特別な響き(白馬×快斗)R18
※前日はこのブログ新快定番で今日は白快の定番的な…。別パラレルなので浮気ではありません! 御了承を~(@@);;
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ぎり、と、また背に爪が立てられ、痺れが走った。
僕の下で切なげに眉を曇らせる恋人。
深く穿ちながら、黒羽の両脚をかけた腕を僕はシーツに押し付けた。
「ア、…はく、ば…っ」
「探と呼んで下さい。今くらい」
「………あ、んんっ」
「快斗」
そう僕から名を呼ぶと、黒羽はうっすら瞼を持ち上げ、濡れた美しい蒼の瞳を覗かせた。
「…あ、ああ、…く、ばぁっ」
「駄目ですよ…甘えても。ちゃんと僕のことも名前で呼んで下さい」
ゆるゆる体を引き、油断させておいて不意に勢いよく押し進める。
衝撃に黒羽は髪を跳ねさせ、ああっと熱い息を吐き出した。
背中に刺さった爪が、ぐっと横に引かれる。熱い。きっとミミズ腫れがいくつも出来ているに違いない。
「きたね…っ、あ、も、もう…俺…!」
「駄目。まだですよ。ほら」
繋がったまま体全体をくゆらして淡く緩く刺激する。苦しそうに黒羽が脚をばたつかせた。
「あ、ああ…はくばっ、た、頼むから、もう───!」
「どうして呼んでくれないんですか? 探って…一言」
「あ、あっ…」
体を起こして黒羽の両脚を掲げる。黒羽の腰が浮き、僕の背中から手が滑り落ちた。
「うう…!」
縋るものを求め、黒羽の両手がシーツを引き寄せ、きつく握り締めるのが分かった。
「…強情ですね。僕が保ちませんよ、君のそんな表情を見せつけられては」
僕は膝立ちしたまま律動を再開した。
すぐに黒羽は顔を真っ赤にして体を戦慄かせ始める。
「は、く…ば…!」
「言ってごらんなさい…〝探〟と」
「さ───…」
ついに折れるかと思った黒羽だったが、唇を噛んでそのまま押し黙ってしまった。
動きを少しずつ速く、強めてゆく。
僕ももう限界だ。
僕を受け入れ、僕を感じ取っているだろう黒羽の様子は堪らなくいじらしく、どうしようもないほど艶やかで愛おしい。涙を浮かべる彼の先端へ、僕はそっと指を滑らせた。
「快斗…!!」
僕は黒羽の名を呟き、体を震わせる。
…痺れるような到達感。全身が弛緩してゆく。
ほうと息を吐いて、黒羽を見下ろした。
「あ…ああ……」
力無くシーツに沈んだ黒羽の眦から涙が一筋。
ほぼ同時に達したことが解って、僕はほっと微笑んだ。
肩を掬うように、そうっと黒羽を抱き起こし、胸に抱き寄せる。
黒羽はふううと熱い息を漏らしつつ、僕に文句を言った。
「くそ…、いいように弄びやがって」
「フフ。そうですね。堪能させて貰いました……君は本当に素敵だ」
「バカ」
僕の言葉に黒羽は耳どころか首筋、胸元まで朱くした。
「ホットココアです。ホットミルクの方が良かったですか?」
「ココアでオッケーだよ。サンキュ!」
サッパリと身繕いし、僕らは朝食のテーブルに向かい合っていた。
僕の親類が所有する別荘のコテージ。朝霧が漂い、木々の香りに包まれたこの場所には見渡す限り僕ら二人しかいない。
トーストを頬張っている黒羽がほんの少し顔をしかめた。
「痛みますか?」
僕が訊くと、黒羽は微妙に唇を尖らしてそっぽを向いた。
「まあ、痛むっつーか、だるいっつーか…。初めの頃ほどじゃないけど」
「もっと気をつけますね。君になるべく負担をかけずに、君をもっと感じられるよう」
「いちいち言うな。こっぱずかしい」
「恥ずかしいと言えば…、君はどうして僕の名を呼んでくれないんですか? そんなに言いにくいでしょうか」
「べつに…いいだろ、白馬で」
「無理強いはしませんが…いつか呼んでくれたら、僕はかなり嬉しいです」
「なにが無理強いしない、だよ。すげえ無理強いされたよ」
「でも言ってくれませんでしたね」
そこで黒羽は僕をチラリと仰ぎ見た。
「背中見してみ」
「えっ?」
「はやく」
「な、何ですか、いったい」
椅子を立って僕の背後に回った黒羽が、僕のシャツをたくしあげる。
がりがり。
「痛たっ、何するんですか!」
「へへへー。完成」
「なんです? さんざん君に引っかかれてたのに、その上また」
「鏡見ろよ」
「え…?」
ものすごく嫌な予感がした。
まさか。
鏡に背を写して絶句する。かなり歪んではいるが、縦横に走ったミミズ腫れはおぼろにカタカナの文字を形作っていた。
サ、グ、ル ………と。
「な、なんてことを…!」
「へへへッ。名前呼ぶ代わりに刻んでやった、ザマーミロ!」
「あのねえ…黒羽くん!!」
呆れて天の邪鬼な恋人を睨みつける。
僕は君に名を呼んでもらい、特別なその響きを僕のものにしたいだけなのに。
「太陽と北風って知ってんだろ」
「なんです?」
「そういう童話があるだろ?」
「…………」
旅人の重いコートを脱がせようと競う、北風と太陽の話か。
「それか、アレ。…鳴かぬなら、鳴くまで待とう」
ホトトギス。
「つまり…果報は寝て待てと、僕に言ってるんですか? 君を愛し続ける事が出来るなら、待っていれば君の方から僕の名を呼んでくれると?」
「まあ…わかんねえけど、たぶん」
「……まさか、ひっかかれ損じゃないでしょうね」
「うーん、どうだろ?」
「黒羽くん!」
まったく。
痕が消えるまでうっかり背中を晒せない。
しかしヒリヒリと背中に感じる痛みが黒羽によるものであると思えば、それは確かに面映ゆい秘め事の一つではある。
すぐにそう納得してしまう僕は、やはり黒羽に甘いのだろう。
「な…、散歩しようぜ」
「ええ。喜んで」
ひんやりと目覚めたばかりの森の向こうには山々が青く連なり、吹く風が僕らを包み運んでゆく。
繋いだ手の指を絡めると、黒羽は俯いていた横顔を持ち上げ、空を見て笑った。
ふと僕は想像する─────。
いつか僕の名を呼ぶ君の声を。胸震わすその心地良い響きを。
君はぶっきらぼうを装って僕を振り向き、きっとこう叫ぶだろう。
〝おーい、探!〟…と。
20130510
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※すすすみません、ただイチャイチャさせたかっただけでした~(@_@);;
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