光の矢《1/2》(白快前提 新一→快斗)
カテゴリ☆噂の二人《3》
※2011.10.13に新快カテゴリでupの『If《2》』と、内容が少々パラレルってます…参考までに~(*_*;
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「紅子ちゃん、なに窓の外見てるの?」
「あら中森さん。ふふ…、もうすぐ〝光の魔神〟が現れるわ。それを待っているの」
「ひかりの…?? 何それ」
「〝黒翼の天馬〟を矢で射ち、その身を裂くことが出来る唯一の存在よ」
「てんま?」
「翼を持つ馬、ペガサスの事。……まあ、手っ取り早く〝噂の二人〟って言ってしまえば分かり易いかしら」
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なんだか外がうるさい。ワーワーキャーキャー聞こえてくる。
ちぇっ。いい感じで寝てたのに……目が覚めちまった。仕方ねー、もう帰ろ。
ふわぁと、自分の席で伸びをして、オレは立ち上がった。
白馬の席をチラッと見る。いない。もう帰ったのかな? アゲイン(※再テストのこと)大丈夫だったかな。あんだけ言っといたんだし……ま、いっか。俺ももう帰ろっと。
鞄を持ったところに、ドタドタと廊下を走ってくる慌ただしい足音が聞こえた。
「快斗ぉーー!!」
「なんでぇ、青子かよ」
「たいへんよ!正門のところに帝丹高校の工藤新一が来てるの!ホラあの高校生探偵の!!」
「えっ」
ぎくりとする。工藤が?
七里ヶ浜でバッタリ工藤と出くわしたのは一昨日のことだ。
「そんじゃーこの騒ぎ……」
「工藤くんステキーなんて女子が集まっちゃって大騒ぎ!正門が今すごいことになってるのよー♪」
そういう青子も興奮気味だ。なんかちょっと面白くない。
「高校生探偵が江古高になんの用だよ」
「それがさ、快斗に会いたいって言ってるんだって! 白雪姫を観たらしいよ!すごいじゃん快斗! 魔性のオンナだね! 」
フザケンナ。誰が魔性で、誰がオンナだよ!!
「快斗、どこ行くの?!」
「帰る」
「まさか裏門からフケる気?!」
「人聞き悪りぃな。だいたいちょっと有名人だからって騒ぎすぎなんだよ。こっちは別に用ねえし」
「ねえ快斗……」
「なんだよ」
「快斗は、もし工藤くんに交際申し込まれたらどうする?」
「・・・ハア!?☆☆;;」
青子がキャハッと笑う。
「紅子ちゃんの占いでね、〝噂の二人〟の仲を裂く者が現れるって出たんだって!」
「な……」
「そしたら工藤くんが快斗を尋ねて来たでしょ! だからもう正門前が大騒ぎ!」
「な、なん…」
「あ、私はもちろん快斗と白馬くん派だよ! だけど工藤くんファンの子たちが盛り上がっちゃって、もしかして略奪愛かー? なんてさぁ♪♪」
くらり。気が遠くなる。なんで?!
「ねえ早く正門行こうよ! さっき白馬くんが出て行ったから、急がないとイイトコ見逃しちゃう~(*^^*)//」
『快斗がきたぞー!』『おおっ、待ってましたぁ姫ー!』
くっそう。いつまで姫姫言われんだ俺。
青子に引っ張られて正門に出てったら、文化祭の時よりも盛大な拍手が沸き起こった。下校中の生徒だけじゃなく、部活の連中まで集まってやがる。てめえら、なにオモシロがってんだっつーの!
ふと見ると、頭一つ背の高い白馬が人垣の向こうでこっちを見たのがわかった。
白馬が俺の方に来る。
さっと人垣が二つに分かれて道が出来た。
すげ。白馬、モーゼみたい。
開けた向こうに、ブレザー姿で一人立っている帝丹の工藤もいた。
なんか、急に不安になる。
工藤はいったいどういうつもりで来たんだろう。『白雪姫』の時に、ついマジで女声を演(だ)したのがまずかったか。それとも。
あの時────翼を広げて飛び立つキッドの背に工藤が叫んだ言葉。
〝おまえは・・・なのか?〟
よく聞き取れなかったけど、もしかして…もしかして……あの時〝黒羽快斗〟ってったんじゃねえだろうな。 だとしたら、まさか……この大勢の前で、俺が怪盗キッドだとか言い出す気じゃ……。
ごくりと息をのむ。
いや、そんなはずはない。まだそこまでの確証はないはずだ。キッドと俺を結び付ける証拠は、まだ何も────。
「白馬」
「黒羽くん、君は何故ここに来たんですか!」
「オメーこそ。工藤は俺に用だって言ってるらしいじゃん」
「いま僕が工藤くんと話をしていたところですよ。工藤くんは、君に……ああもう」
白馬が混乱してる。状況はともかく、こんなに焦っている白馬は珍しいので、俺はついハハハと声を出して笑ってしまった。そしたら、何だか少し落ち着いた。
どーってことねーや。
鉄壁のポーカーフェイス見せてやるぜ、工藤。テメーがなに突っ込んできたとこで、俺はバックレ通す自信がある。
「黒羽くん」
「じゃな白馬。俺、帰えっからさ。おまえ、ぜってー口出すんじゃねえぞ」
「待ちたまえ!」
「アホ、来んなっつの!」
ざわざわ・きゃあきゃあ、何が起こるかと集まった生徒たちの視線が集中する。
俺はわざとドカドカ勢いを付けて工藤に向かっていった。
「よー工藤。俺に用だって? なんだよ急に」
「黒羽…くん」
校門を出てすぐのところで俺を待っていた工藤が、ぎこちなく微笑んだ。
「みんなびっくりして大騒ぎだぜ」
「ご、こめん。そんなつもりなかったんだけど」
「用件は? サッカーのこと? こないだの文化祭のこと? それとも…」
なんでか工藤が視線を落として直立不動になる。
「黒羽…くん、急にすまない。だけどオレ、ホントにもう何も手につかなくて、気になって眠れなくなって」
「なにがだよ」
ガバッと工藤が俺の目の前でお辞儀をする。片手を握手するように差し出して。
「黒羽くん! オレと…オレと、付き合って下さい!!」
ツキアッテクダサイ……
ツキアッテ・クダサイ……?
俺は……後ずさったんだと思う。よろけたのかな。
呆然としてる俺のアタマに、次の瞬間どわっという大歓声が響いていた。
光の矢《2/2》へつづく
[10回]