名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
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連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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憂鬱(新一×キッド)

※新一視点です。
――――――――――――――――――


ひとつの事件が終わった。

謎を解き、犯人を捕まえれば事件は〝解決〟と括られ、別の次元へ移行する。


しかし、今日のように後味の悪い事件の時には…分からなくなる。自分が今ここにこうしていることの意味が。

探偵として現場に立ち会い〝罪をあばく〟回数を重ねるにつれ――ふと自分のしている事が本当に正義なのかどうか、分からなくなる時がある。
人の人生を左右するような……そんな権利が、俺にあるのかと。

霞んだ月を見上げて息を吐いた。
シティホテル屋上の金網越しに見る夜景は、今夜に限ってどこもかしこも滲むようにぼやけている。今の俺のように…憂鬱に。


ひゅうと一陣の風が吹き抜ける。

覚えのある気配に振り向くと、思った通りヤツが……怪盗キッドが俺の背後に佇んでいた。

一瞥しただけで視線を逸らした俺に、キッドが小さく肩を竦めるのが分かった。

「どうされました、名探偵。ずいぶん沈んでいらっしゃる」

「…………」

「おや、返事もして下さらないとは。今夜の哀しい結末を憂えておられるのですか」

「ほっとけ。いま怪盗を捕まえる気分じゃねえんだ。見逃してやっから早く消えろ」

「見逃すもなにも……私は今夜はただの傍観者。何も盗んではおりません」

「盗んだだろうが。予告のジュエル」

「すぐお返ししました」

「盗んだ事に変わりねー」

「まぁ、堅いこと仰らず。それにしても、ここの支配人が私の返したジュエルをそのまま戻さず隠し持っていたこと、よく見抜かれましたね。さすがです」

「うるせーなっ! 俺はいま怪盗に〝太鼓モチ〟されて嬉しがる気分じゃねえんだっ、消えねーとぶっ飛ばすぞっ」

「そんな悪し様に言われては、かえって立ち去れませんね。私は元来〝天の邪鬼〟なのです」

キッドが冷めた笑みを浮かべて俺に近付く。


人には無意識に持つ自分のテリトリーというものがある。
気を許した相手なら問題のない距離でも、そうでない相手にずかずかと間近へ踏み込まれれば拒否反応を覚えるし、実際に不快にもなる。
その相手が俺にとって最も警戒すべき〝宿敵〟であれば、なおのことだ。しかもこの時の俺は最高に苛ついていた。自分に。自分を見失うほど。

ほとんど無意識でキッドに殴りかかっていた。

キッドが見切ったようにすいと顔を逸らして俺の拳を避ける。余計に腹が立った。

ばしんと、右の拳を白い手袋をしたキッドの掌に受け止められる。

「――お続けになりますか。何度やっても当たりませんよ。そのように冷静さを欠いていては…名探偵といえども」

無視して放った左のフックがキッドのシルクハットのつばを掠めた。掴まれた手が離れる。

「おおっと…、名探偵、ストップ」

「だまれっ! このコソドロ!!」

ガツッと音がして――そのあと右手に痛みが走った。

……痛い。
ズキンと痛んだのはキッドを殴りつけた拳ではなく、胸の中、俺の心の奥だった。

「アタタ…、これは厳しい。手加減なしとは」

「キッド」

頬を抑えたキッドの素顔――シルクハットとモノクルが殴った衝撃で外れたキッドの横顔が、ビルの屋上に取り付けられた幾つかの照明に濃い陰影とともに浮かび上がる。
血の滲んだその口元が微笑んでいるように見えた。

「名探偵の〝痛み〟が、私にも解りました」

「おまえ……わざと…」

「まさか。ポーカーフェイスはマジシャンの商売道具です。自ら傷めるわけがありません。あいたた」

落ちていたシルクハットとモノクルを優雅な身のこなしで拾い上げ、元通りに怪盗が身に付ける。
俺は呆然と立ち尽くしてそれを見詰めていた。

「名探偵、あなたが支配人を救ったのですよ。そうでなければ彼はジュエルと引き換えに、彼を唆(そそのか)し罪を犯させた者たちに命を奪われていたでしょう。彼がそんなにまでして助けたかった彼の大切な人に、二度と逢うこともできず」

「……なんで」

「長年こちらで勤め上げ人望も厚い人物ですし、警察もホテル側もきちんと情状を酌量するでしょう。ですから必要以上にご自分を責めることはありません」

「おまえ、何故そんな事を」

「ずっとそばにおりましたので。名探偵が到着される前から、このホテルのアートホールで支配人と一緒に。そしてさっきまでは警官に変装して刑事の皆さんと」

アートホールで…? 支配人の横にいた、あのダークスーツの青年が?

「それでは失礼。早く冷やさなくては。いたた」

「待てっ!」

走り出そうとするキッドの肩を掴んで振り向かせた。

「名探偵。早く去れと言ったり、待てと言ったり」

「う…いや」

俺を見るキッドの眼差し。
すべて見透かされているようだ。キッドのマジックに乗せられ、まんまとあの憂鬱が霧散している。

「それに、この頬の痛みは私への罰でもあるのです」

「え?」

「支配人の様子が少々不自然であると気付いていながら、私も止められなかった――」

キッドの伏せた目に、初めて見る悔恨が浮かんでいた。

「ですから、名探偵」

目の前のキッドが俺を見て微笑んだ。

―――惹かれる。どうしようもなく。
波打つ鼓動に、その事を気付かされる。

「…!」

掠めるようにキッドの唇が口元に触れた。ハッとした瞬間、手元からポンという音とともにパステルイエローの煙がたつ。キッドの姿が消えていた。

「おやすみなさい、名探偵。ご無礼お許し下さい。どうぞよい夢を」

「キッド!」

いつの間にか一段高い場所に立っていたキッドが、俺の死角へ飛び降りる。

「キッド!!」

風が――軽やかに行き過ぎた。

走って逆サイドの街を見渡すと、見つけた白い翼はもう数十メートル先をグライドしていた。

「キッド……お節介なコソドロめ」

一人呟きながら、俺は知らず微笑んでいた。拳の痛みはまだ残っていたけれど、それが今もキッドと繋がっているような気持ちにさせた。


怪盗キッド。不思議なヤツ。

もし明日どこかで右頬を腫らした男を見つけたら……そうしたら、片っ端から捕まえてやる。

俺はようやく屋上を後に、足を踏み出した。
前へ進まなければ。止まってはいられない。道に迷い、後戻りする日がこれからもあるかもしれないけれど。

ヤツを捕まえて、いつかこの手であのモノクルを外してやる。その素顔を、いつか。この手で―――。






20120425


――――――――――――――――――

あとがき

ひー(@@);; 書きかけ仮アップなのに拍手四つもいただいてしまい、めっちゃプレッシャーでした~/// いえ、ものすごく嬉しかったですー!!
しかしご期待に添えるものになったかと言われれば……ひー(@@);; というキモチです(汗)。お粗末様でしたー。m(_ _)m

※拍手コメントくださったkさん、ありがとうございました! カテゴリ分のご提案、考えてみます! 確かにいくら自己満足と開き直って(スミマセン)いても、おっしゃるとおりこれだけコマかいのが増えてくると……どうしたものか;; GW中にでも、なんか試しにやってみます!



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