名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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乾杯(盗一×優作)
カテゴリ★デジャヴ
※優作さん視点。
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『Mr.KUDO、お届け物です。ファンの方からお祝いの品を』

小気味良いノックの音。
私は一つ息を吐いてからドアを振り向いた。


L.A.で行われた出版関係のイベントを終え、ようやくホテルに戻り、一人になったところだった。

ドアのスコープを覗くと、大きな花束を抱えたホテルのボーイが立っている。
いささか気分が優れず躊躇ったのだが、ボーイに無駄足を踏ませるのも申し訳ないと思い、私は解いたタイを襟に引っ掛けた格好のままドアを開けた。


「今晩は。わたしの名探偵、工藤優作殿」

「…………」

思わず一歩退がった。差し出されたのは視界を埋め尽くさんばかりの真紅の薔薇の花束。
だが。
ボーイだと思っていた相手は、ボーイではなかった。ドアを開ける一瞬の間に、別人に姿を変えていたのだ。

「盗一!! 」

「やあ、遅くにすまない。この時間でなければ立ち寄れなくてね。入っても構わないだろうか」

ウィンクして恭しく私に一礼したのは、海外公演に忙しく飛び回っているはずの、日本が誇る天才マジシャン・黒羽盗一だった。

「もちろんだ! よくここが…私がここにいると分かったな」

「ふふ。わたしを誰だと思っているんだね?」

自信に溢れた最高に粋な眼差し。忽ち魅せられ、頬に血が昇るのを覚える。

突然の盗一の来訪に、この時の私はさぞ惚けた顔をしていたに違いない。
ははは、と愉快そうに笑った盗一は、部屋に入ると流れるような立ち居振る舞いで向き直り、手にした花束を私へ差し出した。

「ではあらためて。今回のディリス賞、MWA賞のダブル受賞おめでとう。君の生み出す極上のミステリは熟成したワインの如く奥深い。細やかな伏線、先の読めない展開…、一読者としてわたしも非常に楽しませてもらっているよ。ささやかだが、この祝いの印し、受け取っていただけるかな」

何よりの褒め言葉だった。
作品の中では、私たちの立場は逆転する。仕掛けるのは私、読み解くのは盗一なのだ。

「この薔薇は…?」

「種も仕掛けもない、正真正銘の〝乾杯〟さ。君の偉業を讃えてね」

美しく咲き誇る真紅の薔薇〝乾杯〟。
完璧な花弁と漂う気品ある香りに圧倒される。

「ありがとう。嬉しいよ、盗一。素晴らしいプレゼントだ。君に逢えて、本当に嬉しい…!」

私は受け取とった花束の匂いを、深く胸に吸い込んだ。
と、不意にくらくらと立ち眩みを覚えて目を瞑る。
ふわっと浮くような感覚。
安堵と、歓喜と。疲労もあったろうか。この数日間、長距離の移動に加え、各界著名人との顔合わせだパーティーだと引っ張り回され、落ち着く暇もなかったのだ…。






〝あなたに敬意を表します、名探偵〟


・・・・・。


この声は。
いつかの…〝彼〟のものだ。

私の耳朶を擽り…胸を震わせ。心地よく響く、麗しいテノール。

一対一で対峙した、満月の夜だった。
月を背にした〝彼〟は颯爽と白いマントを翻して私に言った。

〝あなたに敬意を表しましょう、我が愛しの名探偵殿〟

彼はそう言い、モノクルの飾りを揺らして微笑んだ。

私の最大にして最高の好敵手。巷を賑わす月下の紳士〝怪盗キッド〟。
私は君を知り、君に魅せられ、君と競いあい、君に惹かれ────君のことを慕っていたのだ。心の底から。

それを、君はどれだけ汲んでいてくれただろうか。

君が私と距離をおくようになったのは、君も私と同じくらい強い想いを抱いていたからこそではないのか…?
真に想い合えばこそ、近付きすぎてはいけないと────君は。

君は…。







「しっかりしたまえ、優作」

「…………あ…」

ホテルのベッドの上。

眩暈を起こして昏倒した私を、盗一が寝かせてくれたのだろう。薔薇の香りがしている。ほとんど時間は経ってないようだ。
私は起きあがろうとして盗一に肩を抑えられた。

「優作、無理をしてはいけない。やはりこんな時間に訪ねるべきではなかった。申し訳ないことをした」

優作と名を呼ばれ、夢うつつに思い浮かべていた盗一への想いが溢れ出そうになり、私は言葉を詰まらせた。

「そんなことはない。よく来てくれた。ありがとう」

ようやく絞り出した声は情け無いほどに掠れていた。盗一の瞳が潤むように揺れて見えたのは、私の願望だろうか。

「許してくれたまえ、優作。君に逢えるチャンスが今夜しかないと思ったら、どうしても来ずにはいられなかったのだ。君の顔を見て、君の声を聞いて、君に直接祝いの気持ちを伝えたかった」

「盗一…」

伸ばした私の手を、しかし盗一はそっと振り解いた。

「今夜はこのまま休みたまえ。わたしは失礼する。君の体調も考えず、夜分本当に失礼した」

「何を言う、私は大丈夫だ! もう少し君と話をしていたい」

「ふふ…我が儘はいけませんね、名探偵。明日も日程が詰まっているのでしょう? かく言うわたしも、早朝の便で渡欧しなくてはなりません。残念ですが…」

「…………」

私は解かれた手を握りしめることしか出来なかった。盗一もまた遠く旅立つのだ。僅かな時間を縫い、私のためにL.A.まで足を運んでくれたのかと思うと、これ以上無理は言えなかった。

「ではご機嫌よう、名探偵。君がよく眠れるよう、魔法を掛けて差し上げよう」

「えっ…」

ベッドサイドに立った盗一は、姿勢を正すと指を揃え、右手をスッと振り上げた。

「アデュー、名探偵。またどこかでお逢いしましょう。その時はどうぞお手柔らかに!」

ポン!と音が響くと同時に煙幕が張られる。ベッドサイドに置かれた薔薇の花束の香りが強くなった。

ふっ…と、唇を温かなものが掠めた気がした。温かな、彼の、気配が────

「盗一……!」

すうと気が遠くなる。
すぐに私は意識を失った。


次に目覚めたのは、朝陽の射す夜明けだった。私はどうやら盗一の魔法に掛かって、ぐっすりと眠ってしまったようだ。
盗一と逢った記憶はまるで夢の中の出来事に思えたが、真紅の〝乾杯〟は包みを解かれ、きちんとテーブルの花瓶に活けてあった。

私はベッドから抜け出て伸びをした。
不思議なほどすっきりと目覚めている。深く眠れたおかげだろう。
シャワーを浴びて着替えよう。今日一日予定を終えれば、明日の午後には帰国できる。
自宅で待つ妻とまだ幼い息子の顔を思い浮かべ、自然と笑みがこぼれた。
こんな穏やかな気分は久し振りだった。我ながら気付かぬうちに様々なプレッシャーに心身とも消耗していたのかもしれない。
何か、新しいアイデアが浮かびそうな予感がした。ワクワクするような、ナイトバロン次回作のエピソードが。

私は心の中で盗一に返事をした。彼が私に掛けた〝乾杯〟というマジックへの。

ああ。また逢おう、盗一。

愛しの君。

怪盗キッドよ────。






20140406

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※お…お粗末様です。一人称、優作さんは『私』、盗一さんは『わたし』としています。そして浮気じゃないっ…けどやっぱり盗一さんと優作さんの心は強く結ばれてる!という願望なお話でした~(*_*;

●拍手御礼!
「春花」「頭痛」へ、拍手ありがとうございました(^^)/


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