作戦名(コードネーム)
カテゴリ★インターセプト4
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「こんなところで何をしてるんだい、キール」
「バーボン…!」
営業時間をとうに過ぎた都内高層ホテルの展望フロア。灰色の雲に覆い隠され、月明かりさえ無い。
照明の絞られた広い空間に互いのシルエットが薄く浮かびあがり、白光を放つキールのスマートフォンだけが煌々と輝いていた。
「───あなたが今夜のお目付役? ご苦労様」
闇が濃くなる。
言いながらキールは上着にスマートフォンを仕舞った。声音は静かだが、いったんポケットに差し込んだ手を抜かずに僕に向き直る。
「違いますよ。その役目の人たちなら、エスカレーターの下で寝転んでます」
「………」
キールは黙っている。僕の言葉をどう捉えるべきか判断に迷っているだろう。
「手をポケットから出して下さい。僕ら〝仲間〟でしょう」
キールが僅かに体を揺らして脚をひらく。いつでも懐から物騒な物を取り出せるよう身構えるのが判った。
「困るなぁ、僕の腕をあんまり見くびってもらっちゃ。キミが抜くより僕が撃つ方が早い。これまでの努力を無駄にするつもりですか」
「……私のこと、やっぱり裏切り者だとジンに報告する気?」
「まさか。そんな事をしたら、なんでその場でキールを撃たなかったんだって言われて僕が殺されちゃいますよ」
「バーボン、あなた何者なの」
キールに突き付けていた拳銃の銃口を逸らし、僕は肩を竦めて笑ってみせた。
「キミが今どこの誰に連絡を取ったのか、興味があるんだ。僕は〝探り屋〟ですよ。秘密があれば探らずにはいられないんです」
・・ー・・・・・ー・・・・・ー・・
「シュウ、例のCIAエージェントから?」
「ああ。約束を守ってくれた。一言送信するだけで精一杯だったようだがな」
「一言って…ヤツらのアジトの場所?」
「いや。これさ」
シュウが私に見せてくれた携帯電話の画面には、日本語の漢字が二つ並んでいるだけ。
「〝満月〟…?」
「それがXデーだ。〝aptx4869〟と〝パンドラ〟に釣られて世界中のワケアリ連中が動き出してる」
次に満月となる日が、長年私たちが追ってきた組織を一網打尽にする〝Xデー〟だとシュウは言っているのだ。
私は慌てて月の満ち欠けについて検索した。
今夜は…、今夜の月はいったい何夜?
「例の伝説ネタが誰のリークかは解らんが、おかげでチャンス到来だ。…にしても、時間がない。本国からの応援を待って体勢を整えてる余裕はないぞ」
「どうするの」
「ここにも在るじゃないか。優秀な日本警察が。君が通じているミスター・ナカモリに協力を仰ごう。全責任は俺が負う」
「で、でも、せめてボスには連絡を──…?」
携帯の画面を切り替えてボスのジェイムズを呼び出そうとした私の手を、シュウが遮る。
「シュウ…」
「この話は、ここまでオブザーバーだった日本警察にだけ打ち明ける。何しろ現地警察だからな」
「何故? まさか奴らの手先が私たちの中にいるとでも言うの?」
「落ち着け、ジョディ。いいか、一度だけ言う。キャメルを連れて今からここへ行け」
「白馬…研究所? どうしてこんなところへ」
「そこに君の呼ぶ〝クールキッド〟がいる」
「彼──工藤新一が?!」
「君には他に漏れないよう、彼と直に連絡を取る手段を講じて欲しい。作戦のコード名は〝インターセプト〟。指揮は俺がとる」
20150705
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※新快不在で二話続けちゃいました。ここらで赤井さんを出しとかないと(汗汗)。
他にも出せてないキャラがたくさんいるんですが、すでに十分フロシキ広げまくってるんで…どーか目をお瞑り下さい。
あと、今回の話が満月まであと何日なのかという事をまだ濁してます。時間経過が一番頭を悩ます部分なので、もう少し話を進めるまでその点ご容赦を…姑息でスミマセン。
※イイワケついでに……原作と明らかに違う設定で自覚があるものを申告(汗)。
まず『ボレー彗星は一年後に接近』ではなく、快斗くんたちがまだ高校二年生の現在、最接近中です。
それから千影さんは原作ではラスベガス滞在ですが、こちらはパリにいた事になってます。
さらに初代怪盗キッドは…たぶんホントに亡くなってる前提で(涙)。
軽い思い付きで始めて、長編は苦手なのにこんなん書き連ねてしまって身の程知らずも甚だしいですが…このブログ内の他のお話同様、スカッとシーン飛ばして書きたいとこだけ書いて誤魔化すやもしれません…予防線…姑息の自乗(--;)。
話の整合性が取れてるのかも未検証という現状なのですが『★インターセプト、面白いです。つづき待ってます』と応援メッセージくださる方がいるので! その方にお応えしたいのでがんばります~。しっかりやれー自分ーー。
[13回]