巨大な堤防からは、夜空に浮かぶ満月と彗星が一際明るく輝いて見えた。

工藤に促され、アタッシュケースを手に取った。ジンの狙撃で歪んでいたが、鍵の部分は無事だった。
鍵穴は二つ。工藤が腕時計のライトを照らしてくれるので手元は十分に見える。小型のピックを使って片方の鍵はすぐに開けられたが、もう片方がなかなか開かない。
工藤は黙って俺の作業を見守っていた。

「ん…!」

かちりと指先に当たりを感じた。

「開いたのか?!」

俺は肯いた。
工藤に支えてもらい、ボタンをスライドさせる。
ギギッと音をたて、アタッシュケースの蓋が10センチほど持ち上がった。
二人でケースの中を覗き込む。

APTX4869が数錠入った小瓶。
そして三つのビッグジュエル。
ホープダイヤモンド、ゴールデン・ジュビリー、レッドサファイヤ。

「…こいつは偽物だ」

レッドサファイアの輝きに鈍さがある。月に翳してみると一目瞭然、人造物だと判った。

ポイと海に投げ捨てる。

「おい、証拠品だぞ」

工藤が慌てた声を出したが、そのまま次のジュエルを取り出した。
ゴールデン・ジュビリー。
───これは本物だ。持つ手にずしりとくる。淡くイエローがかった屈折光が美しい。
月に翳した。

何も浮かばない。

月明かりを弾いて金色に煌めく稀代のジュエル。だが、それだけだった。

最後の一つ。
ホープダイヤモンドも本物のようだ。蒼白く、角度によっては薄紫に見える光を放っている。

右手に持ち、月に翳した。

「………」

「どうだ?」

「やっぱり何も見えない。素晴らしいジュエルだが、それだけだ」

それだけ───。

虚しさとともに覚える解放感。

〝パンドラ〟はついに見つけられなかった。
呆気なくもすべてが終わった瞬間だった。

ジュエルを元に戻そうとすると、工藤が俺の手を遮った。

「もう一度、そのまま翳してみろ」

「え?」

工藤がゴールデン・ジュビリーを手にする。

「何する気だ」

俺が持つホープダイヤに工藤がゴールデン・ジュビリーを重ねて満月に翳す。

覗いてみた。




高い透明度を誇る二つのビッグジュエル。
その中を重なり合い、交差し、反射する無数の月明かり。

その中心に、ぼんやりと炎が灯る。

赤く浮かぶ、ジュエルの中のジュエルのように。




〝パンドラ───!!!!〟





互いに顔を寄せ合うようにパンドラを覗き込みながら、震える声で俺は工藤に訊いた。

「何故…解った?」

「可能性だよ。これまで一度も世に出てこなかったビッグジュエルだろ。一緒に発掘され、一緒に保管されていたのかもしれない。きっとこの二つのジュエルはセットなんだ。二つで一つなんだよ」

二つで一つ…。

そうかもしれない。

工藤の方が俺よりよほど冷静だった。

「…俺一人だったら、諦めるところだった」

「伝説では、赤く輝くパンドラは月明かりを浴びて涙を零すんだろう?」

「伝説では…な。けど、そんな事は有り得ない。なのに欲に目の眩んだ連中は、このパンドラを手に入れようとして人の命をも奪ってきたんだ。俺にとって〝パンドラ〟は、壊すためだけに探していたビッグジュエルだったのさ」

「そうか…。やっと話してくれたな、キッド」

ザザァッと波が押し寄せ、堤防に跳ね返り、激しい波飛沫があがった。
その飛沫が堤防に立つ俺たちに雨のように降りかかる。
掲げたジュエルを伝った雫が、まるで〝パンドラの涙〟のように俺の唇にポタリと落ちた。

気付いたら、工藤が俺に口付けていた。
波の音。
満月と彗星が輝く夜。
俺にとって、この温もりこそが奇跡だった。

「…これで一緒に不老不死だな、快斗」

「バァロ」

工藤が俺を快斗と呼んだ。
俺はマントを翻し、黒羽快斗の姿に戻った。
そして今度は俺の方から工藤にキスをした。
言葉はいらなかった。








》》バババババ…《《


「ヘリだ…!」

「あのヘリ、もしかして」

ヘリのサーチライトが五回点滅する。

「やっぱり! 寺井ちゃんだ!  寺井ちゃーーん!!!」


俺たちは寺井ちゃんと千影さんが乗ったヘリに助けられた。操縦する寺井ちゃんに抱きついて、千影さんに怒られた。寺井ちゃんも千影さんも笑いながら泣いていた。
なぜ俺たちをこんなに早く見つけることが出来たのかは、後で知った。

俺はヘリに乗り込んですぐに寝込んでしまったらしい。軟禁されていた間、ろくに食ってなかった。体力はギリギリだったのだ。


目が覚めると、どこか知らない場所に寝かされていた。
壁の高い位置に嵌めごろしの小窓が連なるアイボリーの壁。病院ではないようだ。
今度は工藤と白馬と服部平次までいた。
何を話したらいいのか分からず、ただ『ありがとう』と俺は言った。
白馬は俺にプレゼントだよと言ってチョコレートをくれた。俺はマジで嬉しくなって、さっきより大きな声で『ありがとう!』と言った。服部がワハハと笑い、工藤が渋い顔をして微笑む白馬を見ていた。

俺がいない間に、俺と工藤を隔てていたすべての柵(しがらみ)が消えていた。俺の秘密は無くなったんだ。

そして、たくさん心配や迷惑をかけた人たちがいた。
青子や、中森警部にも、元気になったら謝って、礼を言わなければ。

俺はまた眠った。

翌十六夜の月夜、すでに東へ去りかけているボレー彗星の明るさは急激に薄れ、あの時のようにビッグジュエルを二つ重ねて月に翳して見ても〝パンドラ〟が現れることはなかったそうだ。







20160409

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※『奇跡の月と運命の彗星』はここで了です。あと少し、後片付け的な内容を別タイトルにて~(*_*;

★一週間後には劇場版『純黒の悪夢』初日ですよ! はー楽しみ!

●拍手御礼
「未明の道」、そしてカテゴリ★インターセプトへ拍手ありがとうございます。言い分け始めたらきりない(> <);; お付き合いいただき本当に感謝です。



 

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