名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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このみ様「ホワイトブロッサム」へ拍手コメントありがとうございました(*^^*)。ちょっと迷いつつ書いた白快でしたので、そんなふうに受け取って楽しんでいただけて嬉しいです!

林檎様「怪盗VS暗殺者」「エロスの神様」へ拍手コメントありがとうございました! えへっ…エロス神、セクシーと思ってくだされば幸いです(^^;)。

ほか拍手下さった方々、ありがとうございました!
さらにどなたか「真逆の月」「遠距離恋愛」「闇に棲む蜘蛛」「別れの季節」へも拍手ありがとうございました~(*^^*)(^_^)//

永遠の幻(中森→初代キッド)
カテゴリ★デジャヴ
※2012.11.27up「ステア」後日談。
※優作さん視点の中森警部編です。
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HYDEパークタワーから怪盗キッドが先日盗んだ宝石ですが…と、中森警部は前置きも説明もなく私に切り出した。

「まあどうぞ、おかけください。紅茶でもお淹れしましょう」

「いや、けっこう。すぐに失礼しますので」

表情を変えず、かと言ってけっして無礼でもなく、中森警部は私の申し出を断った。
まっすぐ伸びた姿勢が表すとおり、中森警部は根っから硬派な人物だ。

私は二週間ぶりに自宅に戻ってきていた。妻は旧友とショッピングに、息子もどこかへ出掛けていて、私一人が留守番をしていた。

「それにしても、よく私が戻っていることをご存知でしたね」

中森警部は僅かに片方の眉を上げただけでそれには応えず、話を続けた。

「─────当日深夜、盗まれた宝石が戻された現場近くに工藤さんに似た男性がいたという報告を受けているのですが」

「さて…? 私ではありませんね」

〝引っ掛け〟だろう。ある程度予測した質問だったので、言下に否定した。

確かにあの夜、私は怪盗キッドから預かった宝石を戻すためにタワーへ向かった。
宝石は小箱に包んでパークのシンボルツリーにぶら下げ、それと知らせる簡単な暗号を警戒中の警官たちに託し、彼らに宝石を発見させたのだ。
暗号を入れた封筒は上層通路から投げ落としたので、私の姿は警官たちに見られてはいない。

「その日、日本におられた事は認めるのですな」

「ええ。ホテルのテレビで怪盗キッドのニュースを見ていましたから。今回もその日と同様、編集者との打ち合わせがあって帰国したのです」

「ふうむ。たいへんですな、そう度々アメリカと往復とは」

「移動中というのは案外原稿が捗るものでしてね。妻にはあちらで待っていて構わないと言うのですが、ほぼ毎回付いて来ます」

「ですが奥様とは、その夜は別行動だった…」

「たまたまです。出版社での打ち合わせが長引きまして」

「………………」

沈黙した中森警部が限り無く私を訝しんでいる事は判ったが、だからといってこれ以上私に質問を重ねるつもりはないようだ。

「わかりました。しかし当日あなたが宿泊されていたホテル周辺をキッドが逃亡時に飛行したのも事実です。あなたはキッドと因縁をお持ちだ。もしかしたらと思い、念のためお目通り願ったわけですが……お時間をとらせました。失礼します」

「いいえ。警部もお疲れさまです」

「ときに工藤さん」

背を向けた中森警部が、視線を前に向けたまま私に問う。

「工藤さんは、怪盗キッドをどうお思いですか」

「え?」

「いやなに。キッドは八年の空白を経て再び我々の前に姿を現したわけですが……わたしと同様、あなたも昔からキッドをご存知だ。当時はキッドのライバルとも呼ばれていた」

「小説家風情がおこがましいですが」

「ご謙遜されずともよいでしょう。そのあなたから見て、復活したキッドは〝当時のキッド〟と同一人物だと思われますか」

「………それは」

中森警部は、本当は私にそれを訊きたくて訪ねてきたのか。

肩越しに振り向いた警部が、横顔で私の返答を待っている。

「なんともいえません。当時はキッドと現場でニアミスする機会もありましたが、いまの私は復活したキッドに逢ったことがない」

「ニュース映像や、ヤツの手並みなど見ていかがです」

「そうですね…。あのように神出鬼没、大胆不敵で、なおかつ華麗なマジックを群衆の前で堂々と行えるような人物が、そうそう存在するとは思えません」

あくまで一般論として私は警部にそう返答した。
中森警部が広い肩を竦める。

「確かにそうですな。しかし……」

「しかし?」

「私は復活したキッドを何度か間近で見ました。…今のキッドは若い。私が二十代の時から追っていたキッドと同一人物だとするには、かけ離れて〝若すぎる〟のです」

…なんらかの理由があって、若者に変装した上で怪盗を演じているという可能性も、全くゼロではありませんが……。



最後に向き直って正しく礼をし、中森警部は去っていった。

私はため息を付いた。
罪なことだ。

〝あの怪盗キッド〟はもういないのだと、中森警部に告げる資格は私にない。

もっとも中森警部自身も本当は解っているのだろう。
解っていて、認めたくないのだ。

私は煙草に火を点けようとして灰皿がないことに気付き、煙草を仕舞い直して応接のソファーに腰掛けた。
天井のシャンデリアを見上げる。
この場所で初めて偶然出逢った時の、歳若い怪盗キッドを…黒羽快斗を思い出す。

中森警部も〝怪盗キッド〟に魅せられた一人だ。
彼の中には今も当時のキッドがいる。

キッドを追って、追って、追い続けて。

そして今も怪盗キッドを追うことを使命とし、胸の内に灯る想いに気付かぬ振りを続けているのだろう。

それは哀しいほどに純粋な想いだ。

行き場を失くしたまま。

彼はこれからも追い続けるのだろう。

彼にとっての〝永遠の幻〟怪盗キッドを─────。





20130409


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