名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

ブログ内検索
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 13
15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
カウンター
プロフィール
HN:
ronin
性別:
女性
自己紹介:
2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
Script:Ninja Blog 
Design by:タイムカプセル
 

トラベル/海《2/2》(新一×快斗)

※新一視点です。

『未成年者のみの宿泊には保護者の同意書が必要です』
――――――――――――――――――

この条項のために、俺たちは少しばかり苦労した。


いくつかあった候補から宿に選んだのは、海辺の丘に建つ白亜のコテージだった。
大学生として俺は偽名を使い、チェックイン時にはメガネをかけて微妙に変装する羽目になった。
快斗に『旅行中ずっと〝江戸川コナン〟って名乗っとけばいいじゃん』と笑われた。

とにかくなんとか関門を突破してバンザイした俺たちは、部屋に荷物を置くと早速砂浜への小径を下って行った。


気ままに寄り道しながら来たので、すでに陽が落ちている。グラデーションが美しかったオレンジの空は見る間に濃い紫色へと変化していく――。

ハーフパンツに着替えた快斗が、ひゃほう~と声を上げて小さな砂浜から打ち寄せる波へと勢いのまま走り込んで行った。遠くカーブした海岸線に灯りが連なるように浮かび、美しくきらめいている。

「ぶっ、なにすんだっ」

「アハハ」

快斗に水をひっかけられた。しょっぱい。やり返した。

そうしているうちにもどんどん暗くなる。夕食時のせいか他の宿泊客の姿はない。誰もいない。
寄せてはかえすさざ波の音。俺たちは二人きりだった。

「すぐ真っ暗になるぜ。日の出を見に朝また来よう」

「うん」


今日の快斗は本当に素直だ。いつもの〝天の邪鬼〟が影を潜め、こっちの調子が狂うほど……なんというか、気恥ずかしくなるほど快斗を好きだと再認識し、すごくドキドキした。


「工藤」

「ん?」

波からあがってきた快斗がそばに来る。
薄闇の中で互いの姿も朧だ。近付くと快斗の瞳が丘のコテージのライトを映して光って見えた。


……快斗からのキス。


波の音。

波音しか、聞こえない。

あとは……自分の鼓動の音と…快斗の髪が潮風に揺れる気配だけ――。



「誘ってくれてありがと」

「ああ」

「来てよかった」

「ああ」

「もう少しここにいていい?」

「ああ」

「ああ、しか言わねぇの」

「ああ」

快斗は肩を竦めるようにして『ヘンなヤツ』と言って笑った。

いま二人でこうしていられる事の切ないほどの喜びに、涙が零れそうになっていた。涙が零れ落ちそうで、言葉が出なかった。


何も言わなくていい。話さなくていい。

淡い月下の光のもとで砂浜に二人並んで座り、手を重ねた。
波音だけ聴いて。

瞬く星々と輝く月だけが、俺たちがここにいることを知っていた。
ただ一緒にいられる事に満たされて動けなくなった俺たちを、星たちと月だけが見つめていた。








20120517


拍手[11回]