moonlight 新一×快斗

デプレッション（100万ドルの五稜星 余波）
※短めです。
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「どうかしましたか。黒羽くんらしくない」

何も言ってないし、ポーカーフェイスだって守ってる。

だが、白馬には俺の不安定さが伝わってしまったらしい。

昼休みの屋上。このところ陽射しがキツくなってきたので空いている。
出っ張った屋上出入り口の日影に座り込んでたら、白馬に見つかってしまった。

「うっせ。どんなんが俺らしいってんだよ」

「僕の言葉なんて基本無視でしょう。今日は違う。つっかかってくる。わかりますよ」

顔を覗き込まれそうになってつい避けてしまう。
だめだ、白馬に側にいられたら──。

立ち上がって階下に戻ろうとすると、すれ違いざま白馬に腕を捕られる。

「うざっ。離せ」

「いつもはただ黙って振りほどくのに、やっぱり変だ。君は独りでいたいんじゃない。側に誰かがいるのを避けてるんだ。おそらく懸命に保っているそのポーカーフェイスが崩れるのを、見られたくないから」

言われなければ自分でも判ってなかった本心。それを言い当てられ、衝動的な怒りが爆発しそうになる。

だが、かろうじて抑えた。

「⋯へっ、怒らせて弱み握ろうったって乗るかよ」

「ほう。よく我慢しましたね。一発殴られるくらいは覚悟してたんですが」

ふざけんな。
これ以上話をしてるとますます調子に乗られてしまうので切り上げる。

「あっ、黒羽くん！？」

体を返して白馬の手を振り払い、走り出す。そのままの勢いで俺は屋上の柵を両手で掴んで飛び越えた。

「危ない！ 何を────」

白馬の声を背中に聞きながら飛び降りる。

4階の窓下の校舎の出っ張りに手をかけてぶら下がり、体を振って同じように３階、2階へ。
1年生の教室から外を見てた女子が、上から外壁伝いに降りてきた俺を見つけて『きゃあっ』と悲鳴をあげてる。

校舎の壁から校庭の端に寄せられていたサッカーゴールに向かって飛び降り、ゴールポストのバーに掴まって地面に降りた。

チラと見上げると白馬は屋上から俺をじっと見ていた。

俺に近づくな。

白馬に “あっかんべー” すると、白馬は呆れたように両手を広げてみせた。


教室に戻ると、白馬は俺を見てますます呆れた顔をした。たぶん、あのまま午後の授業はフけると思っていたのだろう。




俺は──昨日の工藤の問いかけに囚われたままの自分に滅入っていた。

北海道警の川添刑事に変装していたのは何者だったのか。

まさかという思い。

一度期待してしまって、それが打ち砕かれた時のデプレッションまで予想して。

怪盗としての存在証明が揺らぎそうになる。

わからない。

確かめたいのに動けない自分に──俺は本当に手こずっていたのだ。






20250720
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※劇場版名探偵コナン『100万ドルの五稜星』。まじで盗一さん生きてたとか優作さんの双子の兄だとかいろいろ衝撃的でした。今さらですが(^o^;

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