ジグゾーパズル《3/3》(新快前提 コナン&快斗)
※引き続き快斗くん視点です。
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俺はもたもたしてる自分にようやくキリをつけ、コナンくんの後を追って風呂に向かった。
やっぱりまだちょっとドキドキするけど…。
「わっ!」
「な、なんだよ急に! おどかすな」
そーっとバスの扉を開けて、でかい声かけた。声が反響して、びっくりした顔のコナンくんが振り向く。シャボンの泡が揺れた。
「へへへ。俺も入ろーっと」
「んだよ…ガキか」
「小学生に言われたくねーよ」
「うっせ、バーロォ」
コナンくんの小さな背中が頼りなくてカワイイ。
ざっとシャワー浴びて、そばに座り込んだ。
「名探偵、お背中、洗わせていただきます」
「…いいけどよ」
背中が小さいからすぐ洗えちゃう。
コナンくんもなんだか微妙な様子だ。なんつーか、お互いこそばゆい感じ。それが楽しいんだけど。
コナンくんをこっち向かせて細い首も泡たっぷりにして優しく洗った。
「ぶっ」
「あっ、ワリ」
たくさん泡立ちすぎて、シャボンがコナンくんの鼻の下にくっついた。
「てめ」
「わざとじゃねーよ」
「よこせ。俺も洗ってやる」
やった。夢見てたみたいにお互いを洗いっこ。楽しい♪
やらしくならないよう気をつけながら、スキンシップを図る。泡々になってふざけあって、それから一緒にシャワーを浴びた。
交互に髪も洗って、さっぱりするとお互いこの状況に少し馴れてきて……なんとなく自然に顔が近づいて、軽くチュウをした。俺が微笑むと、コナンくんもふふっと笑った。
一緒にバスタブに浸かる。お湯がざばぁーと溢れ、二人でうわぁーと騒いだ。
「ふー。気持ちいい~」
「快斗、明日は?」
「空けてあるよ。名探偵は?」
「空いてるけど……」
「けど、なんだよ」
「買いたいもんがあって」
「なにそれ。俺が付いてってもいいもん?」
「別にかまわねーけど」
「けど、なんだよ」
「アイツらも一緒だぜ」
「…あの子たち?」
少年探偵団か。うーん。微妙だ。
行ってもいいなら行ってもいいけど、どうしよう。
「なに買いに行くんだよ」
「ジグゾーパズル」
「ジグぞ……? なんでまた」
「博士んちにあったんだよ。みんなでやってたらアイツらハマっちまって、自分のパズル買うって言い始めて」
「どーせ最後までやんねーで飽きんだろーよ」
「まぁそうだろうけど、最初は小さいの買うだろ」
「小学生の小遣いじゃな……」
「博士が買ってくれるんだと」
「へー」
名探偵も買ってもらうのかな?
マジックのネタに、今度ジグゾーパズル使ってみようかな……。案外コドモ受けすっかも、とかぼんやり考えて目を閉じた。
お腹に名探偵の小さなお尻が乗ってるのを感じる。お湯の中だから、余計に軽い。
ふー……ぽかぽか。夢見てたとおり。こんなのって想像してたとおり――やっぱりシアワセ。
ああ……このまま、平穏な日々が続くといいのに。
もう…おかしな連中が怪盗キッドの名をかたったり、正体を嗅ぎまわったり、そんなことが……もう二度となければいいのに――。
「…………?」
肩に小さな手が置かれる。
目を開けると、コナンくんの顔がすぐ前にあって――近すぎて、胸がドキンとなった。
(あ…)
コナンくんが、抱きついてくる。
(え……え?)
ドキン。ドキン。
(や、やば!)
ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。
(げ、やべっ、落ち着け、静まれ心臓!!)
ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。ドキン。
(ひーっっ! 止まんねーーっ(@@)///)
「快斗」
……ごくり。
俺を見るコナンくんの瞳が、工藤新一のものになる。
「…く…ど……」
あ。
小さな唇が…重なる。
コナンくんの背中を、いつの間にか支えるように抱いていた。
チュ、チュ、チュッ。
「………………」
あの〝合図〟だ。優しく一回…短く三回。
目を開けると、工藤の目をしたコナンくんが笑っていた。
「快斗」
「……はい」
「先に出てっからな」
「……はい」
「おめー真っ赤だぜ。のぼせんなよ」
ニヤリと笑って工藤が…いや、コナンくんがバスタブからあがり、タオルで体を拭ってドアから出ていった。
う……、うぁああー……(><)ゞ
ヤバかった……てか、ヤバい。
気付いたかな、工藤。いやコナンくん。
たったあれだけで、あれだけなのに、しっかり反応してしまっている俺。めっちゃくちゃ恥ずかしい。
〝これ〟がおさまんねーと、部屋に戻れねぇよ……。泣きたい。俺のバカ。俺の×××の、バカ~!!
「ひぇっくし!!」
ぶるっと震える。冷てえ。寒みぃ。風邪ひきそう。
「なーにやってんだよ。なかなか出てこねぇと思ったら、くしゃみなんかしやがって」
「うう。ティッシュどこ」
「そっちのテーブル」
びーと鼻をかんだ。またクシュンとくしゃみが出る。
熱を冷まそうと冷たい水のシャワーを浴びたんだ。それでもなかなか〝平常モード〟に戻らなくて。浴びすぎた。
「ったく、気ぃ使って先に出てやったのによ。出してくればスッキリすんのに」
な、なんのことかなー? しらばっくれる俺。あのままひとりえっちなんかできっかよ。
「崩れてんぜ、快斗」
「えっ…なにが?」
「ポーカーフェイス」
「……うっ、うるせー!」
ちくしょ。やっぱバレてる。ちくしょ、また熱くなってきた。
「明日さ、買物一緒に来いよ。みんなにちゃんと紹介すっから」
「えっ。まじ?」
ニコニコ笑う名探偵は、今はもうコドモの顔に戻っていた。
「うん。えーと、新一兄ちゃんの親戚の黒羽快斗兄ちゃんで、快斗兄ちゃんはマジックが得意で、江古田高校サッカー部の時々部員です!」
「ちぇっ。これからは普通に高校生なんだから、時々は余計。サッカー部員でいいよ」
「そーなの?」
「言ったろ。基本、もう怪盗キッドにはならないつもり。なんか起きなければね」
少しコナンくんが眉をひそめる。
「……いや、なんも無いと思うけどさ、キッドはマジシャンだから。特別な時には姿を現すこともあるかもってこと」
「特別な時って?」
「……特別な……」
出逢った時の姿で名探偵に逢いたくなった時とか。
そんなこと今の今まで考えてなかったけど、言いながらそれもアリかなとか考える。
「イベントの時。パーティーとかさ」
「指名手配中には変わりねーんだから、通報されるぜ」
「つまんねーこと言わないの! 怪盗キッドが捕まるわけねーだろ! 誰にも。名探偵以外にはね」
決まった。
俺はしゃがんでコナンくんを見つめた。顔が近づいて、おでこを合わせた。バーロォ、と言いながら、コナンくんも笑ってる。
こんなふうに。小さくてデコボコした毎日細切れの時間をつなぎ合わせて。
そうだ、まるでジグゾーパズルみたいに。
ひとつ繋げるのに時間がかかるかもしれないけど。そっくりなニセモノに惑わされて振り出しに戻ることもあるかもしれないけど。だけどピッタリ形が合わさったその瞬間の喜びを積み重ねていけば、どんどん嬉しくなって――きっと止められなくなる。ひとつ完成したら、また次にも挑戦したくなる。
そんな小さな毎日を繋げていこう。
なにがまた起こるか分からないけど。だからこそ愛しい。
君が。これからの君との毎日が。
20120422
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あとがき
ふー、やっとなんとか着地点見つけられました。
書き出す時にきちんと結末まで考えてる事ってほぼなくて、勢いというか、その時の快斗くんたちの気持ちの流れというか、雰囲気に流されるまま書いてます。
このシリーズ(?)いずれまたさらに後日談書きたいです。自己満足です!(^^;)
[8回]