名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
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連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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フェードアウトへのカウントダウン
カテゴリ★ファーストステージ
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遠くて遠くて待ちきれないと思っていた春が、いつの間にかそこまで近付いていた。


灰原や博士と打ち合わせ、ロスにいる親父やお袋、それから服部にも口裏合わせを頼み、オレは少しずつ、少しずつ、“去っていく江戸川コナン” の脚本を作り上げていった。

春には転校すること。

家庭の事情で離れて暮らしていた親とともに、アメリカへ移住することになるだろうということ。

設定は齟齬のないように、ただし詳細はあまり作り込みすぎず、移住先の住所は未定ということにした。
決まったら連絡するからと言って。

最初に転校の話を少年探偵団の3人にした時、予想していたあゆみちゃんだけでなく、元太や光彦まで泣き出してしまったのには驚いたし、本当に困った。

みんなを宥めるためにさらに嘘を重ね(また会えるよ、とか。テレビ電話があるだろ、とか)、オレ自身、精神衛生上かなりのダメージを負うことになってしまった。

今さらながら、仲間として多くの時間を共に過ごし、一緒に危機を乗り越えてきた “少年探偵団” との絆が、自分の中にもこんなに強く育っていたことに驚いた。

さらに。

毛利のおっちゃんや蘭、園子にも同様の “筋書” を伝えた。まだ詳細は未定だからと誤魔化しつつ。
下手な事を言うと、園子のやつ、蘭や少年探偵団を連れて訪ねに行くからー!とか盛大なツアー組みそうで油断できねーし。

『オレは工藤新一に戻って、この先もみんなのそばにいる。江戸川コナンは工藤新一なんだ』───って、全部ぶちまけられたらどんなに良いだろう。

けど、それも灰原や博士、親父、お袋と相談した結果、やはり江戸川コナンは江戸川コナンのまま去るべき、という結論に達したのだ。


蘭がオレ(江戸川コナン)の肩に手を乗せ、瞳を潤ませながら言う。
『向こうに行っても元気でね、コナンくん。寂しくなるけど、コナンくんにとってもご両親と暮らすのがやっぱり一番いいのよね』…と、自分自身に言い聞かせるかのように。

声を詰まらせる蘭に、オレは思わず『ホントはずっと蘭姉ちゃんたちと一緒にいたいんだ』と言ってしまい、蘭まで泣かせてしまった(オレも泣いた)。

それにしても、江戸川コナンとしてみんなと別れるのがここまで大変だとは正直思っていなかった。

そんなこんなでメンタルを散々やられながら、それでもオレは本当のオレに戻れる日を指折り数えて待っていた。

早く工藤新一に戻りたい。

嘘なんかもうつきたくない。

江戸川コナンは消える。

江戸川コナンは元々存在しない人間なんだから───。










一週間ぶりに泊まりに来たと思ったら、快斗までオレの近況報告を聞くうちに涙目になりやがった。

「なんで快斗が泣くんだよ。オレが泣きてえよ」

「だって…俺はコナンくんが工藤だって知ってるからいいけどさ…みんなはさ…本当にさ…、ううっ、あゆみちゃん達が可哀そう」

「オレが悪いことしてるみたいに言うなよ。オレだって参ってんだよ。なんも考えないでさっさと工藤新一に戻りてえよ。なんでこんなややこしい目に遭わなきゃなんねーんだよ!」

「………」

「なんだよ?」

妙な “間” を空けた快斗を見上げる。

そしたら快斗は何か思いついたように一瞬ニヤッとして──それを隠すように『あああ』と欠伸をした。

「とりあえず昼寝さして。昨日夜遅かったんだよ」

「テメエ、いまニヤッとしただろ」

「してません〜」

「こら待て。誤魔化すな」

「えっへへー♪ コナンくんゲットぉ〜(^_^)/」

振り返った快斗がぱっとしゃがみ、オレの脇に手を入れて持ち上げ、高い高いをする。
そのままグルグル。

「わわっ、よせっ、目が回る!」

「こうして抱っこできるのもあと少しだもんな。今のうちにたくさん抱っこしとこ!なぁ、コナンくん」

「わあっ、ばか快斗!危ねえって!」

回ってるうちにカーペットに足を取られたのか、快斗はオレを抱っこしたままバランスを崩した。

「ぎゃっ、わあっ!」

「バッ、快斗〜っ!!」

ぐらり、どでーん!!

いわんこっちゃない。危うく舌を噛むところだ。
快斗はオレを胸に抱えたまま、カーペットにひっくり返って静かになった。

「おい、快斗」

「……」

「おいっ、バ快斗、大丈夫か!」

「…うん。ダイジョブ…いてて」

「調子に乗るからだ。頭打たなかったか?」

「コナンくん…」

ぎゅっ。

「くるしい」

「こんなちっこくて軽いのに、よく今まで頑張ってきたよなぁ」

「ああ? ああ…、まあ、な」

快斗の声が少し震えている。

「俺、コナンくんと工藤、どっちも好きだ」

「…んだよ、今さら」

「工藤が戻ってくるのは嬉しい。けどコナンくんがいなくなるのは正直寂しいんだ…」

「ちぇっ、今のうちだぞ、そんな甘い事言ってられんの」

「なんで」

「前に言っただろ。元の姿にもどったら、“抑えつけてひん剥いて泣かせてやる” って」

「げっ」

「オレは言ったことはやるからな。コナンでいた間にテメーにされた事は全部5倍返しだ」

「え、ちょっ、ご、5倍って…そんな」

コナンがいなくなるのは寂しい。それは快斗の本心だろう。

だが、オレは戻る。
工藤新一に戻って、小さい体では出来なかったいろんな事をやって、本当の自分を取り戻すんだ。


オレは結局、快斗が何か企てようと思い付いたらしい事に気付きながら、そのままスルーしてしまった。

あと数週間。

江戸川コナンが消え、工藤新一が復活するまで、カウントダウンは確実に刻まれていた。







20200927
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※相変わらず更新がトロくてすみません。このトロさで恐縮ですが、このまま『カテゴリ★ファーストステージ』完結まで進めてしまおうと思っています。もしかして途中に息抜きで単発挟むかもしれませんが(-_-;)。

雫水さま●拍手コメントいつもありがとうございます! 拙文ではありますが、宜しければ引き続き同カテゴリお読みいただければ幸いです。

●拍手御礼
「月光という名の真実」「痣(あざ)」「確率」「雨音の回想」「遠い春」「アブノーマルII」「ウルトラキッス」「紅い霆」

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