遠雷《2/2》(新一×快斗)R18
カテゴリ★普通の高校生パラレル
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ざああー、と激しく降る雨の音が家中を包み込む。
夕立だ。再び雷が鳴った。
ピカッ。ゴロゴロ……。
オレを見る快斗の目が濡れたように光って見えた。
快斗の頬に手を伸ばす。
「快斗……ごめん。怖がらせちまった」
「ううん、俺も。ゴメン、新一……大丈夫だから」
熱く震える互いの肌を重ね合わせ、キスをした。柔らかな快斗の唇。
隙間を縫い、浅く舌先に触れる。ちゅっと吸うと、快斗もオレをちゅっと吸い返してきた。
唇を放し、薄闇の中で快斗の顔を見つめ直した。快斗もオレを見つめてる。心臓はドキンドキンと激しく鳴りっぱなしで、膨らんだ熱は増すばかりだ。どうしようもなく快斗が欲しい。こんなに欲しくて堪らない。
「!」
快斗が指先を伸ばしてオレに触れていた。
(わっ、よ、よせっ!)
ほんの少しなぞられただけで爆発しそうになる。ぎゅっと目を閉じて堪えたオレの状態が分かったのか、快斗が指を放してオレの背に手を回した。
こくん、と快斗が頷くのがわかった。
「………」
目を閉じた快斗の鼻先に軽くキスしてから、もう一度快斗の敏感な部分を探り直す。熱を持つ場所を求めて───自分を押し当てる。
ぐっと体を進めた。
快斗が何か声を上げたようだが、激しくなった雨音に遮られて聞こえない。
快斗の声が聞きたい。
没頭しそうになるのを我慢して徐々に穿っていきながら、少しでも快斗の声を聞き取ろうと折り重ねるように快斗に体をかぶせた。
「……あ、ああ……!」
大きく息を吐き出すような快斗の声。
強張っていた快斗の体がようやく緩んできたのが分かった。
一気に最深まで貫きたい衝動と必死に戦う。
快斗を苦しめちゃだめだ。独り善がりのセックスじゃダメなんだ。
懸命に自分に言い聞かせながら出来る限りゆっくりと深めてゆく。
「……し、んいち……!」
「快斗……苦しい?」
「……」
快斗が首を振ったようだ。
もう少し。自分を埋めきってしまうまで……。
「あ!」
快斗が体を跳ねさせ、切なく首を振る。到(とど)いたんだ。快斗の体の奥に。
次に雷が閃いた時、ギリギリ保っていたオレの理性は完全に吹き飛んでしまっていた。
全身が灼けるように熱い。この熱さを快斗にも伝えたい。
突くたび快斗の反応が強くなる。快斗が身を捩らせてオレの名を呼んでる。
快斗。
快斗……!!
さああ。さああ───。
「………………」
雨。
そっか。
雨降ってたんだ。
我に返った。眠ってたわけじゃないのに、今の今まで意識が途切れたようになっていた。体を起こそうとすると、快斗が『うっ』と呻いてうつ伏せた頭を枕に押し付けた。
それでオレは気が付いた。快斗の背を抱いて、まだ体は繋がったままだった。
「……快斗、ごめん!」
快斗を抱えて向かい合わせに交わしてたはずなのに、いつの間にか後ろから貫いてる。
そういえば───快斗の腰を掴んで引き寄せ、何度も強く体を揺らせていた……。
さーーーと、血の気が引く。
ヤバい。
あんなに独り善がりはダメだって自分に言い聞かせてたのに、途中からワケ分かんなくなってた。どうしてこの体勢になったんだか、その途中を憶えていない。
オレのバカッ。そんでめちゃくちゃもったいねえっ。快斗と繋がっている間の記憶が、半分夢の中だったみたいに霞んでるし!
何やってんだオレ・・・。
カッコつけてたって、どんだけ恋人の身を案じるようなこと思っていたって、これじゃオレもそこらの青少年と変わんないじゃん。〝性欲〟に人格乗っ取られてんじゃん!!
そおっと快斗から体を離したが、快斗の呻くような苦痛の声に真っ青になる。
「快斗、わるい。 オレ…気をつけてたのに、また夢中になっちまった」
ぐったりとシーツに沈み込んだ快斗は微かに背を上下させているが、黙ったまま動かない。
オレはマジで心配になって、枕元のライトを点して快斗の様子を見ようとした。
「……だめ、点けないで」
「快斗?」
「大丈夫だから……まだ、点けないで」
「でも……快斗」
「新一…ごめん、気を使わせて。心配しないで……俺、大丈夫だから」
って、快斗の声……すんげー掠れてる!
さっきまでの激しい夕立の音で快斗の声(悲鳴?)も分かんなかった……イヤ、聞こえてても分かんなかったかもだけど!(@@);;
快斗が重そうに上体を持ち上げ、ふうと息を吐いて寝返りを打った。シーツをたぐり寄せて、腰を隠す。
「……いいよ、ライト点けても」
パチッとスイッチを入れると、明かりに照らされた快斗が眩しそうに手のひらで目を覆った。それでも目の周りが赤く腫れてるのが判る。オレは穴があったら入りたいような気分になった。
「快斗ホントにごめ───」
「謝んないでよ……。新一がずっと俺の名前を呼んでくれてて、俺…うれしかったんだから」
「え……」
「新一の気持ちがすごく伝わってきて……うれしかった」
「快斗…!」
「だから、大丈夫。俺もちゃんと感じてたんだよ。新一のこと」
「………………」
「苦しくなって、なんだか余計に感じちゃったみたい。……恥ずかしいけど」
一生懸命オレの罪悪感を軽くしようとする快斗の言葉に、ありがたすぎて涙が出そうになる。
「なあ快斗、もし………次の時、あんまりつらかったらオレを殴っていいからな!」
「えっ?」
「オレが暴走しだしたら殴れよ。わかったな!」
「でも……」
「でもじゃねえ!」
「そんなことしたら、新一もっと興奮しそう」
「・・・」
(@@);;; げえーーーーっ。
オレ……、オレ、そんななのかっ (* *;??
してる最中、オレってそんな感じなのかーーっ??!!
顔面蒼白で絶句してると、快斗が『うふふ』と笑った。そして『わかったよ、次はぶん殴るから心配しないで』と言った。
……そ、そうしてくれ。 頼む。
もっと楽しい、もっとロマンチックな夜を目指していたのに……。
今夜のオレは贖罪の心を込めて快斗の僕(しもべ)に徹することにした。
恥ずかしがる快斗を抱えて風呂に連れて行き、痛々しい血の跡(ごめんよ…泣)もきれいに流し、傷付いた快斗の体を清めて手当をした。全部オレのせいだ。舞い上がって見境をなくしたオレが、大切な快斗を苦しめたと思うと、いくら快斗が笑って大丈夫と言ってくれても落ち込まないわけにいかない。
オレ、どうしちゃったんだろ。
ここまで自分を見失うなんて。
心の奥底では分かっていた。
快斗を〝独り占めしたい〟という欲のせいだということに。
快斗が他者に奪われやしないかという怖れが、このまえ白馬と直面したことで心にハッキリ刻まれてしまったんだ。
快斗を信じていればそんな怖れなど感じる必要ないのに、オレときたら────。
〝ゴロゴロ……ゴロゴロゴロ…………〟
遠雷の音だった。
雨の上がった静かな闇夜に空気を震わせ、遠雷がオレの心に轟いていた。
20120821
[8回]