名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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※以前アップしたお話(削除済)の前半部分をざっくりと…と思って書き始めましたが微妙にやりとりがズレてしまい、結局足し算引き算して無理無理一本にしちゃいました。後半突然(R18)なので注意。


―――――――



閃光


突然、目の前が真っ白な閃光に包まれた。白い闇。全てが眩しい光に覆い尽くさる。眼を灼かれるわけにはいかないので咄嗟に瞼を閉じた。
と同時に何かに――誰かに体当たりをされて、体が浮いた。


気が付くと、入り組んだ立地に建つさして高くもないビルの屋上にいた。
そして、俺の前には怪盗が倒れていた。

怪盗は傷を負っていた。
右の脇腹を、銃の弾丸が掠めたのだ。
肉が裂け血が吹き出していたがさほど深くはない。しかし、とにかく血が止まらない。

どうすべきか迷ったが、俺は好奇心に勝てず、誰にも秘密で怪盗を自宅へ連れ帰る決心をした。



「――どこだ、ここ」
「俺んち。動くなよ、やっと血が止まったとこだ。けっこうな出血だったんだぜ」

連れ帰る時に怪盗の衣装では目立ちすぎるので、シルクハット・モノクル・マントは有無を言わせず剥ぎ取った。だからベッドに横になった怪盗は素顔だった。そして治療のために衣類も取り去ったので、ほぼ全裸に近い状態だった。

意識が戻った怪盗はいくらか抗う素振りを見せたが、治療してやんねえぞと凄むと不本意そうではあったが大人しくなった。
そして、どうしてこのような事態に至ったかについて、自ら話す気はなさそうだった。――このような事態とは、つまりあの時なぜ俺を助けたかということだ。

あの時俺は高層ビルの屋上で追い詰めた犯人に引導を渡すところだった。もちろん逮捕が前提だから、刑事達も伴っていた。
推理した真実を突き付けてしまえば大抵の犯罪者はがっくりとうなだれ逃げることをあきらめて手錠をうたれるものだが、今回の犯人は往生際が悪かった。隠し持っていた拳銃を振りかざし、逆恨みの憎しみを込めて俺を狙い撃ちしようとした。事件は解決と油断していた刑事達の反応が遅れる中、ひとりの若い警官が俺たちの立つ中心に何かを叩きつけた。

それが閃光弾で、若い制服警官は怪盗キッドの変装で、白く輝く光の中で怪盗が俺を体当たりで救い――今に至るわけだ。最初から俺を抱えてハンググライダーで飛び降りるつもりだったかどうかまではわからないが。
もしかしたら、撃たれた衝撃で俺を抱えた勢いのまま思わずビルから飛び出してしまったのじゃないだろうか。そして、俺がコナンだった時ならいざ知らず、傷を負った状態で自分の体重を超える相手を抱えて遠くまで飛ぶこともできず、かろうじてあの小さな雑居ビルの屋上へたどり着いたのではないだろうか――。



「ケーサツ、呼ばねぇのかよ」
腹にくるぐる巻いた包帯を押さえて怪盗が言った。
「呼んで欲しいのか?」
「…………」
ちょっと悔しそうに睨む瞳。やはりキッドの素顔は若かった。間違いなく俺と同世代だろう。

「無事を確認に来ると言われたが必要ないと断った。怪盗キッドを匿(かくま)ってると警察に知られたら俺も拙いからな」
「どうする気だ」
「手当してやってるじゃねーか」
「…なぶってるつもりかよ」
「まさか。助けてもらったお礼と、あとは純粋な好奇心さ。やっと素顔のキッドに会えたんだからな」

キッドの視線が一層冷たくキツくなる。
俺はあえて推理することはせず、単純にキッドを観察していた。この上ないチャンスなのに、大好物を最後までとっておく子供のように、怪盗の正体を知るのが惜しかった。

「なぜ警官に変装してあそこにいたんだ?」
「今度は尋問か」
「質問だ」
「――お宝探しの延長さ」
本当だろうか。
「今回の件にお前が関わるような要素はないと思ったが」
ふん、とキッドが目を逸らした。
「いいだろどうだって。気まぐれな探偵には付き合ってらんないね。手当てありがとよ。俺は帰る」
「帰るってどこへ」
「言うかよ。アホか」
バサッと体に掛けていたシーツを剥ぎ、キッドがベッドから立ちあがった。

しなやかな身体。
華奢だが美しく筋肉に縁取られた肌には、他にもいくつか疵痕が残っている。
「服返せ」
「泊まってけよ」
「オトモダチじゃねえっつんだよ」

とりあえずは怪盗の希望通り衣装を返す。
目の前で一人の少年が怪盗の姿へと戻ってゆくのは興味深く、なかなか貴重な眺めだった。

しかし、純白の衣装は今は銃弾のために穴が開き、血で汚れていた。
怪盗も流れ出た自分の血の多さに驚いたようだった。

「やっぱり泊まってけよ。本当なら輸血が必要だと思うぜ」
「けっこうだ」

身に纏う気配や、言葉遣いまでが変わる――。
急に息苦しいような…胸が締め付けられるような痛みを覚えて、俺は立ち尽くした。
その時、俺は気付いてしまったのだ。自分の気持ちに――なぜこんな事をしてしまったのか。

俺は、どうしてももう一度キッドの素顔が見たくなった。





踵を返したその時、不意に目の前が真っ暗になった。
(あっ)
くらりと頭が痺れ、体の自由を失った。貧血。
まずい、と思った時には倒れ込んだ床の上で俺は工藤に抑えつけられていた。体力は思った以上に落ちている。
(くそっ…)
今度こそ正体を暴こうというのか。
懸命に目を瞬かせて見上げた工藤の瞳は、何故か辛そうに歪んで見えた。痺れた頭と手足には力が入らず、のし掛かる工藤の両腕を撥ね退けようとも動かなせい。

――気付けば、唇を奪われていた。

(…えっ…?)
眩暈。どうして――。
徐々に深く忍び込んでくる工藤の舌先の動きに呻き声さえ洩れる。抗う気力が起きないほど頭の芯が痺れている。貧血のためなのか、それとも。
「…う…」
首を振る。自分で思うほど動けない。工藤の唇はまだ自分のそれを放さない。息苦しさに喘いで無意識に口を開けると、より深く確実に工藤が侵入してきた。

「は…っ、はっ、はぁっ…」

ようやく解放されると、俺は息を乱して顔を背けた。その喉元のシャツのボタンを工藤がはずし始める。

「な、何すんだよ、名探偵。動けない怪盗を襲う気か。何考えてんだ」
「なんとでも言え。俺は――おまえが――」
(おまえが…?) 言葉は俺の喉に吸い付いた工藤の唇の中に消えた。

口では軽い言い方をしたが、俺はかなり動揺していた。工藤の意図が解らない。それより痺れたように指先すら動かせない自分の体。
「…あっ…ツ!」
工藤の片手が素肌の胸から脇腹を辿る。傷に届くと、ひきつるような痛みが走った。
「工藤っ…」
「おとなしくしてろ」
抵抗すれば傷を痛めつけるという威しなのだろうか。

抱え上げられ、先刻まで寝かされていたベッドに落とされる。
どこまでも深く沈んでゆくような感覚――。

工藤が服を脱ぎ捨てる。

成り行きに茫然としている俺の肌も、工藤の手が再び暴き、晒してゆく。
「ま…待てって…工藤、おまえ解ってんのか、何してるか」
訳の分からない羞恥に思わず竦みあがる。

「解ってるさ。どうしようもないってことは」思い詰めた瞳の色。
数センチの距離で見上げる工藤の、一心に自分を見つめる硬い表情に心臓がドクンと鳴る。

「お前が知りたい。キッド。このまま、おまえを放せない」

灼け付くような思いが弾ける。やっと手の内に捕らえた怪盗の正体をーーまだ見ぬ顔が知りたくて、傷ついた肌の奥の熱さが知りたくて、止めようがない。


「アッ…!」
他人に触れられたことのない部分を弄ばれ、全身に震えが走る。
傷付いていたとしても、脅されていたとしても、拒絶する術は有るはずだった。
それが出来ない。
工藤の体重を感じ、肌の熱を感じているうちに、自分自身も望んでいることに本能で気付く。しかし、それを認めることは難しかった。

歯を食いしばり、懸命に流されないよう声を殺すのが精一杯で、何も考えられなくなる。ここがどこで、どうしてこうなったのかすら思い出せない。
在るのは工藤と自分の肌。息遣い。苦しくなって逃れようと体を捻っても、すぐ引き戻される。自分を見つめる眼差し。見ないでほしい。手で隠そうとしても赦されない。知らず溢れていた涙を指で拭われ、感じたことのない戦慄に体が跳ね上がる。
「あ…あっ、工藤、もう、もう…」
やめてくれ。おかしくなる。
「…あ!」
いつの間にか後ろの秘所にあてがわれていた指が、ゆっくりと侵入しはじめる。身を強ばらせるほど締め付けることになり、それが余計に羞恥を強めた。
「力を抜け」
偉そうに、リードするように工藤が囁く。勝手なこと言いやがって。
「バッ…カ! 出来ねぇよ!」
思わず出た声はビックリするほど掠れていて、それが一層自分自身を混乱させる。
「静かに、するから」
馬鹿か。恋人同士みたいに甘い声出すんじゃねぇ! 仕方なく、成り行きで、どうしようもなくてこうなったんだ、絶対合意なんかしてねえ!
そんな心の中の言い訳も、実際は「ううん…」という切なげな呻き声が洩れたに過ぎない。体は苦しいほど反応してしまっている。

額に手を置かれ、ふと堅く瞑っていた瞼を開くと、自分の頬を熱い涙が伝うのに気づいた。
脚を割られた自分の中心に工藤がいる。
どちらともなく溜め息が洩れると、それが合図だったかのように後ろに当てがわれていた熱い工藤自身が中へと押し進められてゆく。

「…あ、あっ、ーーああっ!」
感じたことのない痺れと、じわじわと引き裂かれてゆく苦痛。
悔しいがつらくて涙が止まらない。
「大丈夫、楽にしろ」
「くっ、だ、いじょうぶな、もんかっ。し、シニソウだっ…!」
気付けば必死に工藤に縋りついて、その肩に指を食い込ませていた。
自分の痴態に気が遠くなる。優しい素振りなど見せずに、さっさとやって、終わらせて欲しい。何も考えなくていいように。中途半端に焦らせるなんて酷過ぎる。


キッドの蒼く濡れた瞳に睨み上げられ、いましも初めて自身で貫きながら、歓びと焦燥を同時に感じて高揚する――。
こうして手の内にしてもなお怪盗はミステリアスな輝きを失わず、それどころか頑なに流されることを拒んで苦しんでいる姿は切ないくらいに美しい。
捕らえたのは俺ではなかった。絡め捕られたのは自分で、二度と後戻りが利かないところまで追い込まれたのも俺の方だった。

後はもう、自分の喘ぎなのか、キッドの悲鳴なのか、夢中で判らなかった。夢中で求め続けた。力が尽きるまで、ただ、夢中で。






ーー体が痛い。

脇腹の銃創もまだ痛むが、いま感じている痛みはそこではない。
ギシギシと関節が油切れを起こしたようだ。腰にも脚にも全く力が入らない。これではいくら探偵が眠りこけていても逃げ出すことなど叶わないではないか。
(く…っ)
半分寝返りをうっただけで、逃走は断念するしかないことを悟った。

いったいどれだけの時間繋がっていたのか。何度も気が遠くなりかけ、意識を手放そうとすると、また次の衝撃に襲われた。堪え難い痺れるような圧迫感と、脳天まで突き抜けてしまいそうな解放感。
喘いで、悶えて…狂わされて…。

(ああもう…俺としたことが)
必死に自分を保っていられたのは最初のうちだけだった。

(死んじまいたいくらい恥ずかしい)

男に抱かれて、男にイカされて、しかもその相手が。
(名探偵かよ。なんでだよ)

心の中で悪態をいくら付いても足りないが、それでも憎いとは思えないのはどうしたことか。
(コイツの毒気に当てられたかな)

工藤はまだ俺の腕を掴んだままだった。捕らえた獲物を逃がすものかとでも言うように。

「……!」

工藤が目を覚ます。俺は無意識に体を強ばらせた。すでに夜はとっくに明け、カーテンの隙間から暖かそうな陽の光が射している。

目を開けた工藤は体を半分だけ起こすと、微妙に頬を熱くしムスッと不機嫌な顔をした俺を認めて性懲りもなく不敵な笑みを浮かべた。

「おはよう」
「おはようじゃねえ!」

掠れ声で怒鳴りつつ、尊大な頬をグーでぶん殴った。

「…テテ。加減しろよ」
「バカ」
避けると思ったのに工藤はそのまま俺の拳をもろに頬に受けて、唇を切ったようだった。

「俺が起きんの待っててくれたのか?」
「んなわけあるかっ」
まさか腰が抜けて立ち上がれないとは言えない。何か言ってやろうと思うが、工藤の視線を感じると体中がかっかと熱くなって言葉が出てこなかった。無言でフン!と顔を背けるのが精一杯だ。情けない。

「悪かったな。フェアじゃなかったのは認める。それに、ここまでするつもりはなかった」
「……よくそんなこと言えるな」
「本当だ。自分でも驚いてる。こっち向いてくれよ、キッド」
「ざけんなっ。馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇ」
俯いた耳朶から首筋、背中までも赤くしているくせに、キッドは絶対認めようとはしないだろう。
どれだけ深く、互いに愛し合ったかということを。


白い閃光に包まれ、体が浮いた瞬間を思い出す。
俺を助ける為、銃口の前に飛び出したキッド。この不思議な怪盗の正体をいつか知りたい。しかし探偵にとって怪盗は今も謎のままで、当分心を許してくれることはないだろう。手を離せばまた遠く手の届かないところへ飛び立ってしまう。
その前に確かめたかった。キッドの証しを、生命を。この手の中にあるうちに。


「やめろ! キスなんかしやがったら唇噛み切ってやるからな」
「明るくなったら冷てえのな。あんな可愛い声あげてたのに」
「てめえっ、コロス!! 」

工藤の首に手をかけてひっくり返すと、見上げた工藤とまともに目が合った。やばい。顔が熱い。

判ったよ、今日のところは休戦だ、と工藤は笑う。頭にくるほど爽快な表情で。


もとから探偵には解っているのだ。
俺がーーキッドが、目的を遂げるまで何も明かすつもりがないことを。
マジシャンにとって種明かしは何よりの禁忌なのだから。
逃亡することが宿命の怪盗であるかぎり――。



20110811
20110901 改


―――――――

あとがき

結局、素顔とカラダは押さえたけど本名素性は不明なまま、にしました。あっココロもですかね?
あとから前半を書き足したのでさすがに急展開すぎて我ながらハズカシイ。(汗汗)
 

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