Start Over 《2/3》
カテゴリ★ファーストステージ
※快斗くん視点から
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なんで。なんでいねーんだよ。
今度こそ本当に〝怪盗〟稼業に区切りをつけ、黒羽快斗として、江戸川コナンから工藤新一に戻った本当のオマエに会うために、やっと、やっと決心してココ(工藤邸)に来たっていうのに!
やり直しなんだ。
イチからまた始めるんだ。
だから荷物も全部引き上げた。
最初から──初めてココに乗り込んで来たあの日のように、でっかいスポーツバッグ持って、マジックの仕込みまでして今日がスタートのつもりで意気揚々と乗り込んできたってのに。
「アホ工藤〜〜っ! どこ行ったぁあーーーっ!!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「快斗はいない? 本当か、白馬」
「なんですか、工藤くん。僕が嘘をついているとでも?」
白馬のやつ、剣呑な眼差しでオレを斜に見下ろしやがって。どう見ても敵意むき出しじゃねーか。
「…まったく君たちは。スマートフォンという文明の利器があるでしょう。黒羽くんに電話すれば良いものを、いきなり押しかけてきて人を嘘つき呼ばわりするなんて、呆れてものも言えません」
「え、や…、わりぃ、だって」
確かに白馬の言う通りだが。でも、スマホで確認なんて、それじゃドラマチックさに欠けるだろ。
───ざわざわ。
やべ、周囲を取り巻く江古田高校の生徒が増えてきた。ここでは帝丹の制服を着たオレは異端だ。
…て、タレントじゃねーんだ、スマホかざしてんじゃねえ。
「東の高校生探偵ともあろうものが、挙動不審でSNSにあげられますよ。騒ぎになる前に引き上げる事をお勧めします。そもそも」
「そもそも、何だ」
「僕としては君に『黒羽くんはここにいない』と伝える事すら不本意なんです!!!!」
こっちこそ不本意極まりないが、オレは踵を返した。
白馬の低い怒声は、確かに快斗がここにいない事を告げていた。
じゃあ、じゃあ、ドコにいるんだ。
校門で出待ちして驚かせてやろうというオレの作戦は敢えなく潰えた。
駆けながらスマホ画面をチラ見する。何も通知はない。
どうする───。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
荷物は工藤んちのベランダに置いて、俺は工藤を探しに出た。
大人しく待ってれば帰ってくるかもしれないけど、とてもじっとしていられる気分じゃない。
急いている。気持ちが。
早く会いたくて。
工藤に会いたい───。
でも。
制服の上からポケットのスマホを触ってみる。
電話してみようか、とちょっとだけ思ったけどやめた。
訪ねてくるのここまで引っ張った負い目があるし。工藤が俺のこと大して気にしてなかったとしたら、自分だけ焦ってるみたいでカッコ悪ィし…。
とにかく、帝丹高校に行ってみよう。
あとは出たとこ勝負だ!
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ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン!!!!!!
どきどき。いらいら。
反応なし…!!
「黒羽」の表札をグーで叩く。
痛ってえ。
前に此処には絶対来るなと言われてたが、そんなの今さら気にしても仕方がない。
耳を澄まして気配を探る。
もう1回だけ。
───ピンポーン。
…無反応。
「おい快斗ー!! 隠れてんじゃねーだろうなーっ!!」
つい叫んでしまったが、快斗がここに戻ってないのは間違いなかった。まるで気配が感じられない。この家には誰もいない。
どこにいるんだ、快斗。
まさか…オレんちに向かってるとか。
それとも江古田高校に戻ってやしないだろうな。
よほど電話しようかと思ったが、もしアッサリ快斗が電話に出て、もしオレの事なんか気にせずダチと遊んでたりしたら。
オレ、かっこ悪すぎだろ…。
こんなとこで無駄なプライド発動させても仕方ないのに、どうしても電話をかける気になれない。
快斗。なんで連絡寄越さねえ。
今日こそ、とっ捕まえてやろうと思っていたのに。
オレのこと、もうどうでもいいのかよ。工藤新一じゃ、ダメなのかよ…。
不安が膨らんで、ヘナヘナと崩折れてしまいそうだ。
アイツに会ったのは終業式の日、江戸川コナンとして怪盗キッドに対したのが最後だ。
あの時はドタバタで、ろくすっぽ会話もしてない。快斗とは、もうずいぶん長く会ってない気がする…。
快斗。どこにいる。
どこに行けばおまえに会えるんだよ。
快斗の馬鹿野郎…!!
つづく
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※引っ張るほどの内容ではないのに引っ張り続けてすみません。あまりに長年に渡ってのカテゴリで、どうオトシマエを付けたらよいのやら…(*_*;
もう少し、大目に見てくださいませ。
●拍手御礼
「月光という名の真実」「Start Over」
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