ぎゅっとハグして(コナン&快斗)
カテゴリ★ファーストステージ
※コナンくん(新一)視点、軽めイチャ甘です(^_^;)。
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「ただいま~! …あれ?」
少年探偵団の週末ミーティング(という名の毎度のランチパーティー)がお開きになって阿笠邸から戻ったオレは、自分ちの玄関の鍵がかかったままなのに気付いて思わずガックリ肩を落とした。
快斗のやつ……まだ来てねえのか。
『今日はサッカー部の紅白戦があるからミーティングはパスだけど、終わったらコナンくんとこに泊まりに行くからね!』なーんて電話で言ってたのに…。
少年探偵団〝見習い〟扱いの快斗を、ボチボチ〝準団員〟くらいに格上げしてやってもいーんじゃねえかと、こっそり提案しといてやったのに。
リビングの灯りだけつけてソファーにぴょんと飛び乗った。
「・・・・」
今朝自分が読んだ新聞がそのまま出ている。一人暮らしだから当たり前だ。ため息を付いてオレはソファーの背にもたれ掛かった。
快斗はオレたちの現状を〝半同棲〟と位置付けているようだが、オレとしてはその言葉にも至っていない。
だって快斗のやつ、月の三分の一も顔出さねーし、そのうち半分は泊まんねえで帰っちまうし。
先週からはすれ違いが続いてて、もう一週間以上快斗の顔を見ていない。
快斗が来ていたら…。
飛び付いて、しがみついて、ギューッて抱きしめてもらおうと思ってたのに。
「……なあ~んてな」
自分で恥ずかしくなってズルルとソファーの上でずっこけた。
実際に快斗を前にしたらそんなこと出来っこない。やりたくても、そんな恥ずかしい真似出来るわけがない。抱き付けば、快斗ならきっと抱き返してくれるだろうとは思うけど。
でも。
〝あはは、淋しかった?〟
なーんてニヤニヤ笑ってからかわれるのがシャクなんだ。だってオレは姿はコナンのままだけど、快斗の前では工藤新一なんだから。
コナンくんなら飛び付けても、工藤新一的には飛びついたりは出来ない。そんなかっこワリィこと……出来るか。
「・・・・」
新聞の下に、数日前に読み返していたミステリー本が置きっぱなしになっていた。
片付けよう。快斗がくる前に。一人暮らしのダラシナイとこ、あんまり見せたくねーし。
新聞をきちんと畳んでテーブルに直角に置いて、ホコリや飲み物の雫が垂れたあとをふきんでキレイに拭き取って、今朝から溜めてた食器類も洗って伏せて。
これでよし。快斗に『だめだなぁ~、俺がいねえと』とか言われたくねえからな。
「えっと…あとそうだ、本を片付けなきゃ」
ついでに自室に持ち込んでた全集の中の数冊も返しとこう。
工藤家自慢の書庫に入って、書庫専用の梯子を動かす。レールが付いているので子供でも扱いに問題はない。
まずは重たい全集から。
「ヨイショっと」
本を探し出したり、片付けたりは日常茶飯事だ。本の配置は規則正しく、作家順、或いはタイトル順、年代順と、それぞれ分類しやすいところで大きく分けられ、さらにシリーズ物や全集、ミステリー冊子の特集号などサイズの大きな物や特殊な装丁の物などに分かれている。
「あー、これ、この本に入っていたのか」
たまに覗き出すと止まらなくなるのも毎度のことだ。元は親父の書庫だが、この五年ほどはオレが集めた本の比率もかなり増えている。
にしても。
「コナンの手、ちっせえ~。本が少ししか持てねえし、分厚い本は持ち上げんのが大変なんだよ」
よっこいせ! 小学生の姿をした高校生のオレは、やたらオッサン臭いかけ声とともに本を担いで片手で梯子にとりついた。
「エーと、これはここか。んで、これは…あっちか」
棚が一列向こうなだけで、小さな体では届かない。ちえっ。本当のオレの体だったら楽勝で手を伸ばせば届くのに。
高校生の姿のオレだったら……。
照れずに、素直に…手を伸ばせるのだろうか。
快斗…おまえに。
オレが手を伸ばしたら、おまえも笑わずにオレを抱き締めてくれるか?
快斗────。
「危ねえっ!コナンくん!!!」
「えっ」
突然聞こえた声に慌てたオレは手に持っていた本を落としそうになった。拙いっ、親父のコレクション。
「あれ…?」
本を掴みなおしたと思ったら、梯子に掛けていた足が外れた。そしたら、くるりと天地がひっくり返って。
ひっくり返って─────。
うわああああっ!!!
「コナンくん!! 何してんの!!!」
「……え? あ、快斗…」
「あっぶね、あっぶねええええ、俺が今来なかったらどうなってたと思うんだよっ!!」
「どうって……」
気が付くと床の上で快斗に抱き締められていた。変なの。梯子の、あの上にいたのに。
「あっ、本?!」
思い出して手元を見る。
よかった。本は無事だ。両手にしっかり抱えていた。よかった。
「てか、快斗が急に大声出すからだぞ!」
「なに言ってんの?! ふらってバランス崩してたからじゃん!!」
「大切な初版本なんだ。破損したら大変だよ。資料としてだって貴重なもので、市場価値にしたら…」
ゴン★☆!!
鈍い音がして、それから頭のてっぺんがズキズキし始めた。
「…痛ってえな! 何すんだバ快斗!」
「馬鹿はコナンくんだろ!!まったくもう…」
「?」
今度は急に息苦しくなって、目の前が暗くなって、温かくなった。
「なにやってんだよ…もう。高いとこのは俺が戻してやるから、そのまま置いとけってこないだ言っただろ?!」
「……おまえ、全然来ねーし」
「一週間くらい置きっぱなしにしたって腐らねえだろ! 下手したら落ちて大怪我してたぞ! コナンくんの馬鹿!!」
快斗の匂い。いい香り。柔らかなトレーナーのその奥の、快斗の胸に顔を押し付けた。
「シャワー浴びてきたんだ?」
「えっ? ああ、まあ。サッカーで泥だらけだったから」
「風呂ならここで入ればいいのに」
「だってさ…」
ぎゅうう、と快斗がオレを抱く腕に力を込める。
「こんなふうに逢ったらすぐに抱き締めたかったから。工藤潔癖だろ、汗臭いと嫌われると思って」
「バアカ」
どさくさに紛れてオレも力いっぱい快斗に抱き付いた。ぎゅうっと。これでもかと。
落っこちかけたのを快斗に抱き留められた、その突発的な出来事にかこつけて。二人して、書庫に座り込んだまま。
ただ、互いを強く抱き締め合って。
20131209
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●拍手御礼
どなた様か「赤い月」に拍手感謝です。このブログでは数少ないダークサイド寄りの快斗くんで〝赤い月〟は描写のままにその夜本当に大きく低く浮かんでいたのです~。
さらに「不機嫌な恋人」「恋人以上・謎未満3」「夢落ちトライアル」「共鳴」「別れの季節」「月光という名の真実」「サードステージ」、そしてカテゴリ★こういうこと、★インターセプト2・3の各話、「ひとりごと」にも拍手いただきました。感謝でございます(^^)//
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