名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
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ブルー・フォレスト《2/2》(新一×キッド)
※キッド様視点から
──────────────────


気が付くと知らない部屋にいた。

しかも、俺の隣で、工藤新一が爆睡していた。




なんでだよ。

とかツッコミ入れてる場合じゃねえ、ずらかんなきゃ。


>>ズキン!!


(…イッ、てェ~~ッ!)

差し込むような痛みに、思わず体をくの字に
曲げる。
同時に体のあちこちから疼痛が湧き起こって、俺は声を潜めてウウウと呻いた。

少しずつ息を吐き、痛みの波が小さくなるのを待つ。

痛いけど、手足は自由だ。拘束されてはいない。
逃げられる。

眠っている工藤の様子をそっと覗(うかが)った。


───にしても、近すぎだろ。


捕まえた怪盗の横でグウスカ寝込むとか、いくらコッチが怪我してるからって油断しすぎじゃねーのか名探偵。

「……」

雨音だ。

しとしと。しとしと…と、木々の葉を伝い落ちる雨粒の音が聞こえる。

感覚としては夜明けが近いはずだが、その割に暗いのは雨だからか。

それでもぼんやりとだが徐々に明るさを感じるようになってきた。隣で眠る工藤の輪郭が、少しずつ見えてくる。

端正な輪郭。繊細な目元。
眠っていても爽やかなイケメンで、なんだか少しムカつく。

とにかく服を着なきゃ…。

工藤を起こさないよう、自分の体になるべく負荷をかけないよう、ゆっくりと脚を引き寄せ、腕を着いて上体を起こした。

ふう…と息を吐く。

大丈夫だ。動ける。


「名探偵…礼は言わねーぜ。決着はいずれまた。今宵のことは夢だったとお思いください──」

怪盗らしく、囁いた。
聞こえちゃいないだろうけど…。


「!? 」


その時、突然工藤が動いた。









無意識に、寄り添う温もりを抱き締めた。

体に重みがかかり、目が覚める。

夢じゃない。

いまオレが胸に抱いているのは──素顔の怪盗キッド。

「…お、起きてたのか、名探偵」

細い背中が頼りない。予想していたよりずっと華奢だ。

「いま、起きた」

掠れ声を絞り出した。キッドの柔らかなくせ毛が頬を擽(くすぐ)っている。

「放せ」

戸惑った声。やはり若い。このキッドは七年前のキッドとは別人だ。

「防弾…着てたんだな。良かった。血の匂いがしたから、心配した」

「墜ちた時の怪我だ。大した事ない」

いつもの怪盗の声音に戻る。だが、どこか不安定だ。
怪我のせいか、オレが抱き締めているからか。

「強がるな。防弾の上からでもかなりの衝撃だったはずだ。だから墜ちたんだろ」

「で? 俺を捕まえたって警察に知らせたのか」

「いや。今のお前を捕まえる気はない」

「なぜ。チャンスだろう」

「今回はしてやられた。捕まえるんならおまえが万全の時に、怪盗に『完敗だ』って公衆の前で言わせてからだ」

「てことは、永遠に捕まえられないな」

「言ってろ」

自然にキッドを抱く腕に力がこもる。
それが傷に触ったのか、微かにキッドが身を捩った。

「ここはどこなんだ」

「近くの別荘。裏口の取っ手を壊して入った」

「不法侵入かよ」

「コソドロに言われたくない」

「怪盗です」

少し間をおいて、二人で同時に笑った。
鼓動が直に伝わり合うのを感じて不思議な気持ちになる。

いつも見上げていた月下の怪盗が、あの怪盗キッドが、今こんなに近くにいる。それが信じられない。
こうして言葉を交わしていると、同年代のどこにでもいる普通の少年と何も変わりない。
懐かしさを覚えるほど、隣に在ることに違和感がない──。


「しかし俺の隣で寝込むとは良い度胸だな、名探偵」

「おまえの暗号のせいだ」

「暗号の?」

「何パターンか解読可能で迷ったが、複数の答えを組み合わせて本当の答えが出るとはな…。おかげで睡眠不足で、おまえの怪我が命に関わるほどじゃないと判って安心したら、急に眠くてたまらなくなった」

「それはそれは。お疲れの中、ショーを盛り上げていただき感謝です」

雨があがったのか、外がはっきりと明るくなってきた。
キッドの素顔を、もう一度ちゃんと見たい。

「キッド、おまえを撃ったのは何者だ」

「こっちが訊きたいですね」

「ブルー・フォレストは」

「近いうちにお返しします」

「何故、盗んだのに返すんだ? 前にもジュエルを月にかざすのを見た。どんな意味があるんだ」

「さて…何のことだか」

不意にくるりとキッドが体を返し、オレの腕からすり抜けようとする。

逃すまいとするオレと、逃れようとするキッド。
揉み合いになって二人してベッドから転げ落ちた。

オレは。

キッドのことが知りたい。もっと。

なぜビッグジュエルを狙い、盗んでは持ち主に返すのか。

その目的が解れば、もっとキッドに近付ける。

キッドの正体に迫れる。



ふ… ──と頬に吐息を感じた。



ハッと顔を向けると、キッドの顔が目の前にあった。

キッドの大きな瞳が、オレを見詰めていた。











手を離さない工藤に業を煮やし、なんとか隙を作ろうと、キスをするかのような素振りをした。探偵を驚かせて手玉に取り、逃れようとしたのだ。

だが。

温かくて柔らかいものに唇を覆われ、焦っているのは俺の方だった。

それが工藤からのキスだと気付いて。


「………っふ、フザケンナよ、工藤」

「ふん。先にキスされてたまるか」

工藤は真顔でオレを見詰めていた。

「な、なに、言ってんだ」

ようやく工藤が腕を放す。

俺はそっぽを向いてなんとか起き上がった。怪我が痛いとか言ってられない。早く去らないと。

「キッド、しばらく無理はするな。内蔵は大丈夫だと思うが、肋骨にヒビが入ってるかもしれない。ちゃんと治療しろ」

俺は立ち上がり、応えずに背を向けた。

ソファに掛けられていた衣類を見つけ、手早く身に付ける。

ジュエルと怪盗の衣装は発信機と一緒に隠してきたから、寺井ちゃんがドローンで回収してくれてるだろう。

「……トランプ銃は」

「ここだ」

工藤はベッドに腰掛け、グリップの方を俺に向けてトランプ銃を差し出していた。

癪だが、しかたがない。

受け取るために近付いて手を伸ばした。

トランプ銃のグリップを握る。

工藤は目の前だ。

どこまでも真っ直ぐ俺を見詰めてくる。

まるで俺の中の何かを見透かそうとするかのように。













・ ・ ・ ・ ・




「快斗坊ちゃま、ご無事で! 心配しましたぞ」

「迎えサンキュー、寺井ちゃん」

舗装路から外れた砂利道の奥で、車に乗った寺井ちゃんと落ち合った。

「お怪我は」

「大した事ねーよ。ブルー・フォレストは?」

「ご指示通り手配済みです。夕方には鈴木美術館に届くでしょう。今まではどちらに?」

「あー…空き別荘に隠れてた」

「そうですか。雨も降っていたのでどうされてるかと」

「腹減った! 早く帰ろーぜ、寺井ちゃん」

「ハイ、承知しました」


寺井ちゃんは現場にはいなかったから、俺が狙撃されたことは知らないだろう。知ったら卒倒するかもしれない。
そもそも俺が狙撃されたことに気付いた者が、工藤以外にいたかどうか。

「…………」

工藤の眼差しと柔らかな温もりを思い出し、何故か カァ と顔が熱くなる。

俺が部屋を出る瞬間まで、俺のことをじっと見ていた。もし追いかけられたら、今の俺じゃ逃げられなかっただろう。

“見逃された” と思うと、やはり悔しい。

チキショー、名探偵め。

次は俺がおまえを赤面させてやるからな。オボエテロよ。









・ ・ ・ ・ ・




『工藤くんか、一人で行動してはいかんと言っただろう。おかげで目暮に散々どやされたぞ。いったいどこにいたんだ』

やっと繋がった中森警部の携帯。申し訳ないと思いながら嘘をつく。

「すみませんでした。キッドを追って森に入ったんですが見つからなくて。雨も降ってきたし、諦めてそのまま帰ったんです」

『まったく。まあ、無事なら良かった。こっちも混乱していたからな。……ん? なんだと? ブルー・フォレストが鈴木美術館に!?──』

慌ただしい様子でブツンと電話が切れた。

自宅のエントランスに立ち尽くし、耳に残る中森警部の言葉を反芻する。


ブルー・フォレストが戻ったのか。


ブルー・フォレストの放つ、藍翠の深い輝きを思い出す。
重なるのは目の前にあったキッドの大きな蒼い瞳だった。

キッドは何を求めて、何のために危険を冒してジュエルを狙うのか。

怪盗キッド。オレはおまえの謎を解きたい。

おまえの謎を解いて、おまえの真実を掴みたいんだ。

その深森のような蒼い瞳の奥に隠された、おまえだけの真実を───。








20221001

──────────────────





※消化不良ですが締めました。雰囲気なので諸々目をつぶっていただけると幸いです(汗)。今回の新一×キッド様はまだ初々しい関係(?)のため、これ以上ないシチュエーションだったにも関わらず大きな進展なしで、我ながらちょっと残念です(^_^;)。


●拍手御礼
「月光という名の真実」「確率」「〝テストケース〟」「ヒーリング」「レモンパイ」「秋憂」

拍手コメント御礼●色羽さま
初コメントありがとうございます。宜しければまたお訪ねください!



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