名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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さざなみ《1/3》(白馬×快斗)
カテゴリ☆噂の二人《3》
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「月曜の英語文法、アゲインがあるらしいぜ」

「アゲイン?」

「クラス全体再テストのことだよ! 授業中の小テストだけどさ。文法のセンセ融通利かねーから、なまじ喋れるぶん、白馬なんかよけい目のカタキだぜ」

ふわりと跳ねた前髪をよけて見つめる。

「黒羽くん……それは今の僕たちの、この状況において必要な情報ですか」

「教えといてやろうと思ったんじゃん」

「そうじゃないでしょう。こんな時くらい、君もムードを盛り上げるのに協力してほしいのですが」

「いやだね」

「まったく……、コラ!」

シュークリームで釣ってベッドに座らせ、宥めて背を倒したまではよかったが、相変わらず往生際がワルい。
もぞもぞスライドして僕のベッドから抜け出ようとする恋人の脇に手を入れた。
覆い被さるように唇を寄せると、パッと横を向いて口を一直線に結んでしまう。
……でも、頬が赤い。ドキドキが服を通して伝わってくる。

「いいですね…。なかなかそそりますよ、白雪姫」

「テメッ、フザけたこと言うとぶっとばす…!」

威勢のよい言葉を吐き出した唇を、すかさず捉えた。
もごもご言ってる文句ごと呑み込むと、微かにクリームの味がした。体を震わせ首を振る黒羽をそれでも放さずにいると、苦しいのか僕のシャツの袖に黒羽の指が食い込んだ。

「……は、はあ、ばかっ、く、苦しいだろ!」

「君がもったいつけるからです」

「そんなつもりじゃねえっ、…けど」

「けど?」

小さく口を尖らせた恋人は、僕から目を逸らしてつぶやいた。
〝どんな顔していいのか、わかんねーんだもん〟と。


こうした秘事を黒羽が初めて許してくれた日からしばらく経つ。
照れ屋の怪盗はそのあと何度打診しても次に応じてくれず、僕をやきもきさせた。照れもあったのだろうが、高校生活と平行し〝怪盗〟として暗躍する彼にとって、僕に逢う事が『タイミング的に悪かった』のが理由として大きかったようだ。
さらに学園祭があったりして、あっという間に日が過ぎた。
だから僕の部屋で心置きなく抱き合うことが出来るのは、今夜で数えてようやく三度目になる。

二度目は……前回〝怪盗キッド〟が現れた日の次の夜────。
そのとき黒羽は背中に怪我をしていて……そんな素振りは学校でも、もちろん怪盗としても露ほども見せなかったが、僕は自分が何も知らずにいたことが情け無くてたまらなかった。
傷付いた羽根を慈しむように黒羽を抱くことしか、出来なかった……。



今夜の黒羽は素直だった。
僕の愛撫を素直に受けとめ、僕に身を任せつつ、時折りいたずらするかのように僕に触れては僕を煽った。
黒羽は僕の指が特にお気に入りらしく、そっと指を絡めては頬に寄せ、僕の指にキスをしてくれる。
黒羽自身がマジシャンとして手先を大事にしているからか……他者の指にも自然と目がゆくのだろう。

僕は黒羽が僕の指に少なからず執着しているらしいことに気がつくまで、自分の手に特に注意を払ってきたつもりはなかった。多少人様よりは長めな指と、性格的に手入れを怠らず清潔を心掛けている爪先が、そんなマジシャンの黒羽の心をくすぐったのかもしれない。
僕が自分の手先によりいっそう気を配り、さりげなく黒羽に指先をアピールするようになったのは当然のことだ。
僕は黒羽が僕を意識し始めるよりも以前から黒羽のことが好きで────ずっと彼の気を惹きたいと望んでいたのだから。






「大丈夫ですか?」

「…………」

無言でコクンと頷いた黒羽は、やはり僕の目を見ようとはせずモゾモゾと寝返りを打った。

「あのね、黒羽くん。毎回そのように背を向けられて、僕はとても傷つくのですが」

「…………」

なにか言ったようだが聞き取れない。

「なんですって?」

「しょうがねえだろ…………だから」

「え?」

耳を寄せると、ガバッとシーツを頭から被ってしまった。

「ちょっと。引き籠もらないで下さい」

グイグイとシーツの引っ張り合いが始まる。

「ばか…、少し、じっとしてたいんだってば!」

「なぜです」

「す、すぐ動けないからだろっ、そんくらい気付け! それに顔をいちいち覗き込むなっ、暑いんだよ!」

シーツがめくれてチラと見えた耳朶と首筋が真っ赤になっている。これがかまわずにいられようか。

「黒羽くん」

「アチィ! 離れろ!」

「こっちを向いて」

「・・・う~~~っ」

赤い顔をして瞳を潤ませている愛おしい想い人に、僕はこれ以上の逆鱗には触れないよう十分に気をつけながら、そうっとそうっとキスをした。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「明日…じゃねえ、今日さ、空いてたら、ちょっと遠出しねーか」

「遠出?」

「海に行きたい」

「……初めてですね、君からデートに誘ってくれるのは」

「そうだっけ? 江ノ電乗ってさ、海沿いぷらぷら歩こうぜ」

「喜んで。鎌倉まで車で送らせましょう」

「ばあか! 二人で行くからデートなの! やだねもう、お坊ちゃまは」

そうか。僕は反省した。

「すみません。君の言うとおりですね、気をつけます」

「んじゃ、あとでな!」

「帰るんですか?」

窓を開けた黒羽は、ヒラリと身を翻してすでに外の屋根に足を着いていた。

「デートなら待ち合わせしねーと! 駅の改札、8時でどうだ」

8時。逆算するとあまり時間がない。

「10時では?」

「遅い。…ま、いいか、んじゃ間とって9時な」

「わかりました」

おやすみと言ったかと思うと、黒羽の姿は消えた。窓の外を見渡しても、もう気配すらなかった。

空はうっすら明るくなり始めている。
もう一眠りしようと思うが、寝付けるだろうか。
僕はベッドにゴロリと寝転んで天井を見上げた。
目に浮かぶ黒羽の素顔を思い浮かべて。

7時半には起きなくては……。

そう思いながら、つい先刻までこの腕の中にいた黒羽の声を、僕は思い出していた。






さざなみ《2/3》へつづく


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