名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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野暮(昴×快斗)
※昴さん視点
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深夜。いや〝夜明け前〟と言った方がよいだろうか。

街はまだ暗くひっそりと静謐を保っていたが、物流の大型トラックは途切れることなく幹線道路を走っている。




始発にはまだ少し時間がある。
こんな時間を好んで彷徨う酔狂な人間は、まず不審者と見做されても仕方がないだろう。

警邏のパトカーが赤色灯だけを点けて走行するのを物陰でやり過ごし、私はまた歩き出した。

「……」

何かある。

いや。

誰か…いる。

ビルとビルの狭間。整えられた植え込みの陰にうずくまっている塊が身動いだ。

〝私が気付いたこと〟に気付いてその場を立ち去ろうとし───出来ずに再びうずくまった。
そう見えた。
浮浪者であれば構わず行き過ぎるのが寧ろ礼儀かもしれなかったが、どうやらそうではない。

くるりと跳ねた髪と、華奢な肩のラインが判った。
若い。
少年だ。
俯いて顔は見えない。一歩私がそちらへ近付こうとしたところで、少年は激しく咳き込んだ。






「しったりしたまえ」

肌を拭いてやりながら軽く肩を揺さぶると、少年は青ざめた顔を私に向けた。

放っておくにはまだ寒かった。少年は黒いシャツ一枚という薄着で、咳き込んだあと吐いて、さっきまで意識を失っていたのだ。

「ここ…どこですか」

「K街のラブホテルだ」

手っ取り早く、そして匿名で済む。
道徳的でない場所なのは確かだが、私は他者に身元を明らかにしたくないし、この少年にも詳らかにできない事情が窺えた。
少年がさっき吐いたのは毒物だった。

「なぜ毒なんかを?」

私を見る少年の瞳はもうしっかりしている。

「…助けてもらって…ホントはちゃんと答えるべきだと思うんだけど…」

「人に知られたくない事情があるのは、お互い様のようですね」

ひじを着いてベッドから半身を起こし、少年はこくりと肯いた。

もしも他者に毒を盛られたのだとすれば、これは穏やかな話ではない。本来の私の立場であれば仲間を呼び、少年の身元を確かめ、捜査の手続きをして親元に送るくらいのことはすべきだろう。
しかし。

実は、私はこの少年に見覚えがあった。

以前見たことがある。工藤新一と一緒にいるところを。あれは、この少年ではなかったか。


帝丹高校のものとは違う制服を身に着け、工藤新一とともに工藤邸に入ってくるのを、私は間借りしている二階の窓から見たことがある。

雰囲気こそ違え、二人は背格好も顔立ちもとてもよく似ていた。
そしてこれは工藤新一の幼なじみの彼女に聞いたことだが───工藤新一のライバル〝怪盗キッド〟の素顔は、工藤新一と瓜二つらしいのだ。

「君も、私を知ってるね」

暗に私は君の正体に心当たりがあると告げた。当然伝わったはずだが、少年の表情は変わらなかった。

「このこと、工藤には言わないでください」

「なぜ」

「アイツうるせえから」

私の正体もこの少年にはバレているようだ。工藤新一に聞いたのか、聞かずとも察しているのかは解らない。

「いいでしょう。しかし独りで夜中に危険な真似をするのも大概に。私が諭すのもどうかと思いますが」

「工藤にも」

「…?」

「アイツの方が、俺よりもっと危ない真似するから。あなたから工藤に言ってください。あんまり無茶すんなって」

───切ない目をして。
自分よりも工藤新一を案ずる少年の言葉に、私は思いも寄らぬ感情を覚えて戸惑った。
何だろう、この感覚は……。

手を伸ばして少年の顎を持ち上げる。
ハッと目を見開いた少年の瞳が揺れた。

戻れるはずもない。私がとうに失った煌めきを放つ少年たち。二人が並んで笑い合っている姿を見た時にも覚えた──この感情は。

私の口付けを、少年は拒まなかった。
ただ身を堅くし、口を結び、息を止めていた。

離れるとホッとしたように身を引き、そして少しばかり不安そうに私を見返した。

「このくらいの駄賃は許してもらおうか…。もう大丈夫だね。ここの精算はしておくから、少し休んでから帰りなさい」

「あの…」

「沖矢昴、だよ。私の名は。隠し撮りはもうしないでくれるかな」


最後にそう告げ、私は退散した。
次にどんな感情に襲われるか判らなかったからだ。

久し振りに感情をコントロール出来なかった。
反省しつつ、尾を引く感情に後ろ髪を引かれながら私は街に戻った。
夜明けまでまだ少し間がある。

少し調べれば少年の素性は解るだろう。しかし、それは私の仕事ではない。

工藤新一とあの少年との繋がりに割り込むのは〝野暮〟というものだろう。







20170319
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※更新感覚が空いてしまい、白快書こうかカテゴリ★ファーストステージ続き書こうか、もたもた考えてるうちにコナンくんコミックス91巻の影響でこんなんなりました。快斗くんが何で毒を?という経緯は完スルーですご了承を~(*_*;

●拍手御礼!
「サカナ嫌い2」「月光という名の真実」「確率」「April fool」へ 拍手ありがとうございました(^_^)ノノ


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