お別れのストーリーボード〈1/2〉
カテゴリ★ファーストステージ
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風が吹いてる…。
不思議な浮遊感。
うとうとしてると、耳元で “アイツ” の声がした。
『お目覚めですか、名探偵』
「──エ…?」
エエエッ?!? と、もう一度声を出す。
「おっと危ない。じっとして」
「わあっ」
はるか下に街並みが見える。
風を切ってオレは滑空していた。怪盗キッドに抱きかかえられて。
「な、なんで?!いつの間に…、オメっ、キッド! 」
「名探偵を抱いての飛行もこれが最後かと思うと名残惜しい限りです。飛び納めなんですから、少しは堪能させてください」
「最後って…!」
いやいや落ち着け。思い出せ。
どうしてこうなった──?
今日は終業式だったんだ。ずっとみんなと一緒で。式が済んで、ほっとして、先生に挨拶して、博士と、灰原と、少年探偵団の三人と。そうだ、蘭も来ていた。
そろそろ本当にみんなとお別れだと思って、湿っぽくならないように、ちょっとはしゃいでみせたりして。
それで博士が車を回してくれるのを待ってたんだ。
そしたら蘭が──『校舎の屋上で記念写真撮ろうよ。 街をバックに、コナンくんを囲んで』って言い出して。先生にお願いしてオーケーもらったからって蘭が言うから…。
て、まさか!
「てっめ、キッド!! さっきの蘭はオメーの変装だったのか! おかしな予告状よこして、オレを屋上に連れ出しやがって!」
「ハイハイ、申し訳ありません。もうすぐ着きますから、どうかお静かに」
「お子様扱いすんじゃねえ! 着くって、どこへだよ!」
「名探偵のご自宅です」
「は…っ???!」
「まあ、正確にはそのお隣ですが」
キッドは前方を見たまま軽く微笑んだ。
博士んち…?
わざわざオレを盗んどいて、目的地が博士んちっておかしくねーか。
「おい、予告状の『去り行く真実』って、マジでオレのことなのか?!」
「さあ」
「さあ、って何だよ。はっきりしろ、キッド!」
「そんなことより、ほら。少年探偵団の皆さんも追いついてきたようです」
「えっ」
高度が下がっている。うちの近所だ。黄色い博士のビートルが真下に見える。
(…?)
───なんだか妙だ。
オレは最初の疑問に戻って考えた。
そもそも、だいたい、どうしてキッドが少年探偵団と対決するんだよ。
キッドがオレの胸の内を読んだように言う。
「これは私から “彼ら” への畏敬を込めた挑戦です。ですから勝負の舞台は彼らに地の利がある阿笠邸にさせてもらいました。このくらいのアドバンテージはプレゼントさせていただかなければ」
「なんでだよ?! オレはもうすぐ工藤新一に戻るんだぜ。なんでこんな混乱させるような事するんだよ!」
フフフ、と怪盗キッドが笑う。
「そう簡単に工藤新一に戻れると思ったら大間違いですよ、名探偵」
「なに?!」
「TVクルーも準備オーケーのようです」
「は…っ?! テレビ?!」
次から次へとおかしな事を。
「はい。月夜でないのが残念ですが、怪盗の最後の舞台ですから、なるべく派手にと思いまして。ああ、警察にはご遠慮いただくよう手筈は整えてありますのでご心配なく」
「何が心配なくだよ! 真っ昼間に飛び回ってテレビに映ったりなんかしたら、警察が気付かないはずないだろう!」
「大丈夫です。これはドラマ撮影ということにして届けを出してありますので」
「ドラマ撮影いぃ???」
「はい。タイトルはズバリ『少年探偵団VS怪盗キッド〜キッドキラーを奪還せよ!』なんちゃって」
モノクル越しだったが、『なんちゃって』のところでクスリと笑った横顔は快斗のものだった。
は???
つまり、どーいうことだよ?!
よくわかんねーが…オレはダシに使われてるだけって事なのか??
最後なのに??
オレが主人公なのに?!
なんか…ひどくねーか??
江戸川コナン、こんな感じで脇役扱いで去るのかよ?
なんだよ、『少年探偵団VS怪盗キッド』ってーー???!!
つづく
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※カテゴリの締めに入ってるつもりなんですが。一番混乱してるの私かもです…(-_-;)。続きはできるだけサクサクまとめて、新快エンディングにもっていきたいのですが、どうなるかな〜。
●拍手御礼
「放課後」「蹴撃」「恋患い」「LAST LETTER 〜最後の予告状〜」ほかカテゴリ★交錯 各話、さらにイラスト「白Kですが…」&「新快補充なぐり描き」へも拍手&コメントいただき恐縮です。うれしーです(^_^;)。雫水様、
名無し様、ありがとうございました!
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