サカナ嫌い(新一×快斗)
お気楽系アホアホアブノーマル?編です。〝新快〟復帰最初がコレ…(汗)。
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「すげー! 工藤がメシ作って待っててくれるなんて!!」
「たまにはな。外寒かったろ。喰おーぜ」
「うん!」
今夜の快斗はゴキゲンだった。ニコニコかわいい快斗を見ればオレも嬉しい。
「なんか良いことでもあったのか」
「まぁね。試験はバッチリだったし、可愛い一年生の女の子にラブレターもらっちゃったし、作った暗号はこれまでの最高傑作だしー」
なに。
途中のラブレターが気になるが今はスルーしてやろう。
「暗号ってどんな?」
「バーカ。言うかよ。まだ俺のアタマん中さ」
ふん。快斗め。ギャフンと言わせてやるぜ。
「うーん、いいダシでてるー! おでん旨ーい♪」
快斗がパクリとはんぺんに食いつく。
……やっぱり。
「大根サイコー! コンニャクもおいしい~」
ふふ。
「………………」
快斗の箸がとまった。
「…………ナニコレ」
「見りゃわかんだろ。サツマ揚げだよ」
「……チガウ。このカタチ……」
快斗が箸の先に摘んだサツマ揚げは、子供が絵に描くような魚の形をしている。
「オレが食べやすいようにカットしたんだよ」
「………ぜんぜん食べやすくナイ」
ぼちゃり。鍋の中に落っことしやがった。
「食べモンを粗末にすんな」
「…………」
すごいジト目でオレを見る快斗。
「やなヤツ」
「ばか。おまえが甘ったれてんだよ。さっき食ってたはんぺんだって原材料は魚」
「うあああーー!!! 言うな!」
「魚で出来てんだよっ! それが食べれんだから、つまりおまえの好き嫌いは単なる思い込みだ。甘えだよ!」
「うるせえっ! 工藤っテメーよくも人を喜ばせといて突き落としたなっ! 一瞬でもオメーを好きだと思った俺が馬鹿だったっ!!」
へん。
オレは快斗にくるりと背を向けると、用意しておいた物をレンジで温め始めた。
「………?」
ムスッとしながら快斗が様子を窺っている。
チーーン♪
「はい」
「――く、工藤……オメーってヤローは…」
絶句する快斗の目の前に、湯気がほかほか立ちのぼるアンコたっぷりのたい焼きが乗った皿をオレは差し出した。
「食え」
「…………」
「甘いもん好きだろ。食えよ」
さっきの威勢はどこへやら、しおれた快斗が首を振る。
「しかたねえな」
たい焼きを半分に割って、尾の方を差し出した。快斗がまた首を振る。
次はアタマの方を差し出した。またまた首を振る。
ワガママなヤツだ。
千切って小さくした一部分を差し出した。う、と快斗がうなる。
たい焼きのウロコの模様が気になるのか。しょーがない。上の皮をとってアンコが直接見えるようにした。
ぱくん。
オレの指ごと口に入れやがった。
「――っ、痛てえ!!」
快斗め、俺の指に噛みついて離れない。
「ばかっ、痛てえだろがっ!」
快斗がアッカンベーをしてイーをする。
「ザマーミロ! 人の弱みをからかったバツだっ」
「いいのかよ…。オレ、実は魚の生まれ変わりなんだぜ」
「え……?」
不安な顔つきになる快斗。あほか。
「おまえを抱くと、ウロコが時々落ちるんだ」
「ば、ば、……」
んなわけないのに、なんだか後ずさる快斗。コイツそんなに魚が苦手なのか。予想以上だ。面白い。
「ほら、腕にウロコが……」
オレが袖を捲ろうとすると、快斗は『よせっ』と慌てた声を出した。
快斗が魚嫌いなことは知っていた。
しかし、どこまでどうダメなのか、詳しく聞いたことはない。
食事に関して云えば、たとえば魚の形がわからなければいいのかとか。すり身になってしまっていれば食べられるのかとか。
はんぺんとか、かまぼこは大丈夫なんだろう。そんなトコまで嫌っていたら生活できない。
それにしても何かと体を動かす事が多いんだから、カルシウム不足はまずいだろう。というわけで、オレはこの実験を思い立ったのだ。
「お魚さんだって食べてもらえなけりゃ、なんのために漁師のおじさんに捕られたのかわかんないぜ」
「×××に気を使う義理はない」
×××って何だ。魚って言うのもいやなのかよ。
「しかたねーな。わかったよ。悪かった。ちゃんとカルシウム採れてんのか心配だったんだ」
「それは……ちゃんと考えてるから大丈夫。骨密度も正常範囲だし」
ホッとした顔して座り直す快斗。
二人でまた食事を始めたが、快斗のヤツもう二度とおでんの鍋には箸を付けなかった。
まぁいいさ。ひとつ新しい〝攻め〟の手段を思い付いたから。
今夜でも早速試そう。ふふ。うひひ。
快斗がなんか背中がゾクゾクすると言い出した。まずい、気取られたら愉しみが減る。
オレはなるべく普段通りを装った。内心は早く腕にウロコの模様を描きたくてウズウズしてたけど。
あはは。
20120203
[9回]