easy(R18)新一×快斗
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上手くいった。今日は楽勝だった。
ひと仕事片付けた俺は、自分のベッドにもぐりこんで大きく伸びをした。
(千影さん相変わらず人使い荒過ぎ。だいたいキッドは義賊じゃねーって言ってんのに、イメージ壊さないでほしいよな……)
眠ろうと思って寝返りをうったところでメールの着信が鳴った。千影さんじゃなくて工藤だった。今から来いって? ふざけんな、俺はもう寝る。
ほっといたら、また着信音。
シカトしたかったがイラつく探偵の怒り顔が目に浮かび、渋々メールを開く。
『来ねえなら俺がそっち行く』
まじかよ……。
ちくしょ、まったくもう。
不必要にココに工藤を入れたくないし、あいつ有名人だからこの辺うろつかれるのもメーワクだし。
毎度の事だが結局俺が行く羽目になる。
あーもう。行って何されんのかと思うと更にユーツだが、ココに来て暴れられるのはカンベンしてほしいので仕方ない。千影さんといい、工藤といい、俺ってなんなんだろ。
とほほ……;;
今夜はもうキッドの姿に戻る気はないので高校生らしくチャリを飛ばす。服部みたいにバイクがあったらいいけど……金かかるし、メンテも手間だし――とか、これから起きる事はなるべく考えないように現実逃避しながら工藤邸に向かった。
工藤は玄関で俺を待っていた。
チャリを立てかける間もなく腕を掴まれる。ガチャンと俺のチャリが倒れる音を後ろに聞きながら邸内に引っ張り込まれた。
どーすんのかと思ったら、真っ直ぐ工藤の部屋に直行だった。やっぱり……。
いきなりベッドに押し倒される。
内心では反発もあるが自分でここに来たのは間違いないし、こんな様子の工藤に逆らうと余計ヤバいのは分かっている。
ただ、どうして今夜工藤がこんなにスイッチ入っちゃってるのか解らない。
「どうしたんだよ、工藤」
聞いてみたが、深く口付けられ後の言葉は奪われた。
引き裂かれるくらいの勢いで身に着けたものを剥ぎとられ、思わず竦む。
これだけ荒っぽいのは初めてだ……。チリチリと灼かれるような畏れと、それとは裏腹に湧き起こる衝動に頭と体が分裂して俺をおかしくさせる。
工藤は乱暴でありながら冷静で、あちこち同時に刺激されて俺は僅かの間にどうしようもないほど全身が敏感な状態になってしまった。
耳元やうなじだけじゃなく、背中や脇腹、腿の内側や足の指先までが、触れられるとざわめくようで堪らない。もったいぶるように放っておかれている俺自身から隠しようもなく透明な雫が次から次へと溢れているだろう……。羞恥を煽られて気が遠くなる。
明かりを消してくれと頼んだが、耳に入らないのか、わざとなのか無視される。
いくら互いを知っていても、晒されているようでつらい。
脚を開かされ、抑えつけられたまま見下ろされて体が震えた。
(あ……、ああっ!!)
何の前触れもなく一気に奥深くまで貫かれた。
まるで初めての時のように――いや、それ以上に激しい衝撃に打ちのめされる。苦しい…!
「あ、……く、くどうっ……!」
赦してくれ、という言葉が喉から出かかった。まるで何かの責めを負わされているようだ。工藤が立て続けに限界まで俺の体内を深く、強く穿つ。苦痛と同時に体の芯を直接突かれるような堪え難いほどの快感に襲われ、全身が震え出し大きく跳ね上がって――俺は絶叫した。
叫んでも叫んでも赦されず、涙が溢れて意識が遠のいた。
掠れてゆく意識の底で、俺を見つめる工藤の眼差しに気が付いた。
悲しそうな――切ないような――。
こんな激しさからは想像できない目の色をして……工藤は俺を見つめていた。
あ……。
俺の額の汗を、ひんやりしたものが拭う。
工藤だった。絞ったタオルかなにかで俺の汗を拭ってくれている。
先刻の自分の乱れようを思い出すといたたまれなくて目が開けられない。俺の目が覚めていることは工藤も分かっているはずだが、工藤も無言だった。
気恥ずかしさに顔を背けると、快斗、と――今日ここへ来てから始めて工藤に名を呼ばれた。
これ、落ちてたぜ。と何かを胸に落とされる。
『えっ……?』
気怠い痺れが吹き飛んだ。
生徒手帳――俺の。何故?!
「これ……どこで」
工藤が俺を見て、視線を揺らめかせる。
「美術館。俺が拾った」
なんだって? いつ……!
眩暈を覚えながら、記憶を辿る。
数日前――学校帰りに、今日忍び込んだ美術館の下見に行った。いつもと違って(盗みじゃなく返却という気安さから)変装もせずに窓口で学割チケット買って。その時生徒手帳を出した。それから……それから……?
どうして、いつ、落としたのか。
俺は迂闊にも、今の今まで手帳を落としたことに気付いていなかった。
工藤が拾ったと言うなら、もしかしたら忍び込むために〝仕込み〟をした通気口か、天井裏か、とにかく警察に発見されていたら致命的になっていた場所かもしれない。
工藤はやはり怒っていたのだ。あまりに迂闊な怪盗に。その怪盗を庇うような真似をして共犯者に成り下がった自分自身に。
謝って済むような事ではなかった。
俺は……もう一言も工藤に口を利くことが出来ず、ただ俯いて自分の生徒手帳を握りしめていた。
20111031
[13回]