名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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夢を見る。

暗い夜を彷徨う夢。

元の体を取り戻し、元通りの生活へ戻り、すべてを――自分を取り戻したはずだった。

なのにこの喪失感はどうしたことだろう。

淋しい。
幼なじみの恋人や、気の置けない探偵仲間の友人達と休日に繰り出してはしゃぎまわっている時でさえ、心は他の事を考えていた。



ぼんやり、夜空を見上げる。

夢に出てくる闇夜。

秋の音だけが静かに響く独りの部屋。
俺は何を待っているのだろう。
せめて月が出ていれば――。
そうすれば月光に浮かび上がるヤツの姿を思い出すことくらいはできるのに。


「こんばんは」

いつ眠ってしまったのだろう。

夢に現れた怪盗は闇に紛れて輪郭さえ定かではない。ぼんやりとその白い姿がバルコニーに佇んでいるのがかろうじて判るだけ。

「眠ってたのか? 風邪ひくぜ」

余計なお世話だ。夢の中でもお節介な怪盗。
机に突っ伏したまま目だけで近づいてくる怪盗の姿を見つめる。

どうせ夢なんだ。
跳ね起きて、今より大きな喪失感に囚われるのは堪えられない。
だから、俺はもう一度目を閉じた。

ああ…逢いてぇなあ、と呟く。


アイツと俺とは、たぶん一対になった片割れ同士なのだ。
自分にないモノを持つ運命の相手。
どう説明すればいいのかわからない。
ただ、失いたくない――と願うだけ。

アイツはアイツで自分の目的を達したのだろう。俺が自分を取り戻したのと時期を同じくして、パッタリと姿を消した。密かに「工藤新一」としての邂逅を楽しみにしていた俺は、宙ぶらりんな想いを抱えたまま今もこうしてアイツの夢を見る。

逢いたい。
もう一人の俺。俺の半身に。
逢って、伝えたい。どんなに俺がお前と一つになる日のことを夢想し焦がれているかを。

「泣いてんのかよ」

「…………」

だめだ。目を開ければ消える。

「目、開けろよ。消えねえから」

どくん、と心臓が大きく鳴る。

「逢いに来たぜ。俺もお前に逢いたかった。迷ったけど」

真横に寄り添うヤツの気配に総毛立つ。

「――キッド――」

闇に慣れた視界の中で、キッドがシルクハットをとり、くるくると部屋に舞わせるのが見えた。

そしてモノクルに手を添え、静かに外す。

「夢じゃねーのか……」

「確かめろよ、自分で」


涼やかな虫の音が響く夜更け。

抱きしめた怪盗が霧の中へ消え去るまでの短くも永遠の時が、ようやく訪れたのだ。





20110827



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