昨夜の三日月も冴え冴えと美しかったですねっ♪
召集
カテゴリ★インターセプト3
※ベルモット視点~ウォッカ視点(+_;)。
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「あの子はどこ?」
「なんでテメェがここにいる、ベルモット」
ソファで紫煙を吹きながら、ジンは訝しげな眼で私を振り向いた。
ウォッカが黙って立ち上がり、私に席を譲る。にこりとウォッカに微笑みかけてから、私はジンの正面に座った。
「パリで予定していた例のオークション、開催地が東京に変更されたわ」
「急だな。あの方はご存じなのか」
「もちろんよ。ボレー彗星がニュースで取り上げられるようになって〝裏〟でも俄然注目度があがったわ。誰かさんが〝パンドラ伝説〟をリークしてくれたおかげね」
「それで東京か…」
「これまで表に出てこなかった曰く付きのスペシャルジュエルが集まるわ。〝パンドラ〟を見つける最後のチャンスよ」
「フン。たいして興味はねえ」
「ジュエルだけじゃないわ。いよいよ〝APTX4869〟も出品される。それに日本の財閥が匿名で参加するってバーボンの情報もあるの」
「───工藤新一」
「興味もった? そう、彼が噛んでくる可能性は高いわ」
「たかだか高校生のガキが〝裏〟にそこまで首を突っ込めるのか」
「あら。誰よりアナタが一番彼のこと贔屓にしているくせに」
「頃合いだな」
ジンは頷いた。煙草をもみ消して立ち上がる。どうやら動く気になったようだ。
「それで、あの子を使いたいの」
「勝手に決めるな」
「勝手にあの子を連れ回しているのはアナタでしょ、ジン。ウォッカ、お願い。これをあの子に」
・・・・・・・
シャワーを使っている間、ウォッカはガラス越しに拳銃を構え、ずっと俺を見張っていた。
濃いサングラスの奥の目がどこを向いているか判らない。そういう不安は絶えずある。
「………」
シャワーの栓を閉め、バスタオルを巻いてシャワールームを出た。
ウォッカがゆっくり近付いてくる。
ふと、緊張が走った。
体の大きなウォッカに見下ろされる威圧感。後退りそうになるのをポーカーフェイスでじっと堪えた。
「………」
銃口。
引き金に掛かる指。
ウォッカは何を考えている…?
もしやジュエルの台座に模した発信機を見つけられたのか。ヘリを処分したと聞いたとき、それが気がかりだった。
もしもそうなら───俺は殺される。
だがウォッカは動かず、静かに息を吐くと銃口を下げて俺に背を向けた。
「そこの服を着ろ。ベルモットからプレゼントだとよ」
ベルモット?
思わず問い返しそうになった時、ドアをノックする音が響いた。
ガチャリとドアが開く。
「お邪魔だったかしら? ごめんなさいね、ウォッカ。ボウヤ、いつまでも裸でいたら風邪引いちゃうわよ」
プラチナブロンドを揺らして〝ベルモット〟が破顔う。
「兄貴は」
「来るわ。ウォッカ、あなたは?」
「おれは兄貴のボディガードだ。どこへでも付いて行く」
「うふふ。それじゃ下で待ってるわ。ボウヤ、あとでね」
軽く投げキスをし、ベルモットは部屋を出て行った。
・・・・・・・・・・
廊下に出て胡散臭い宝石の台座を床に転がし、踵で踏みつけた。
───ガチャ。
鈍い金属音がして、壊れた隙間から小さなチップが覗く。
おれはもう一度強く踏みつけ、マイクロマシンを粉々に砕いた。
発信機であろう事は予測できたのに、なぜすぐに壊さず、兄貴にも黙ってここまで持ってきてしまったのか。
解らない。自分が何をしたかったのか。
「……」
さっきの〝K〟の姿が浮かぶ。シャワーを浴びる裸の背を。おれを真っ直ぐに見つめ返してきた〝K〟の瞳を。
おれは〝K〟に近づきたかったのか。
この台座を目の前に突き付け、〝K〟のポーカーフェイスが崩れるのを間近で見てみたかったのか。
そのために、おれたちの行動範囲が工藤新一に特定されたかもしれない。おれが組織にダメージを与えることになったかもしれない…。
いいや。
おれは首を振った。
用心深い兄貴は一カ所に留まることはしない。一度使ったアジトには戻らない。ここもすぐに引き払う。
だから、大丈夫だ。〝K〟も、台座はヘリとともに海に沈んだと思っているだろう。
この台座をここまで持ってきたことは、おれしか知らない。
おれだけしか。
20140124
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※…お粗末様です。カテゴリ★インセプ、いいかげん進めたいです(汗)。というわけで、快斗くんの魅力にいつの間にか虜になってるウォッカのパートでした。少し間をあけ、次こそお話を終盤に向けて進めていきたいです(希望)。
●拍手御礼
「らくがき(泣)」「月光という名の真実」へ、拍手ありがとうございましたっ(^^;)
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