暗示
カテゴリ★インターセプト4
※ショートです(*_*;
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「ヘイ、アー ユー ミセス・クロバ ?」
「ヤー。ハロー、…フー アー ユー?」
ベガスのオープンカフェで見付けた彼女は、私の問いかけに明るく笑顔を返してくれた。自分の膝に乗せたまだ幼い息子を、私の方へ向き直らせる。
「さすがトウイチね。こんな聡明な奥方を射止めて、かわいい坊やももうけて」
「あら、日本語もお上手。夫のお知り合いですのね。初めまして、黒羽千影と申します。あいにく夫は今夜のショーのリハーサルがあって…先刻まで一緒にいたんですが」
「いいのよ、後でショーを観せていただくわ。たまたまベガスに立ち寄ったら、日本が誇る世界的マジシャン、トウイチ・クロバのショーがあるって聞いて…ラッキーよ。アナタを見て、トウイチの奥方に違いないって、すぐに解ったわ」
「あの、宜しかったらお名前を。夫に伝えておきますわ」
「私は……クリス。坊や、歳はいくつ? お名前は?」
私は奥方の膝から男の子を両手で抱え上げ、その大きな瞳を覗きこんだ。
「かいとー!」
「カイトウ?」
「快斗、ですわ」
「よっつ!」
「もうすぐ四つなんです」
くすくすと奥方が笑う。幸福に満ち溢れた、この上なく眩しい笑顔。思わず嫉妬心を覚えてしまうほどに。
私は可愛らしい男の子の頭に手を置き、柔らかなくせ毛を撫でながら、その瞳をじっと見つめた。
いつか再び逢うことがあるとしたら、幼い日に出逢った私の姿を思い出せるよう。アナタの息子の瞳に、その根幹の記憶に私の姿を焼き付けておこう───。
「ママー、パパのところにいこうよ!」
「だーめ。ショーが終わるまで大人しく待ってるって約束したでしょう、快斗」
「パパのマジックショー、いつはじまるの?」
「夜の7時からよ。まだあと三時間あるわ。ホテルに戻って少し休みましょう」
「かいと、あるけるよ」
私が抱き上げようと手を伸ばすと、快斗はピョンと椅子から飛び降りて私を見上げた。いたずらな瞳が明るく輝くのを見下ろして微笑み、手を繋ぐ。
───いまのクリスと名乗ったブロンドの女性、美しい人だった。
盗一のマジシャン仲間かしら? ショーを観に来て下さると話していたから、あとでまた逢えるだろう…。
少し、何かが引っかかっていた。
私と同い歳くらいにも見えたが、遠くを見るような眼差しは年齢不詳の謎めいた陰を感じさせた。
ママー、と快斗に呼ばれて我に返る。
盗一がようやく物心つき始めた快斗を呼んで初めて披露する本場ベガスでのマジック・ショー。楽しみだわ。
ふと覚えたおぼろな不安を打ち消し、私は手を繋いだ快斗と一緒に歩き出した。
20150716
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※ベルモットが幼い快斗くんに出逢った時のエピソードということで(*_*;
他の話を挟もうかと思ったんですが、頭がインセプモードになってて…(汗)。
●拍手御礼
「5000メートル」「ルパン三世vs怪盗キッド」「あの鋭く尖った月」「ヒント」「仰げば愛し」「袋小路の〝名探偵〟」「冬の結晶」「特別な響き」「激情」「作戦名」「そう遠くない未来・君のバースデー」「業火妄想」「有り得ない」「十八夜月」「夏の終わりのファンタジー」「閃光(改)」「悪夢」「倒錯」ほか&京極さんシリーズ、カテゴリ★空耳 ★呪縛 へも拍手連打いただきました。ありがとうございます(^^)/
★今宵は匿名で 様
そうなんですー、赤井さんがアニメでも堂々の復活で! バーボンとベルモットのやり取りにヒヤリとする会話があったりして、さっさとこっちを終わらせないと落ち着いて原作読めない! と気持ちだけ焦ってます(; ;)。
★彌爲さま
連日連夜の拍手&コメント本当にありがとうございました。彌爲さまに追いつかれてしまった感&業火祭りの終焉が重なって非常に寂しいです(; ;)。
また少し時間おいて、お訪ね下されば幸いです。その間に少しでも更新しておきたいと思います~(^^)///
★黒猫さま
ようこそ、はじめましてです~(^^)/ 新快仲間お一人ゲット♪嬉しいです! コメントお寄せ下さりありがとうございます! え?「夏の終わりのファンタジー」でナミダ?? そんなまさか…ですよね(^^;)? 妄想だらけのブログですが、快斗くん愛だけはホンモノです。また是非お訪ねください(^^)/(^^)/
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