フェロモン(1/2) 新一×快斗
「あんさん、怪盗キッドちゃうか?」
工藤んちに来ていた服部平次が会うなり俺に訊いてきた。
工藤が後ろでニヤッとしてる。コノヤロ、俺が困んの面白がってんな。
「アハハ、わかる?」
「ちゅうコトはや……キッドと工藤は世間ではライバルと思われてるが、実はデキてるっちゅー事やな! こらタイヘンな事知ってもうた。怪盗と探偵がまさかなー。ほほー、そうだったんかいな。へーっ」
しかし、そのあと一時間も雑談しているうちに、ノリのよい服部と俺は意外にも仲良くなってしまった。今度は工藤が微妙にイラつき始める。自分で会わせておいてバカなヤツ。
「黒羽、もう帰れ」
「え? なんで」
「俺は服部と話があんの」
「なんや工藤、黒羽も一緒でええやんか」
「ダメッ」
服部が俺に目配せして、工藤から見えない方の目でウィンクする。
「んじゃさ、メアド交換しとこう」
俺が携帯を取り出すと工藤がすごい勢いで寄ってきて腕を引っ張る。
「さっさと帰らねーと酷いメ遭わすぞ」
これ以上ない脅し文句をこれ以上ない低い声で囁かれ、さすがに竦む。
「下まで送るで、黒羽。今日は〝命の恩人〟怪盗キッドと友ダチんなれて有意義だったわ」
服部がどこまで俺を本当にキッドだと思ってるのか謎だったが、変に否定すると余計に関心を持たれてしまいそうなので結局流しておいた。
階下で別れ際、服部にハグされる。服部の肩越しに階段の踊場に立つ工藤の冷たいジト目が注がれていた。
「オイ、工藤がコエェ顔で見てんだけど」と俺が言うと、服部は面白そうに破顔して「ほならもう一押ししといたるか」と言うなり俺の唇にキスをした。
「…服部っ」
「服部!」
俺が驚いて体を引くのと階段から工藤が走り降りて来て怒鳴るのと同時だった。
「アハッごっそさん。工藤、黒羽をいじめたらアカンで~」
関西人のノリって怖い。この後どういう事態を引き起こすかわかってんのか、この色黒くん。
俺はドキドキ怖ろしい予感に苛まれながら工藤邸から走って逃げ出した。
「かなりイレ込んどるようやな、工藤」
「服部~テメェ…」
「俺も弱いでああゆーの。なんや知らん、チョッカイ出しとうなるわ」
「服部~!!」
「ハハハ。ま、今日はここまでにしとこか黒羽のハナシは。そんで今日の本題の事件の事やけどな――」
迂闊だったか。新一は舌打ちした。
ちょっと自慢したかったのかな、オレ…快斗を服部に。だが、もしかして白馬以外に余計なライバルを増やしちまったのかも。ううう。
平次は内心可笑しくて仕方なかった。いつもキリリと男前な工藤が困っている。いいツッコミどころをもろーたで…。くくく。
ところで黒羽。会った瞬間に思わずキッドちゃうんか?と感じたのだが、話し込んで時間が経つにつれ印象は変わっていった。
うーん? ヤッパちゃうか? いくら何でもキッドが工藤んちに出入りしていてその上……なんてあるワケないかなぁ~。
翌日。
学校退けたら真っ直ぐ来い。という工藤の留守電が入っていた。なんでメールでなくて留守録。声のトーンがヘンに普通なのが不気味でそれだけでコワイ。
行きたくねー(泣)。でも行かないと工藤が俺んとこ乗り込んで来るだろうし……近所の目もあるしあんま目立ちたくねぇし。行かねーともっと怒るだろうしなぁ。
――と、毎回こんな時に同じ思考が繰り返されるわけだ。結論も毎回同じ。行くしかない。
工藤の家に着いた。
チャイムを鳴らすことなく勝手に入っていいことになっている。玄関は……開いてた。工藤もう帰ってんだ……。
なんだかドキドキする。責められるのだろうか。昨日のこと。やだなぁ。
服部とは基本ウマが合った。それだけなのに。そりゃあ工藤が見ている前でされるままハグ受けたのが隙があったと言われれば…そうかも知れないけど。
ノロノロと階段を上る。
「!」
二階の部屋のドアが開き、工藤が現れた。
自然、見下ろされる形になる。
「…………」
無言で部屋に入るよう促され、工藤が再びドアの向こうに消える。
表情はそんなに怒ってはなさそうだったけど、でもわからない。
恐る恐るドアを開け、俺は部屋に入った。
つづく
―――――――
終盤は(R18)になるかな?
も、目標は『快斗くん総受け』なんで;もももももちろん、新快前提ですよ!
そう遠くない日に白馬くんにも平次くんにもそれぞれ機会をつくって(?)快斗くんを襲わせたいです!
キッドさまシリアスヤバい話はシチュエーションがまとまらず、もう少し先の目標になりそうです…。
[9回]