moonlight 新一×快斗

標的《1/2》
カテゴリ★インターセプト
※この回冒頭と終盤は新一視点、中段は千影さん視点です…(*_*;
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ライトアップされたベルツリータワーの灯が点滅する。
時が訪れたのだ。

高層展望階特設展示台が戴いた〝パンドラの秘宝〟が、街の星々を眼下に従え、きらりと眩い光を弾いた。

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「奥様…！ パリでお待ち下さいと、あれほど坊ちゃまが」

自宅に戻ると、憔悴しきった寺井が私を出迎えた。

「待ってられるわけないでしょう。あなたが保たないわよ、寺井。動きは？」

「ありません。坊ちゃまと連絡が着かなくなって一週間になります。申し訳ございません」

頬の削げた寺井ががくりと頭を垂れる。
やはり直ぐに帰国すべきだったのだろう。それでもあの子が私に託した思いを裏切る決心がつくまで、私なりに苦しんだのだ。

「隠し部屋へ。あの人が何か遺してるかもしれない」


快斗の制服が無造作に壁に掛けられたままになっているのを見て、へたり込みそうになるのを必死に堪えた。飾られたあの人のポスターがこちらを向いて明るく笑っている。

八年前…まるで自らの命が費える事を予感していたかのように、あの人はこの部屋を遺した。だが封印されてる間はもちろん、鍵が解かれた後も私は一度も足を踏み入れていない。
あの人の残り香が漂う密やかな空間に入るのを躊躇ったからだ。
懐かしすぎて。あまりに辛すぎて。
だけど何かあるとしたら、この部屋しかない。

「あの…実は奥様、昨夜こんな物が出てきたのです」

「なに？ どこにあったの？」

隠し部屋に入ったところで寺井が木製の小箱を私に差し出した。

「盗一様が奥様や坊ちゃまに何か遺されているとしたらここしかないと思いまして、隅から隅まで辿ってみたのです。そうしましたら、クローゼットの奥の壁紙に小さな歪みを見付けました」

「クローゼットの奥？」

「はい。盗一様がわざと見付けやすいように歪めて貼ったとしか思えません。陰になっていたのでこれまで気付きませんでしたが…。そこを剥がしてみましたら小さな蓋があり、めくると中にこの箱が」

箱の蓋を寺井が持ち上げる。
古い写真が一枚。
写っているのは……まだ若い…おそらく今の快斗と同じ年頃の盗一。椅子に腰掛けたロマンスグレーの口髭をたくわえた年配の紳士と、肘掛けに添うように立つ金髪の若い女性。
紳士は判らないが、この女性…どこかで───？
私は写真をひっくり返した。青いインクで書かれた見覚えのある文字。盗一が記した名前。

〝Mr. & Miss Volley〟

「ボレー…？」

ボレー彗星────遠い記憶だ。その軌道が近付くまでに〝パンドラ〟を消し去るのだと、生涯の恩人とそう約束したのだと、盗一はそう言った。

くらりと立ち眩みを覚えて目を押さえた。

飛行機の中で読んだニュースペーパーに記事が載っていた…『世紀の天体ショー、カウントダウン開始』『地球への最接近時、もっともよく軌道を観測できる地点は日本』。

────奥様、この写真の人物にお心当たりがあるのですか。

そう問う寺井の声を遠く聞きながら、私は立っていられなくなり、その場にうずくまった。




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バチン！！

音をたて、非常灯が瞬く。青白い閃光の残像を残し、高層展望階は闇に包まれた。
これで表から中を伺い知ることは出来ない。

俺は暗視ゴーグル越しに階段からそっと這い出た。白馬は逆サイドだ。

こい…快斗。こい、怪盗キッド。
もし〝パンドラ〟と呼ばれるものがおまえが探していたジュエルだとしたら、『パンドラの秘宝』と名付けたこのジュエルをおまえが放っておくわけがない。たとえ黒の組織に捕まっていたとしても。
きっと、きっとおまえは現れるはずだ────！！






標的《2/2》へつづく

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※開き直って カテゴリ★インターセプト 進めます。書ききれるか不安が山盛りですが、そこはパラレルなのでと言い訳しつつ…(*_*;

●拍手御礼！
「月光リフレクション」「悔恨」「白衣でドッキリ」「補完～夢」「千年の孤独」「共犯者～秘密の恋人」さらに『新快いたすらがき』へも拍手いただきました！嬉しいです。ありがとうございます(^^)//

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