名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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さざなみ《2/3》(白快前提 新一→快斗)
カテゴリ☆噂の二人《3》
※新一視点です。
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江古田高校の文化祭で観た、演劇『白雪姫』。
それはオレに、かなりのインパクトを残した。

探偵甲子園〈※注釈〉に参加していた白馬探が王子役だったのも奇遇だが、白雪姫役の黒羽快斗に、オレは目を引き付けられた。
帝丹高校周辺に貼られていたポスターを見て、配役は知っていた。蘭や園子に誘われて、黒羽が主役と分かっていて観に行ったんだ。
黒羽に…オレは惹かれていたから。

だけど、驚いた。
高校生の演劇に完璧という言葉は当たらないかもしれない。なんて表現すればいいんだろう。黒羽の〝自然な演技〟。
いくら体型がほっそりしててドレスが似合っていたとしても、男子が女性に扮してあんなに違和感なく振る舞えるだろうか。
普通は無理だろう。遠目に誤魔化せても仕草や声使いですぐにそうと判るはずだ。
だけど、黒羽は────。

オレは白雪姫を演じる黒羽を観ているうちに、オレの中で宙に浮いていた何かがカチリと音を立て当て嵌まるのを感じたんだ。
インスピレーションという〝符号〟が嵌まる音を。


黒羽快斗。江古田高校サッカー部のミッドフィルダー。オレのポジションのトイメン。ライバルだ。
練習試合で対戦した時、オレは黒羽の脚の良さ、身軽さ、先を読むパスワークに、戦っていながら見惚れてしまった。
オレたちは互いをマークしあい、黒羽はオレを、オレは黒羽を追いかけまくった。

試合の中盤、黒羽と競ったオレは黒羽からボールを奪おうと捨て身でスライディングを仕掛けた。
しかし黒羽は軽々とそれをかわし、鮮やかにオレのサイドを抜き去った。

思わず伸ばした手をすり抜けた、届きそうで届かない……その感覚には覚えがあった。

あの感覚は。



────怪盗キッド。









車は海沿いの道を引き返していた。
穏やかな陽がキラキラと打ち寄せる波に反射し、サーファー達を照らしている。

「土曜だっていうのに、朝っぱらから申し訳なかったね、工藤くん」

「いいえ。高木さんは真っ直ぐ警視庁ですか」

「まあねー。佐藤さんから何時に戻れるかって電話きてたから、ちょっと急がないと(^^;)」

先日片付けた事件の依頼者宅を、高木刑事と共に訪れた帰りだった。事件に絡んで奪われていた依頼人の『思い出の品』の返却と、事後報告を兼ねて。

「すみませんが、どこか最寄りの駅で降ろしてもらっていいですか」

「これからどっか行くのかい?」

「いや…、ちょっと調べ物というか、ゆっくり考えたい事があって」

「そうなの? 鎌倉駅でもいいかな」

「オーケーです」

車のシートに背を沈ませ、海岸線に目を馳せた。



江古田高との練習試合があって間もなく、オレはS財閥会長の依頼を受け、怪盗キッドの予告状の暗号を解く機会を得た。
それは願ってもないチャンスだった。
オレは確かめたかった。
黒羽に脇を抜かれた時の、あの〝感覚〟が気のせいだったのかどうか。

『怪盗キッドがオレと同い年の高校生だなんて、そんなわけないだろう』と、何度も打ち消した。
はにかんだ黒羽の笑顔と〝怪盗〟を結び付けるのは、いくらなんでも無理がある。
それでもオレは、自分が受けたインスピレーションを完全に捨て去ることが出来ずにいた。


オレは会長を説得し、当日の直前までキッドの予告を警察やマスコミに伏せさせた。一対一でキッドと対することが出来るよう目論んだんだ。
なんとかして少しでもキッドに近づき、間近でキッドの姿を確かめたかった。

怪盗キッドは、予告通りに現れた。
こちらの情報は伏せておいたはずなのに、美術館のスタッフに変装してヤツは難なく現場に紛れ込み────ほんの数秒、展示室の明かりが瞬いて、皆が天井を見上げた隙にジュエルを奪い去ったのだ。

そこまでは想定していた。
ヤツは必ず屋上に出る。翼を広げて飛び立つために。
ジュエルを月の光にかざし、何かを確かめるために。

姿を消したキッドを追って警察が散り散りに美術館を離れた後も、オレは屋上でキッドを待った。雲が薄くなり、月明かりが地上に漏れる瞬間まで。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「これはこれは名探偵。何かとご多忙でいらっしゃるのに、私の相手までして下さるとは光栄です。それにしても、よくこの時間まで私がここに留まっていると分かりましたね」

「気付いてるんじゃないのか? そのジュエルの装飾には仕掛けをしてある。オレのこのレーダーに反応するように」

「あー、だから」

怪盗は肩を竦めた。

「いつもと違って情報が少なく、怪しいとは思いましたが迂闊に調べるのも躊躇われまして……」

「キッド、動くな。 おまえに訊きたいことがある!」

ふっと微笑んだ怪盗は、オレが構えた麻酔銃をあざ笑うかのように頭上の月を振り向いた。そして右手をかざし、手にした真紅のジュエルを月明かりにかざして覗き込む────。

いまだ!
オレは麻酔銃を撃つと同時に駆け出した。真っ直ぐに、怪盗が立つ壁の下へ。

「おっと」

マントを翻してオレが放った針を弾くと、怪盗はオレに向き直った。
勢いのまま怪盗の足元の壁に飛びついたオレをかわし、怪盗はひらりと宙返りをしてオレの背後に飛び降りた。
そのまま屋上の反対側へ駆け出す。

「キッド、待てっ!」

どくん、と心臓が鳴っていた。
覚えのある身のこなし。駆けるキッドの後ろ姿が、記憶の中の黒羽に重なった。

おまえは、おまえはやはり────?

追いすがるオレにトランプ銃を向け、威嚇の一枚を撃つと、怪盗は一礼をし……右手を大きく振り上げた。

ジュエルを高く放り投げて。

怪盗が────飛び立つ。

「キッド! おまえは……」


〝おまえは、黒羽快斗なのか?〟


そう問いかけたオレの声は、吹き抜けた高層の風にさらわれた。

翼を広げて飛び立った怪盗の耳に、届いたかどうか分からなかった。
オレの手には、怪盗が放ったジュエルだけが残された。







さざなみ《3/3》へつづく

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※きゃー(@_@) 工藤くんの独白が長引いちゃってスミマセン。書きたいシーンに届かず、もう一回追加です(@_@)(@_@)。

〈※注釈〉2012.5.14up『孤島』にて、工藤くんと白馬くんは行動を共にしたことがある…というベース設定にしております(汗)。そしてこのカテゴリ過去のお話は、☆噂の二人《1》と《2》をご覧ください~宣伝!(*_*;

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