名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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悪夢(1/2)のつづきです。

―――――――



黒羽の名前が出て、俺はまた面食らった。

白馬が、黒羽イコール《怪盗キッド》である事を知る数少ないうちのひとりである事は知っていた。第一、黒羽と白馬は同じ高校のクラスメートなのだ。

「黒羽君、知っているでしょう」

知っているでしょう――のところを強調して、白馬は俺に迫ってきた。



黒羽君、知っているでしょう、と間近で念を押すような聴き方をされ、俺は返答に窮した。
本来なら接点などないはずの俺と黒羽に直接行き来がある事を、白馬は承知の上で問いかけている。

無言の俺に首を振って小さくため息つくと、白馬は向きを変えて壁に手を突いた。

「工藤君――黒羽君に会いに行ってくれないか」

「…なぜ」

「ここ一週間ばかり塞いだ様子で、全く彼らしくない。昨日からは学校にも来なくなってしまった」

「そんなに心配するほどなのか」

白馬は頷いた。
「そうだ。見ていられない――」






―――――――



ここが黒羽の自室。

薄暗い。

黒羽も俺と同じように親と離れて一人でいることを初めて知った。



「誰だ」
「――探偵だ」
「……どっから入った。不法侵入だろが」

「コソ泥に言われたかねぇな」一歩部屋に踏み込む。
「忍び込むのは怪盗だけの特技じゃねえって事」

「ふざけんな」

ベッドに腰掛けた黒羽の瞳だけが輝いて、俺を睨んでいる。
歓迎されるはずもないが、ここまで敵意を剥き出しにして怒りを露わにされるとは思っていなかった。

「出ていけ」低い掠れ声。

もう一歩踏み出そうとした瞬間、澱んだ部屋の空気を裂いて鋭い風が左頬をかすめた。
少し遅れてピリッと痛みが走る。

「出ていかねぇと」
「どうする」
「次は眉間だぜ」
黒羽は指先にカードを挟んでいた。

「やってみろよ」
構わず近づいた。黒羽がカードを俺の目の前に突き付ける。
「出ていけ…俺の部屋から出ていけ!」

カードを手で握りつぶした。鋭利な刃先が掌を裂く。そのまま暴れる黒羽と殴り合いになった。
だが、白馬が言ったとおり黒羽の憔悴は酷く、何発かやり合っただけでグッタリと床に倒れ込んでしまった。

「……黒羽、大丈夫かよ」

うるせえ。出てけって言ってんのが聞こえねぇのかよ、このバカ探偵。床に向かって呟く声。その声が濡れていた。
「どうしたんだよ。何かあったんなら話せよ…!」



別に何もない。眠れないだけ。

こんな弱いところは見せたくなかったのに。
はあー、と震えながら大きく息を吐く。フラフラで、頭もがんがん痛くて、辛くて仕方ないのに眠れない。
いっそ首でも絞めて、気を失わせて欲しい。

「首、締めてくれよ」
「え?」
「何でもいいから寝かせてくれよ。もう――苦しくて死にそうなんだ」


俺の腕の中で黒羽はがくりと首を仰け反らせ、気を失った。
軽く当て身をくらわせただけだが、もうとっくに限界だったのだろう――。





夢。

夢と判っているのに逃げ出せない。何度も。何度も。一番嫌な場面が繰り返される。
(…?)
いつもはどれだけ腕を動かそうとしても叶わないのに、何かに――ぶつかった。腕が、動く。めちゃくちゃに振り回した。
手首を掴まれて、また振り出しかと思ったが、今度は頬に温もりを感じた。

とうしてだろう 。
不思議と嫌じゃない。
この温もりを俺は知っている。

そうか…

これは夢じゃない。俺を包んで悪夢から引き戻そうとしているのは――



(……工藤)






何時の間にか部屋は明るい陽の光で溢れていた。閉ざしっぱなしだったカーテンと窓が開かれ、爽やかな風までが吹き込んで――少し前とはまるで別世界のようだ。

「眠れたかよ」

我に返って声がする方を振り向くと、工藤が俺の椅子に座ってこっちを見ていた。

「――ぷっ」
「笑うんじゃねえや。オメーにやられたんだぜ」

工藤の顔。
唇が切れて頬は腫れ、目の周りにはご丁寧に丸く青痣ができていた。

「アハハハハ」

「けっ」
黒羽の笑顔が見られたのだ。よしとするか。仕返しは次の機会を待てばよい。


快斗は自分の手を見た。

そういえば拳が少し痛い。結構な力で殴ってしまったようだ。
「――ゴメン」

「いいさ。元気になったなら」

「…工藤はどうしてここへ?」
「ん? それはまあ、な…」

言葉を濁す様子にピンときた。

白馬か。白馬が俺を心配して――。


自分で解決もできないくせに、殻に逃げ込んで、また友人達に面倒をかけてしまった。
白馬も、工藤も、俺のもう一つの姿を知った上で助けてくれる。本当なら決して相容れないはずの間柄なのに。


俯いた黒羽が白馬のことを考えている気がしたので、それを遮るために俺は黒羽の顎を持ち上げ口づけた。
軽く触れあうだけのキスを繰り返す。切れた唇と薄く裂けた掌がヒリヒリするが気にならない。
昨夜の闇が――殺気が嘘のようだ。
今すぐにでも黒羽が欲しい、と思う。

しかし、我慢した。
あんな状態の黒羽につけ込むような真似をせず、俺に知らせてくれた白馬に免じて今日のところは。


「な、工藤、今日って何曜?」
「金曜日」土曜なら良かったのに。
「そっか」
黒羽が時計を見る。
「ギリ間に合いそう。俺、学校行くわ。みんなに心配かけたし」
「ああ。俺も一度戻ってから行く」

少しやつれていたが、表情は普段の黒羽に戻っていた。

「あんないやな気分が続いてたのに不思議だ――工藤、ありがと……また助けてもらっちまった」


「どーいたしまして。次はもっと早く連絡寄越せよ。自分でな」

うん、と頷く仕草に自然と俺も笑顔になった。

「学校行ったら白馬にも礼言わなきゃ…」
白馬の名が出て、なんだか面白くない。クラスメートというこの上ないアドバンテージを持つ白馬に心の中で舌打ちした。

「工藤、すぐ着替えるから待ってて。途中でメシ食ってこう」

「いいね。賛成」


悪夢はようやく遠ざかった。
またいつか囚われる事があったとしても、たぶん次はもっと上手く振り切ってみせる。

強くならなけりゃ――。

俺を心配して、目の周りを青くしたこのかけがえのない友人のためにも。





20110830



―――――――


あとがき&補足


快斗くんには拉致監禁集団レイプされてしまった過去がある というベース設定です。

うん? しかし新快前提のはずですが、快斗くん、工藤を大切な友人扱い……?
おかしいな?
もっとガンバレ工藤!
うかうかしてると白馬にもってかれるぞぅー!!





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