名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
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彷徨う者(新一×快斗)
※カテゴリ違いになってしまいますが、前回up「身代わり」の続編。ジンが去った後の快斗くん独白から。終盤は新一視点。
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〝暴力〟とはこういうものかと───暗いフロアに転がったまま、俺はぼうっと考えていた。



体の芯を苛む鈍痛が、加えられた凌辱を甦らせる。苦痛と屈辱しか残らない。それはかつて工藤と交わしたものとはあまりにもかけ離れていた。


工藤とは───。
初めて素顔で向かい合った俺たちは、ただ互いを感じ合いたくて、想いを伝え合いたくて、求め合い、一つになった。
あの切ないほどの気恥ずかしさや歓びを思い出すと、無様に蹂躙され尽くした今の自分との落差に呆然としてしまう。

(テッ…)

起き上がろうとして、軋むような痛みに体が悲鳴をあげた。だが、こんな姿でいつまでものんびり転がってはいられない。
ようやく仰向けに体を返すと、窓から傾き始めた青い月が見えた。
月を見ると、ありがたいことに気分がいくらか和らいだ。


(………)


あそこまでジンに言い募って殺されなかったのが不思議だった。
俺もむきになっていたってことか。

俺を貶めながら、俺を見下ろすジンの瞳が揺らぐのを確かに見た。俺の変装を剥ごうと伸ばしかけたその手をジンは止めた。
ジンは工藤を思い浮かべていたのだ。
それが解ったから、黙っていられなかった。

こんな目に遭ったのが俺で良かったと心底思う。工藤に影を落とすような真似をさせてたまるか。
俺はもともと月下を彷徨う者だ。ジンと大差はない。だからかまわない。
だが工藤は違う。陽の光を全身に浴びて、これまでも、これからも生きていくやつだ。

えいっと気合いを入れて、体を起こした。痛いが動ける。動くんだ。
膝を着き、手を着いて、体を持ち上げた。上体を起こすと下肢が砕けそうになったが、なんとか堪えて立ち上がる。

大きく息を吐いた。
苦しくても、背筋を伸ばしてしっかり歩くんだ。
こんなことくらいどうってことない。乗り越えてみせる。

ジンの特徴は記憶した。ジンの犯罪歴は残ってないだろういから簡単にはいくまいが、きっと素性を探ってやる。

ジンたちの組織がさして苦労もせず日本国内を跋扈(ばっこ)する裏には、もしかしたらFBIや警察、公安にも組織の仲間が紛れ込んでいるのかもしれない。
潜り込むのは俺だって得意だ。
警視庁と繋がりの深い工藤でも立ち入れない捜査の機密を盗んで、ジンたちを追う手掛かりを手に入れてやる。

工藤には指一本触れさせない。

工藤を傷付けるような真似は、絶対に許さない…!









・・ー・・・・・ー・・・・・ー・・

   



「やあ、工藤くん! こないだはお疲れさまだったね。おかげで爆弾犯グループも一網打尽だ」

「高木刑事もお疲れさまです。目の下が隈ですよ。あまり寝てないんじゃないですか?」

「あははは~しかたないよね、取り調べや調書作成が天こ盛りでさ。で、工藤くんは? 今日はどうしたの」

湾岸地区に潜んでいた爆弾犯グループを追い、一課の刑事たちと一晩中駆けずり回ってから数日が経っていた。
オレはその件に関して少しばかり気になっていた事があった。今日は時間があったので、学校帰りに警視庁に来てみたのだ。

「少し確認したいことがあって。湾岸地区で最初に踏み込んだ新築のビルがありましたよね」

「ああー…うんうん、あそこか。そこが?」

「あの時、オレたち以外に人がいたような気がしたんです。犯人たちを追っていたので、確かめないままビルから出てしまったんですが」

「そこ座ってよ、工藤くん。そりゃさ、あれだよ、たぶん浮浪者だろうね。翌日ビルの管理会社から通報があってね、ぼくらが踏み込んだフロアのカーペットが剥ぎ取られてたんだって」

「カーペットが? どのくらい?」

「さあ。そこそこの広さだったみたいだけど。寒さをしのぐのに使おうと思って持ってっちゃったんじゃないかなぁ」

「剥がされた跡、調べましたか」

「え? いや、なんせオープンが迫ってたから、大至急修復したって。今日オープンじゃないかな。なんか警視庁に補修代金の請求がきて、なんでよ、みたいな話を佐藤さんがしてたけど。…なんか気になる?」

「カーペットなら入ってすぐのフロアでも良かったんじゃないでしょうか」

「さあねぇ。めぼしいもの探して上まであがったけど、あの時はまだ何も搬入されてなかったし、しかたなくカーペットだけ持ってったとか」

「………」

そうなんだろうか。どこか不自然だ。背に覚えたあの気配は、本当に浮浪者のものだったのだろうか……。

「!」

胸ポケットの携帯が振動した。慌てて取り出すと、黒羽からだった。

「そろそろ行かないと…工藤くん、誰か呼ぶ?」

「あ、いえ。ありがとうございました」

手を振って奥へ走っていく高木刑事に目礼し、オレは携帯のボタンを押した。

黒羽と連絡を取り合うようになってまだ日が浅い。妙にどきどきする自分がいて苦笑する。

「黒羽か。オレだ」

『名探偵、何度も電話くれてたみてーだな。気が付かなくてすまねー。どうした?』

「特に用事はないよ。ただ声が聞きたかったから…」

言いながら赤面した。オレ、なに言ってんだろ。
電話の向こうで黒羽がクスクス笑う気配がする。温かいものがぽっと胸に灯る気がした。

「黒羽、今度いつ逢える?」

『俺に逢いたい?』

「・・・・」赤面。

『あははっ、俺も逢いたいよ、名探偵に。そうだな~来週あたり名探偵に逢いに行くよ』

「本当か」

電話しながらエントランスで立ち番している警官に会釈し、地下鉄の駅へ向かって歩き出した。

『もちろん。場所と時刻は追って予告いたします、名探偵殿』

怪盗キッドの声だ。またドキリと心臓が反応する。オレ、キッドと黒羽と、どっちが好きなんだろ…?

黒羽と約束を交わし、電話を切って走り出した。胸が弾んでいる。

来週、黒羽に逢える。待ち遠しい。

早く逢いたい。黒羽───。







20150207
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●拍手御礼
「クロスステップ」「囚人」「初詣」「約束」「身代わり」へ、拍手ありがとうございました(_ _ )/


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