名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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逆光《2/2》(新一×快斗)

――――――――――――――――――

立ち入り禁止の札をくぐり、階段を上る。
屋上へ出る扉を開けた。

夜風が吹き込む。


仄白く輝く三日月が美しい夜だ。

何かに導かれるようにして、俺はこの場所を訪れた。工藤と初めて出逢ったビルの屋上へ……。


実際はそうとは知らず時計台事件の時にすでに一度探偵と怪盗として対決していたのだが、その時はそんなこと互いに知る由(よし)もなかった。

――月明かりの下で、対極に位置する者同士として――出逢ったのだ。ここで。


もっと別の出逢いをしていたら。
〝探偵〟でも〝怪盗〟でもなく、普通の同い年の高校生として知り合っていたら、俺たち……どうしていたんだろう。


風が舞う中を、あの時工藤が佇んでいた場所へと歩いた。

ここで、工藤は振り向いて俺を見上げたんだ。月明かりを背にして降り立った俺を。







どくん。




風が止まった。一瞬だけ。





あの夜、俺が舞い降りたその場所に人影があった。

屋上の出入り口の、その上に腰掛け、片膝を立て手を付いている――。

朧ろな月明かりの逆光で顔は判らない。

判らなくても、それが誰であるかは瞬時に心が理解した。




静寂の中で自分の鼓動の音だけが耳鳴りのようにこだまする。


どくん。 どくん。 と――。






「……なんで…いるんだよ、工藤」


「おまえこそ」


工藤の声は低く、掠れていた。風にさらわれ、よく聞き取れない。


「――予告状なしでお出ましか」


「べつに……予告なんか」


何を話していいのか分からない。

工藤が立ち上がり、俺が立つ同じ屋上の屋根に飛び降りた。



どくん。



工藤が近付く。目を逸らすことができない。どくん。どくん、と頭の中で鼓動が響く――。



工藤が目の前に立つ。

無意識に後ろに下がっていた。踵が屋上の縁の壁にあたる。


「……なんで」

「追っかけたら逃げるじゃねーか。あとはヤマ張って待ち伏せするしか手はないだろ」

「ここで……? 俺が来るって、どうして」

「呼んでも来ねーし、逢いに行けば逃げるし、他にどうしようもなかった。ここにいれば……」


工藤の手が伸び、俺の頬に添えられる。


「……もしかしたら、快斗が…おまえが来るんじゃないかって。実は今日でもう四日目さ。寝不足で死にそうだ。落第したらおまえのせいだぜ」

「…………」

何も言えない。

知るかよ、とも、バカやろう、とも言えなかった。

風の中で抱き締められ、鼓動が重なる。俺と、工藤の。




――逢いたかった。



風にまぎれ、微かに届いた独り言のような工藤の言葉。

俺は何も応えられずに――工藤の腕の中で、ただ、小さく頷いた。







20110315


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