名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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消された言葉(中森×キッド)
カテゴリ★デジャヴ
※中森警部視点に初チャレンジ(@@)。
※場面設定、例によって曖昧です。ご了承下さい(汗)。
─────────────────────────────

「こんばんは…中森警部。今宵の月はとても美しい。ご覧になりましたか?」

「ふん、ワシの目には貴様しか映っとらん。降りてこんか、怪盗キッド!!」

「おやおや…。いきなり熱い告白とは嬉しい限りです、警部」

「戯けた事をぬかすなっ」

月は後ろにあって見えない。確か満月のはずだ。今回の予告状にあった─────〝移ろう光が充つる夜〟。

歳若いキッドが口元を綻ばせるのを見て、もう一度背後を確かめる。
屋上には誰もいない。
ぞくっと鳥肌が立つ。キッドと二人きりだ。
部下達は眠らされ、あるいは別の場所に誘(おび)き出されて罠に落ちた。何かと首を突っ込んでくる高校生探偵たちも、今夜は参戦していない。

「投降しろ、キッド。応援のヘリがすぐに来る。言うことを聞かんのなら発砲も辞さん。本気だぞ」

黒い夜空と煌めく街の灯を背景に白いマントを風に靡かせる怪盗。まっすぐ銃身を伸ばした。
狙うなら脚かマントだ。

「ふふ。中森警部はいつでも本気ではありませんか…」

「今夜は特に本気だぞ!!」

一拍おいて、またくすくすと怪盗が笑った。チッと舌打ちをする。もう少し気の利いた台詞が出てこんものかと自分でも思う。

こんな脅しが効かないことは分かっている。撃つ素振りを見せれば、キッドはすぐさま飛び立つつもりでいるのだろう。
だが、そうはさせない。

少しずつ間を詰める。

一歩。二歩。…三歩。

怪盗がポケットに両手を入れたまま小首を傾げる。ゆらゆらとモノクルの紐飾りが揺れた。


「………………?」


頭の中で何かが弾ける。

揺れるクローバー。

古い記憶が甦った。

前にも……確かこんな場面があった。キッドを見上げながらゆっくりと歩み寄り……その姿に震える手を伸ばした事が。

あれは。


あれは、いつだったか。




〝あの時〟。
微笑んだ怪盗の口元には、昔読んだ小説の挿し絵と同じ気障な口髭があった。
だが…この若いキッドは髭を蓄えてはいない。


〝どうかしましたか、中森警部〟


・・・・・?


どっちの声だ…?


眩暈に襲われる。


いまのは、あの時のキッドの声か? キッドを追うようになって間もなかった、あの時の?

それとも、いま目の前で微笑んでいる〝この〟キッドの声なのか……?


「─────私は、中森警部にだけは…絶対に捕まるわけにいかないのです」

「なに?」

「中森警部に捕まるのなら、その前に死を選ぶでしょう」

「死ぬだと…?!」

「ですが、ご安心下さい。私は警部には捕まりません」

「何をぐだぐだ言っとるんだっ」

「さきほど警部にいただいた告白への、精一杯の返答のつもりですが」

「貴様の言っとることはワケがわからん。下に降りるんだっ」

ふわと軽く浮いたキッドが屋上にストンと降り立つ。もうほんの僅かの距離だ。

だが。
ここにいるのは〝あの〟キッドではない。かつて私が血眼になって追った、あの頃の怪盗キッドではない…!

「キッド…、貴様は何者だ?」

「怪盗です」

「そうではない! 18年前パリに現れ、各国の警察を手玉に取って…その後日本に現れた、あの怪盗キッドはどこに行ったんだ! 貴様はあのキッドではない。おまえは誰だ!キッドはどこに行ったんだ!!」


─────ひゅうう。

叫びは風が浚っていった。

静かに佇む怪盗が、視線を上げる。モノクルが光った。月が映っている。輝く満月が。

構えた銃が重くなる。呼吸が乱れ、手が震える。両手で持ち直した。
照準の先にあるキッドの表情は、それでも全く変わらない。ポーカーフェイスのままの涼しげな微笑み。

「……ですから警部には、やはり捕まるわけに参りません」

「なぜ、だ」

「私が背負う一番深い罪が…中森警部……あなたへの」




〝裏切り〟だからです。




「な…に……?」


よく聞こえなかった。自分の吐く息が荒くて。鼓動が内から鼓膜を打って、聞こえない。キッドは目の前にいるというのに!

すっと怪盗の右手が動いた。照準の前に輝くジュエルが投げ出される。思わず片手を銃から離して受け取った。

「キッド!!」

「私はやがて消えます。永遠に」

「消える、だと?」

こくりと頷いた怪盗は、マントを掴んで身に巻き付けた。

「私が消えるその時…〝怪盗〟は今度こそ永遠の幻となるのです」


マントが翻る。

煙と共に数羽の白鳩が羽ばたき、夜空に舞い散った。
キッドは消えた。あとには呆然と銃を構える自分だけが残されていた。


ヘリの爆音に気が付き、やっと拳銃を下ろした。
いつの間にか汗か涙か分からぬもので顔中が濡れている。手のひらで拭った。



やがて消えるだと?

永遠の…幻になる、だと?

そんな事は許さない…!!

怪盗キッド。おまえを。

おまえを…。


〝ア…、……、……、テ……、ル…… 〟


浮かびかけた言葉を、懸命にかき消した。

たった五文字の言葉を消し去ることが、こんなに難しいとは思わなかった。







20130410

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