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メディシン2(コ快前提 新一×快斗)
カテゴリ★ファーストステージ
※前回『メディシン』のつづきです。
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「コナンくん! いつまで風呂入ってんだよっ」
テレビ見てっからお先に風呂どうぞとコナンくんに勧めてから小一時間たつ。
何やってんだ。寝込んでのぼせて溺れてたらシャレになんねー!
しびれを切らして洗面所の扉を開けた。
「俺も風呂入っけどいい?」
目に入ったのは、バスタオルだった。
コナンくんの顔があるはずの位置に。
「…………」
どきんとしながら、おそるおそる視線を上に持って行く。
上気した男の体。胸もと。肩。
くびすじ………。
「快斗」
名を呼ばれて、俺は思わず顔を見る前に洗面所のドアをバタンと閉めた。
エ? エ…? エエエッ(@@);;;???
『快斗』
背中で押さえたドアがどんどんと叩かれる。
「なにっ? また夢?! 俺、寝てんの?」
欲求不満が溜まりすぎてんだろうか。
哀ちゃんに叩かれた頬を抓った。
イタイッ。
もうー回。やっぱ痛い。
いやいや痛くても夢かも。だって……。
『快斗! 開けろ!』
ひーーっ、まじ!?
「工藤っ、なんでまたいきなり…!」
廊下に後退るとガチャとドアが開いて、いつかの高校生探偵・工藤新一が現れた。火照った肌から風呂上がりのホッカホカの湯気をもわもわたてて。
「 てめ、なんでドア閉めんだよ!」
「いややや、だってさ」
裸足にスリッパ履いた工藤が腰巻きタオルいっちょの姿でにじり寄ってくる。
「逃げんなよ」
「に、逃げてねえ、けど、おま…工藤っ、おまえまたヘンな薬飲んだのかっ」
「ヘンな薬とか言ってると、灰原にど突かれるぞ」
「うっ…(汗)」
哀ちゃんを今以上怒らせたらマズい。
ん? てことは、哀ちゃんが薬を……?!
しかし考える間もなく背中が廊下の端に行き当たる。
「く、くどう────」
伸びてくる温かい手のひら。首に添えられ、髪に指が通る。
あっ…。
目を閉じる。
ずっと待ち望んでいた工藤とのキスだった。
吹き込まれる吐息に、忘れられない陶酔の記憶と甘く切ない想いが甦る……。
と、それを破る電子音。お約束!
>> ピピピ・ピピピ・ピピピ <<
「……くど、コナンくんの探偵バッジが」
「知るか」
グイッと抱き寄せられて、俺も工藤の裸の背に手を回して再び唇を合わせた。
温もりが気持ちよくて、このまま身を任せたくなる。
ああ……流されちゃい…たい……けど。
>> ピピピ・ピピピ・ピピピ <<
「で…出たら? なんか…急ぎじゃね?」
思いっきり舌打ちした工藤が、洗面所に置いたコナンくんの服の中から探偵バッジを取り出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ひでえ。
貴重な一時間がぁああっ(T-T) by工藤。
さっきのは歩美からの緊急連絡だった。(以下説明)歩美のマンションに不審者が侵入したと通報があり、近くの交番の警官が調べてくれたが見つからず、また何かあったら呼んで下さいと言って警官は去った─────が住人たちは納得せず、引き続き自分たちで捜索を続けている。
不審者捜索の助言が欲しいとのことだった。
最初は変声機を使いコナンの声でしゃべっていたオレは、途中から新一お兄さんがいるから代わると言って状況を聞き、推理して可能性を片っ端から調べるように伝えた。だが、終いには歩美が捜索に加わっている父親が戻ってこないと不安がって泣き出してしまい……
で、なぜか快斗が俄然やる気を出して〝少年探偵団見習い・黒羽快斗出動します!〟なんつってチャリで飛び出していき……
オレもその後を歩美のマンションまでスケボで追って来て……
そして高層マンションのベランダをスパイダーマンばりに往き来していた元鳶職の空き巣常習犯を発見し、快斗の活躍(元怪盗の方が余裕で上手だった)によりそいつを確保し、ふんじばって身柄を管理人たちに預けて警察を呼ぶように指示した。
通常なら早期解決で、万々歳で、歩美には新一お兄さんはこのまま出かけちゃうからみんなによろしくねと伝えてバックレ……家に戻ればいいだけだった。
薬の効き目が切れてしまうという、オレにとってサイアクの事態が迫っていることを除けば。
「くっそー。なんで今夜に限って……」
「どうした、工藤」
チャリの快斗と並んで家に戻る途中、深夜の街角で、それは突然きた。
急ブレーキをかけてスケボを飛び降りたオレは、一度ひっくり返ってから起き上がり脇の路地に駆け込んだ。
「工藤────?!」
後ろから慌てた快斗の声がした。
体中から湯気が立ち上るような、風呂場でのぼせたようなくらくら感が強くなる。
だめだ……、立っていられない。
オレは膝を着いた。
あそこの…物置の、かげまで行かないと……ここじゃ通りから見えてしまう。
だけど急速に睡くなって、動けない。
体力の消耗と体組織の変化による苦痛を軽減させるため、変化が始まると昏睡状態に陥る、と灰原は言っていた。
さっきは風呂場だったけど……。
も、だめだ。起きていられない。
快斗がオレを呼ぶ声。
上体を抱き起こされた。揺さぶられてる……。けど、もう目が開けられない。
できれば、変化してるとこ、快斗に見られたくなかった……。情けねー……。
唇を柔らかく覆われる。
ああ。快斗のキスだ……。
快斗……。
今夜おまえを…抱き締めたかった……。
自分の睫が熱く濡れるのを覚えた。
そして、何も分からなくなった。
「まーた風呂場で寝てやがったな」
「………………」
「ぜんぜん出てこねーから、のぼせてひっくり返ってんじゃねえかと思ったら、やっぱそうだよ」
「かい……と…?」
え!? なに?
まさかの・・・夢オチ?!
そんなばかな!!
明るいバスルームの中で、小さな体のオレは裸の快斗に抱かれていた。
「うそおおぉおお」
「嘘じゃねえよ! お疲れ名探偵。このまま寝ちまいな」
チュッと鼻先にキスされる。
見ると、快斗の頬にあった灰原の手形は消えていたが、かわりに新しい擦り傷ができていた。
髪にドライヤーをかけられ、パジャマを着せられてベッドまで抱っこして連れて行かれる。
「疲れただろ。俺、風呂入り直してくるから、先に寝ててよ」
「…………」
「おやすみ、コナンくん」
「……おやすみ…快斗」
腰にバスタオルだけ巻いた快斗が部屋を出ていった。
────なにを気遣ってるんだか。
歩美んちのマンションでの捕り物で付いた擦り傷が残ってるんじゃ、バレバレだっての。
まぁ、いいか。
快斗なりに、気を使ってくれたんだ……多分。完全にオレを騙せるとは思っちゃいないだろうが、それでも。
今夜は残念だったけど、しかたない。
次はよくよくタイミングを見て薬を飲むことにしよう。
探偵バッジは灰原にでも預けてから。
そうしよう………。
20121110
[12回]