名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
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秋の音(新一×キッド)
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大学から警視庁へ直行し、解決した事件の調書作成に協力してから帰宅すると、すでに辺りは真っ暗になっていた。

本当に日が短くなったと実感する。


窓を開け、部屋の明かりは点けずに椅子に座って目を閉じる。背もたれに寄りかかってぼんやりしてると、鈴虫の音が不意に大きく鳴り出した。

あの夜もこんな風に鈴虫が鳴いていた…。

キッドは今どこでどうしているのだろう。 

ぼんやりしている時、独りになった時、頭に浮かぶのはいつもアイツのことだ。
オレが工藤新一に戻り、怪盗キッドが姿を消してから二年が経つ。
探そうと思ったこともあった。だが。
二年前の夏の終わり、突然この部屋に現れたアイツは、去り際オレに別れは言わなかった。


『じゃあな、名探偵』


それだけ。

『あばよ』とも『またな』とも言わなかった。

もしも引き止めていたら、どうなっていたんだろう。
だが、あの時オレは───アイツにはアイツの世界があって、そこへオレが入り込むことは出来ないのだと───漠然と自分を納得させてしまった。
そして想いは残ったまま、今もここに在る。


「あ~あ…情けねー」


一度は確かに掴んだ想いを、オレは手放してしまったんだ。時が経てばやがて薄れると思い込もうとして。だがそれは自分への欺瞞でしかなかった。

オレは、オレは今もずっとアイツを───。


「くそ」


目が開けられない。
目を開けたら涙が零れる。
別に泣いたって構わないんだ。一人なんだし。

「バカやろう…」

どうしてあの晩、オレのところに来たんだよ。
なのにどうして何も告げずに行っちまったんだよ。

夢なんかじゃなかった…。
強く強く抱き締めた時の、アイツの息吹を憶えている。
互いの鼓動が共鳴し合い、大きく響いた瞬間を。
モノクルを外したアイツの素顔を。
自分の〝半身〟が確かに此処に在ると知った歓びを───。

「ちくしょ~っ」

目を閉じたまま机に突っ伏した。 










「なんでぇ、また泣いてやがる」

「・・・・」

「泣き虫探偵」

「・・・・?」


───ガタ!!


心臓が跳ね上がり、机が揺れて音を立てた。

誰かいる。

そんなバカな。

ここはオレの部屋で。

帰宅して、窓開けて、それからずっと一人で───。

「風邪引くぜ。こんな格好でうたた寝しやがって」

「………」

夢か。

夢でなかったら侵入者だ。

だけど、この声は。

「起きろよ。狸寝入りしやがって。聞こえてんだろ」
 
「………」




そんな…バカな。
 




───キッド?!





「泣き虫」

「…ないでねぇ」

掠れていたが、声が出せた。

だけど目が開けられない。

これが夢だったらと思うと怖くて。

声を上げて大泣きしてしまいそうで。

「ホント、久しぶりに来たってのに全然変わってねえな工藤。前に来たときのまんま」

「…うるへぇ、誰のせいだよ!」

オレは立ち上がった。体がギクシャクする。

さっき帰ったばかりと思っていたが、どうやら突っ伏したまま寝込んでいたようだ。
腕が痺れているし、体がカチカチに冷えてしまっている。

「どこだよ、キッド!」

「目の前だよ。目ぇ開けろよ」

「………」

それでも目が開けられずに、オレは痺れたまんまの手を声がする方へ伸ばした。
腕を動かす。
やっぱり体が冷えてて肩が痛い。いったいどのくらい眠り込んでいたんだろう。

だが、いくら動かしても何にも手に触れない。

「いねえじゃねえか、バカやろー!」

「ここだよ」

はっとする。 

後ろから耳にかかる吐息。

いたずらな声音。

「へへへ。嬉しいぜ名探偵。また逢えて」

「キッ…ド…」

「前に来た時に言っただろ。あの時が最後の怪盗キッド。今はしがない売り出し中のマジシャンさ」

オレは振り向いた。そしてやっと目を開けた。




蒼い月明かりが、見覚えのある顔を照らしていた。
その頬が濡れ、煌めいている。

「なんでぇ…そっちこそ泣いてんじゃねえか」

「もらい泣きだよ。イケメン学生探偵が、顔ぐしゃぐしゃじゃねえか。ざまねえの。ほら拭けよ」


───ポン!!


「うわっ」

差し出されたハンカチを取ろうとしたら、ハンカチが弾けた。
キラキラ光る銀の紙吹雪が部屋中を舞い踊る。
月明かりを映しながら、蒼く煌めいて───。


「ばか、掃除が大変だろうが!」

「あははは」

キッドが笑いながらオレに抱き付いてくる。

「朝になったら掃除手伝うよ」

「んなこと言って、どうせまた消えるんだろ」

「消えねえって。頑張って武者修行終えて、やっと日本に戻って来たんだぜ」

キッドの声も掠れて震えていた。

「言っとくが、今度こそ逃がさないからな」

「逃げねーし。これからはずっと」


工藤の側にいるから───。


そう聞こえた。

幻聴でなければ。

これが夢でないのなら。


「キッド…、お帰り」


間抜けだが、こんなセリフしか出てこなかった。
キッドはオレにくっついたまま、またハハハと笑った。

「もうキッドじゃない。黒羽快斗ってんだ」

「くろば…?」

「明日から工藤と同じ大学に通いながらプロとしてデビューする、新人マジシャンさ。よろしくな、工藤」



こんな嬉しい夢なら何度見てもいい。
夢でないと解ってもなお、そんな事を考えていた。
もう絶対にこの手を離さない。

秋を告げる涼やかな虫の音が再び大きく鳴り響いていた。







20160925 ※再up20161001
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※このブログ初期に書いたお話のなんとなくな続きでした。数年後という〝未来〟の話を書くのは実は初めてだったかも…(^^;)。


★拍手御礼
「閃光(改)」「Third time lucky」「ペガサスの翼」「5000メートル」「チビ新快2」「結論」「始まりのKiss」、さらにカテゴリ★交錯 へ 拍手連打いただきました。ありがとうございます(^_^)ノ

《拍手コメント御礼》
ゆたぽん様★この九月からご来訪いただいているとのこと…よくぞこの辺境ブログへ見つけて下さいました(^_^)ノ 私のひとりごとの身内話へも丁寧なお悔やみを頂戴し感謝です。『快斗の可愛く明るくかっこよく、そしてピリッとした緊張感とプロフェッショナルな様が好き』←ハイハイハイハイ同感です! 自分が褒められてるみたいに嬉しいです(o^^o)。
このところ本当にやることが多くて更新がままならないのですが、また時々覗きに来て下されば幸いです!

更新出来てないのにチロチロ拍手いただけてて嬉しいです。皆様ありがとうございます!
今回も十日以上前に書き始めてたのですが、仕上げられないままupがずるずる遅れてしまいました~;;

そうそう、コナンくん原作!  ものすごい進展がありましたよね。かなりびっくりしました。点が一気に線につながったって感じです。引き続き目が離せません。そしてキッド様原作も是非!進展をお願いしたいです~(^_^)ノ



#SMAP25YEARS

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