名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
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連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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交錯《2/2》(新一×快斗)

―――――――――――――――

目を開けると光るシャンデリアが見えた。きらきらと輝いて辺りに反射して美しい――。

工藤邸の一階応接間だった。広い天井。壁には絵画が飾られ、高い窓を上品な色のカーテンが覆っている。

目の前に紅茶が出された。

「飲めよ。落ち着くから」

差し出されたティーカップを何も考えられずにただ見つめていると、工藤は表情を変えずにカップをテーブルに置いて膝を着き、ソファーに座る俺に向き直った。

「覚えてるか、快斗。さっきおまえは俺の部屋に近づいたら急に様子がおかしくなって、中に入ったとたんパニックを起こしたんだ」

「…………」

――パニック。さっきのが……?

「ここなら、そんな極端に怖くはないだろ」

そうなのだろうか。
確かに息苦しさは今はない。不安感は消えないけれど。

「時と場合によるんだろうけど…もしかしたら閉所恐怖に近いんじゃないのか?」
原因ははっきりしている。何もない廃ビルの一室。俺が見つけた。

「…閉…所…」

「これまでにも、なかったか」

「…………」

思い当たることが、あるにはある。
そうなのかもしれない。だけど。

「そんな…簡単に言うなよ」

目を閉じると浮かび上がる。無機質な狭い部屋。数人の男たち。顔は――覚えているはずだが思い出せない。思い出したくないから。代わりに思い出すのは四方を囲んだ壁。白い天井。
フラッシュバックする映像。
抑えつけられ、硬い床の上で繰り返し受けた暴力。堅く拳を握ると、貫かれた左手の傷痕がじくりと痛む気がした。

「無理に感情を抑え込もうとするな、快斗」

工藤に揺さぶられて、はっと目を開けた。

「つらいならつらいと言えよ。それくらい――いいだろう」

工藤が言う意味は分かる。
でも。

できない。

弱くて。情けなくて。
自分のこの手の傷すら今も正視できないままだ。

「……二度と工藤に会わないつもりでここを出たんだ……あの時」

「ああ」

「ここへは、もう来ないつもりだった」

「わかってたさ」

腕を伸ばした工藤に引き寄せられ、頭と肩を包むように抱かれる。
そうしてじっとしていると、避け続けていた温もりを自分がどれだけ渇望していたのかを思い知る。
戻りたい。戻れるものなら。初めて素直にそう思った。

「――キッドは、名探偵に負けるわけにいかないけど」

「うん?」

「黒羽快斗は……」

名探偵に勝ってほしかったのかも知れない。だから。

「本当の勝負はまだついてないぜ」

「ふっ。なに言うかと思えば負け惜しみかよ」

「勝手に思ってろよ。次はまたギャフンと言わせてやる……」

工藤の唇に言葉ごと塞がれる。
優しい口付けにほっとすると同時に、背に工藤の手が滑るのを感じて思わず体が震えた。

唇を放した工藤が俺の顔を覗き込んでくる。

「……見んなよ。情けない顔これ以上見られたくない」

「しょうがねぇな。せっかく勝ったのにお預けか」

「…………」

「特別に時間をやるよ。快斗がいいと思うまで待っててやる」

「工藤……」

「本当は今ここで押し倒したいくらいだけど、また逃げ出されちゃ困るからな」


戻れるんだろうか。本当に。
俺はこの場所にいることを、赦されるのだろうか。

テーブルの上の紅茶から、まだ温かそうな白い湯気が上っていた。

ゆっくり。ゆっくりと、息を吐く。

俺は目を閉じた。

工藤の胸に顔を押し付けて。

先は見えないけれど、今また交錯する探偵との運命を信じてみようかと――そんな事を思いながら。





20111130

―――――――――――――――


あとがき

もうちょっとハードな展開も考えたりしてどうまとめるか迷いましたが……しかしようやく念願の復縁! 一安心!



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