こういうこと《3/3》新一×キッド
(R18)
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俺は今度こそ観念した。
もう――自分の殻に閉じこもるしか自分を守る術がなくなった。
手袋をした両手はそれぞれ戒められ繋がれ、シルクハットとマントは奪われその辺に投げ捨てられて。上着とシャツは前を開けられ大きくはだけられ、いま下肢を覆うもの全てが探偵の手によって取り去られた。
丸裸と言っていい姿にされ、竦んだ膝を両に割られる羞恥に俺は唇を噛んで堪えていた。突き刺さるような眼差しで探偵に視姦されている。同性なのに性欲の対象にされているのだ。
堪えきれなくなって体を返そうとすると、俺の中芯が探偵の指に掴み取られた。
(あっ!)
割られた脚の中に完全に入り込まれ抑えつけられて、避けようがなくなった。探偵の指先が上下に辿って俺をなぶり始める。悪寒しか感じない――はずだったのに、不意に疼くような感覚が走って驚愕する。
そんな……まさか。こんなされ方で感じるなんて。
「!」
モノクルに指がかけられる。ハッとして目を開けると、目尻から涙が落ちた。目の前に探偵の顔があり、俺の目をじっと覗き込んでいた。
「外すぜ、モノクル」
わざわざ宣言されるなんて屈辱でしかない。しかし抗おうにも動きは封じられ、今しも中芯が勃ち上がりかけて意識が分裂しつつある時に……。
モノクルが奪われた。
一度堅く閉じた目蓋を再び開けると、探偵はやはり間近で俺を見つめていた。目許に思いのほか優しく口づけられ、探偵が何を考えているのか分からなくなる。唇もまた――さっきと違う優しさで覆われる。どうして。頭がへんになりそうだ。
びくん、と体が跳ねた。恥ずかしげもなく中芯が硬くなってさらなる刺激を求めている。そんな素振りは見せたくないのに、体が勝手に跳ねて催促しているのだ。浅ましい姿をこれ以上見られたくなくて顔を背けた。
「キッド……」
探偵の声がかすれている。まるでつらいのは自分の方だとでも言うように。
いつの間にか探偵も上衣の前をはだけていて、素肌が重なる胸やら腹やらが異常に熱い。
なんだか――おかしい。なんだか――俺まで――。
「ああっ!」
突然下肢から湧き起こった衝動に突き上げられて全身が震え上がった。
達したのだ。探偵にいいように扱われて、俺は自分の精を他人の前で初めて放ってしまった。
哄笑されると思ったが、探偵は何も言わず俺の腹に散った雫を掬いとった。
痺れる頭でこのあとの成り行きを思い浮かべる。ああ……。
両脚が探偵の肩に担がれるように持ち上げられ、腰が浮く。
やはり、いくところまでされるのだ。今から俺は探偵に後ろを侵される。滑(ぬめ)るような感触が俺のその周辺を探っている。悲鳴が出そうになるのを我慢するのがやっとだ。手が。手が動かせない。ガチャガチャと左手を繋ぐ手錠が鳴る。もう片方の手首に巻き付いたタイが食い込んで血流を遮り、右手が痺れてゆく。
探偵も俺も無言だった。無言で互いの荒く乱れる呼吸だけを聞いていた。
(くっ…!)
異物が侵入してくる。俺の体をこじ開けようと動き出す。
「……おい、逆らうな。馴らさないと苦しむのは自分だぜ」
人を、何だと思ってやがる。
しかしこんな状態でとても会話なんてできない。口を開けば情けない声が溢れてしまう。
無理やり犯ろうとしてるくせに。俺が苦しかろうがなんだろうが犯る方のテメェに関係ないだろう。
さらに異物が――指が増やされる感覚に、ひ、と高い声が喉の奥から出てしまった。唇を噛んであとの悲鳴を呑み込む。脚を開かされ折り曲げるように腰を持ち上げられて力が入らない状態の俺を、探偵が容赦なく押し拓き、馴らしてゆく。
後ろに意識が囚われていた俺の口を探偵がまた塞いだ。苦しい。そうしていても後ろを侵す探偵の指の動きは止まず、さらに奥へと深く探られる感覚に翻弄される。
「…あ、はぁっ、はっ……」
呼吸が自由になると思わず体の力が抜け、後ろを弄ばれていた感覚も一瞬痺れたように分からなくなった。
探偵が体を起こす。ほんの一拍おいて、熱く堅いものがぐいぐいと俺の後ろを突いて侵入を始めた。探偵だ。探偵が――俺の中へ。
「あ、ああ……っ!!!」
徐々に押し込まれ奥へと深く穿たれる。これ以上は無理だ、そう思ったが侵入はまだ止まらず、体を裂かれる苦痛に俺は悲鳴をあげた。とても声を抑えられない。
おそらくぎりぎりまでのみ込まされて、ようやく探偵が動きを止めた。
繋がった体から探偵の息吹までが伝わる。ついに完全に俺は探偵に繋がれて身動き一つできなくなった。
苦痛と圧迫感に汗が噴き出し、何も考えられない。
しかし、本当の凌辱はこれからだった。探偵が腰を使い出すと、続けざまに襲う衝撃に食いしばった歯から悲鳴が漏れる。みっともなく声をあげるようなところは絶対見せないつもりだったのに、体内を突き上げられる苦しさに、悲鳴どころか涙まで溢れて止まらない。
「う!……くっ、うあっ…!!」
やがて腰が痺れ気が遠くなりかけた頃、繋がった体から探偵が体を震わせ小さく声を漏らすのが伝わってきた。俺の中に、探偵が精を吐き出すのが分かった。
……やっと、やっと終わった。
探偵が体を離す。
自分の体ではないようだ。ぎくしゃくと固まった体はすぐには動かせなかった。
探偵が俺の体の間からどく気配がないので俺は仕方なく目を開けた。はやく解放してほしい。
しかし、霞む目を開けた俺と視線が合うと、探偵は火照った眼差しでまたしてもニヤリと笑った。
「まだ終わってないぜ」
「……え……?」
意味が分からず俺が探偵を見返すと、探偵は消耗した俺におかまいなく傷んだ後ろに再び指を差し入れた。
「あ、や…めろっ。もう、すんだだろ……!」
「まだ。中で感じてないだろ」
何を言っているのか分からず、ただもう解放してほしくて俺は首を振った。
「やめて…くれ。こんなことして、俺の何が解るっていうんだよ……!」
突然、ビクッと腰が震えた。探偵が俺の目を見て微笑む。
「あ、あっ! よせっ!」
探偵から加えられる刺激に反応して、俺の中から何かが湧き起こる。
それを察したらしい探偵はもう一度俺を貫く体勢に入った。
こっちが折れて頼んでんのに。オニだ、こいつ。いくら体を知ったからって、俺を解った気になられてたまるか。
そう心の中で毒づいたが、一度折れた俺はもう声を抑えることすらできず、深々と穿たれて探偵に大きく揺すられるたびに溢れてしまう自分の悲鳴を聴きながら――とうとう意識を手放した。
次に気付くと、夜明けだった。薄く空が明けようとしている。
「………………」
探偵は憎たらしいほど穏やかな顔で俺のすぐ横で眠っていた。信じられねぇ。
左手の手錠は外されていた。ほっとする。右手は――。
結ばれたタイは解かれていたが、その代わりに手袋を外された俺の指と指を絡めるように、がっしりと探偵の手に握りしめられていた。
何のつもりだ、俺は恋人でも何でもねえ。かっかと頭に血が登った。
今のうちに立ち去りたいが、ほんの少し体をずらしただけで体の奥にズキリと痛みを覚えて、立ち上がれるのか不安になった。
「無理すんな、起きたら手当てしてやるよ」
耳元で囁かれてギクッと探偵を見た。目が覚めていたのか。チクショウ。
「っんと非道ぇな。……こういうこと、他でもすんのかよ」
「まさか。初めてさ、俺も」
なにー?!
「テメェ……散々人の初体験を笑っておいて……」
「俺も初めてって言ったらもっと怖がっただろ」
「勝手な理屈こねんじゃねえ! 手、離せ!」
「怒るなよ」
妙に馴れ馴れしい探偵にムカツいた。
しかしどうにも体を起こす力が涌かず、くっ付いた素肌の温もりになんだか――安堵のような感情すら覚えて情けなくなる。
「くそっ。覚えてろ。何が俺の謎を解くだ。フザケンな」
「ちょっとは解けたぜ」
「なにが」
「聞きたいか」
「……言うな。聞きたくない」
動かない体を抱えてどうしようもなく、俺は探偵に背を向けるように体を返した。ぴたりと寄り添うように探偵もくっついてくる。
テメェ離れろ! そう言おうとしたら、腰に何か押し付けられて、それが勃ち上がった探偵だと気づいて俺はマジ切れした。
二三発探偵の顔をぶん殴ったが、探偵は切れた唇の血をペロリと舐めるとそのまま俺にキスしてきた。探偵の血の味がした。
あとはもう――想像にお任せする。
抱いたくらいで俺の謎を解いた気になんな。そう言う俺に探偵はこれからもっと深く俺は怪盗の謎に挑むのさ、そう言った。
20111218
[19回]