月国の魔法使い(初代キッド)
─────────────────────────────
〝快斗~、電気消して早く寝なさーい〟
したからお母さんのこえがした。
「はぁ~い」
まだねる気ないけど、へんじして、でんきをけした。
だってそうじゃないと、お母さんはすぐにコラッておこるから。
でんきをけしたら、へやにじふんのかげができた。お月さまがとてもあかるい。
「お月さまって、どうしてまるくなったり、ほそくなったりするのかなぁ?」
少しまえは半ぶんこだったのに。
いまのお月さまは、もっとふくらんでる。なんだかこっちをみてるみたい。
お日さまは、まぶしくて目にわるいから、見ちゃいけないんだって。でも、お月さまは見てもいいんだ。
お月さまがまんまるになる、とくべつなよるは、みんなでお月みしながらおだんごをたべるんだって。お父さんにおしえてもらった。
「おだんご、いつたべられるのかなぁ…。お月さまがまるくなるまえに、お父さんちゃんとかえってくるかなぁ?」
お父さんはゆうめいなマジシャンで、いそがしくて、ずっとでかけてる。外こくにいったんだって。このまえいっしょにおふろにはいってから、なん日たったかわすれちゃった。
「ねえ…お父さん、いつかえってくるとおもう?」
さっきからずっとこっちを見てるお月さまにきいてみた。
お月さまをじーっと見てたら、なんでかわからないけど、きゅうにかなしい気もちになってきちゃった。
「あ~あ。お父さん、はやくかえってくればいいのにな~…」
ぐすん。
べつにさびしくないけど、お父さんにあいたくなっちゃった。
「まほうつかいがいたら、お父さんがはやくかえってくるようにおねがいするのにな~」
あ。お月さまが〝そうだね〟っていってるみたいにかがやいた。
「そうだ、いいことかんがえた! お月さまにおねがいすればいいんだ!」
ほそくなったり、ふくらんだりするふしぎなお月さまには、きっとまほうつかいの国なんだ。
だからお月さまにむかっておねがいすれば、まほうつかいがおねがいをきいてくれるかもしれない。
「よーし」
おれはお母さんにわからないように、そーっとまどをあけた。そして手をおでこのまえであわせて、お月さまにおねがいした。
「お月さまー、あのね…、ええっと」
なんていえばいいんだろう。
「えーっと…、あのね、お父さんにあわせてください!」
お月さまにきこえてるか、わからないから、なんこかおねがいしよう。
「お父さんが、早くかえってきますように。それから、お父さんとまたいっしょにおふろにはいれますように!」
それから、それから。
「…お父さんみたいになれますように!!」
ふぁさ、って、なにかのおとがした。
「…?」
まどのそとに、だれかいる…?
どきーんとした。
だれだろう?!
ほんとうにお月さまから、まほうつかいがやってきたのかも?!
ものすごくどきどきしながら、おれはベランダにでてみた。
〝やあ、今晩は〟
「えっ…?」
〝し~っ、静かに。お母さんに見つかってしまうよ〟
「あ、いけねっ」
おれはいそいで口をてでおさえた。
それから、もういっかい、めのまえにたってる人をみた。
「あなたは、だあれ?」
そこにいたのは白いふくをきた、せのたかいおとこの人。えでみたことある、ながいマントをしてる。
かたほうだけのまるいめがねをして、かわったかたちのぼうしをかぶってて…
もしかして、もしかして───。
「私は魔法使いです。お呼びになったでしょう」
「ほんと?! やっぱり!!」
おれはうれしくて、はだしでぴょんぴょんはねた。まほうつかいがしゃがんで、おれのかたに手をのせる。
いけね、うるさくしたらいけないんだった。
「お願いがたくさんあったね」
「えへへ…。なんでここがわかったの?」
「空から見えましたよ、君の部屋の灯りが。よろしければ、君の名前を私に教えていただきたいのだが」
「おれ、くろばかいと!」
「…よい名前だ。では、快斗くんのお願いを、まずは1つ叶えて差し上げましょう」
たちあがってクルリとしたかとおもったら、ぽん!とおとがして、まわりじゅうけむりだらけになった。
「うわあ」
だけど、そんなにけむくない。なんだかいいにおい。お花のにおいみたい。
「快斗くん」
「………」
おれはほんとうにびっくりした。
だって、けむりの中からお父さんがでてきたんだ。
こえがでなくて、めをパチパチしてたら、まほうつかいはフフフとわらった。
おれはまだこえがでなかったけど、うれしくなって、しゃがんだまほうつかいにだきついた。
「どうです? 快斗くんのお父さんに上手く変身できていますか?」
「うん!!すごいよ、そっくり!!」
ぎゅっとしてくれるときのにおいまで、お父さんにそっくりだ。
「残りのお願いの2つは、明日、叶えて差し上げましょう。ですから今夜はもうおやすみなさい。あまり遅いと朝起きられなくなりますよ」
「う~ん、わかった…」
おきられないと、お母さんにおこられちゃうもんね。
まほうつかいはウィンクして、おれのあたまをなでてくれた。
「さあ、ではベッドに入って下さい。眠る時間をだいぶ過ぎているのでしょう?」
まほうつかいにだっこされて、ぽかぽかする。あたたかくなったら、おれはきゅうにねむくなった。ふわあと、おおきなあくびがでる。
…あしたになったら、あとふたつ、おねがいをかなえてくれるんだって。
え~と、でも、ふたつってどのおねがいだったか、わすれちゃった。
〝おやすみ、快斗くん。君の最後のお願いも、きっと叶うよ。君が君らしく、大きくなればね〟
にっこりわらったまほうつかいは、いつのまにか白いふくにもどっていた。
マントがひらひらゆれてる…。
ありがとう、まほうつかい。
またきてくれるかな……。
あしたお父さんがかえってきたら、まほうつかいにあったっておはなしするんだ。
おやすみなさい……、おとうさん………。
20150227
─────────────────────────────
※詳細省略(汗)、全部平仮名ではさすがに読みにくいので、ところどころ漢字にしました。お粗末様でございます~(*_*;
●拍手御礼
いろいろ連打いただいています。嬉しいです(*^ ^*)。
「逢いあくて」「月に願いを」「ボーダーライン」「リセット」「セカンドチヤンス」「キッチン」「正夢」「ホワイト・メリークリスマス」「橙の月」ほか、★交錯『リハビリ』など、拍手いただきまして、ありがとうございました~っ(_ _)。
[11回]