※拍手御礼 「悪夢」「加虐実験」に拍手下さった方、ありがとうございました(^_^)/
月光リフレクション《side S》(キッド×新一)
カテゴリ★インターセプト2
※はじめにお断りを…まだ引っ張ってます、スミマセンッ(*_*;
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今日夕方、一課から捜査協力の要請があった。
快斗には怒られそうだが断るわけにもいかず、オレは高木刑事と合流して現場に向かった。
集中できるか内心不安だったのだが、いざ現場に着くとオレは条件反射のように謎解きにのめり込んでしまった。
結局犯人逮捕まで見届け、そこで夜21時を回っている事に気付いてハタと我に返った。
マズいっ。
パトカーは遠慮してタクシーで自宅に戻ったのが22時40分頃。慌てて風呂にこもって可能な限り体を清め、髪も普段はしないトリートメントまで試して23時半にようやく風呂からとび出した。
大急ぎで身支度して窓を開ける。
間に合った。約束まであと15分。
冬間近だが窓を開けておけという快斗の指示だし……そうでなくても風呂上がりだし、ドキドキするし、とにかく暑い。
それに服。
フツーならパジャマを着るところだが、なんだかそれも気恥ずかしくて、迷ったあげくクリーニングからあがってきたばかりのスーツ、シャツ、ネクタイを引っ張り出して着用した。だから余計に暑い。
ふうと息を付いて、ベッドに座り込んだ。
腕時計を見る。スーツを着たんで、つい時計もはめてしまった。…あと10分。
ドキドキした。
たぶん…すぐ…脱ぐのにな。
そう思うとまたまた体が熱くなる。
快斗。快斗はどんな格好で来るのかな。普通に黒のジーンズかな。
もう一度ふうっと息を吐いてベッドに寝ころんだ。寝不足と、風呂でノボセたためか頭がぼうっとしている。
開け放った窓から吹き込む夜風が冷たくて気持ちいい。
目を閉じる。
初めて快斗に逢った時の事を思い出す。
オレの呼び掛けに振り向いたのは、どこにでもいそうなラフな服装の少年だった。本当にこれがあの怪盗キッドなのかと信じられない思いで向かい合ったっけ。
─────怪盗キッド。
快斗を知る前から、オレはキッドに惹かれていた。
あの白い姿の怪盗に…。
追いかけても追いかけても、伸ばした手からするりと抜け出すあいつ。
気障なモノクルを光らせ…長いマントを翻せて。
キッド…。
夢なのだろうか。
怪盗キッドがそこにいた。
キッド。今夜こそ、逃がさない。
(なにをするんです、名探偵!)
え?
オレは訳が分からず慌てて後ずさった。
オレの部屋。オレのベッド。
あれ?! 今、いつだ…?!
「うわあ」
キッド!!
オレは快斗が訪れるのを待っていたんだ。なのに現れたのは快斗ではなくて────怪盗キッド?!!
頭が働かない。現実感がない。
フワフワと、まるで漂っているようだ。
キッドのトランプ銃が落ちてる。
拾い上げてキッドに押し当てた。
心臓が不規則に跳ね回り、手が震えている。
待ってくれ、キッド。
ちゃんと目が覚めるまで。
この震えが治まるまで…!
(─────あ)
唇が、温もりに覆われる。
キス…。キッドと……。
宥めるように背を抱かれ、ほっと安堵を覚えた。
促されるまま、身を委ねる。
見上げると、微笑むキッドの瞳とモノクルのクローバーが揺れているのが判った。
「愛しています」キッドがオレに告げる。
オレ…も。キッド、オレも、おまえが好きだった。ずっと…ずっと─────!
さやさやと風がカーテンを揺らしている。
はあっ、と息を継いで目を開けた。
そうだ…窓が開けっ放しなんだっけ。
ボタンを外されたシャツの隙間に夜風を感じて、オレは小さく体を竦めた。
それに気付いたらしいキッドが窓を振り向き、手袋の指先を軽く弾く。
すると、開いていた窓がすうっと音もなく閉じられた。
「……………」
思わず窓とキッドの間にどんな仕掛けがあるのか身を乗り出した。
キッドがやれやれと言うように苦笑する。
「名探偵…なんでもかんでも謎を解けばよいというものではないでしょう?」
言いながら、キッドはシルクハットをクルクルと部屋に投げ出した。途端に部屋に薔薇の香りが漂い満ちる。
「キッド」
「落ち着きましたか?」
「ん……まあ…」
オレは頷いた。
恥ずかしい。
どんだけ舞い上がっていたんだ、オレ。
アタマはなんとか状況に追い付いた…と思う。
でもたぶん、心と体は追い付かない。
オレが見ている前でキッドはマントを肩から外した。上着も脱いで青いシャツにネクタイという姿になる。
いよいよ…なのか。
手袋を外すキッドの仕草に、とてつもなく心臓が跳ねあがる。
オレは─────恐る恐る指を伸ばした。
ずっと、したかったことがある。
キッドのモノクルをこの手で外す。
そしてその素顔を自分のものにしたいという願望を。
避けるかと思ったが、キッドは黙って目を閉じた。
オレは指先でモノクルを掴み、キッドの右目からそっと取り外した。
閉じていた瞼をキッドがゆっくり持ち上げる。
「────か…い、と…」
現れた蒼い瞳のキッドの素顔は、オレのよく知る、オレの大好きな恋人のものに違いなかった。
フフ、と、快斗はキッドのままの笑みを浮かべてオレを見た。
「名探偵…キッドとお呼び下さい。どうか今は」
そう囁くと恋人は嬉しそうにオレの頭を抱え込み、強く強くオレを抱き締めた。
20130518
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[9回]