名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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闇の虹彩《2/2》(××→キッド)
カテゴリ★闇に棲む蜘蛛
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輝く月の表の貌が〝怪盗キッド〟なら、その裏側に潜む影がこの私…

闇に棲むのが運命(さだめ)の〝スパイダー〟。


今度こそおまえは私に心まで砕かれ、ひれ伏すだろう。

そしておまえは私のものになる。
完全に。永遠に────。










────カチャン。

どうしたの、新一?

「あ…いや、付けなおそうとしたら滑って」

幼なじみの親父さんの探偵事務所。
夜も更け、事件現場から一緒に戻り、オレは自宅に帰ろうと立ち上がったところだった。

「……………」

幼なじみの怪訝な視線を感じながら、落とした腕時計を拾い上げる。

コナン時代から使っていた〝探偵〟仕様の時計をさらに改良し、博士に今のサイズに直してもらったものだ。

拾う瞬間、嫌なことを思い出していた。

────無造作に床に転がっていた怪盗キッドのモノクル。その飾り紐の〝欠けたクローバー〟を……。

オレは腕時計を拾い上げると事務所のドアから走り出た。
不穏な予感に駆られて。

見上げた夜空は真っ黒で、十六夜(いざよい)の月だけが明るく輝いていた。









マジックには種も仕掛けも、もちろんある。

私を見くびったわけではないだろうが、やはりまだ若い。稀有な才能があろうとも、手練れの私にかなうわけもない。

観客のないマジックの応酬。言葉にすれば滑稽だが、私と〝怪盗キッド〟にとっては自分の持つ技をぶつけ合う真剣な勝負だった。

そして……目の前には白いマジシャンが倒れていた。


外れて落ちていた怪盗のモノクルを私は拾い上げた。ほくそ笑みながら。
これで〝怪盗キッドのすべて〟が私のものになる。

もとより私の相手ではなかった。
せめてあと数年経験を積み、大勢の観客の前で失敗の許されぬ生のステージという修羅場をいくつもくぐるような時を経れば、多少は違っていたかもしれないが。

「それでも……よく挑みました。美しい人、あなたを賞賛しましょう。そしてあなたは〝私のもの〟になったのです。どうか歓んでいただきたい」

手に入れた美しい獲物を私は抱き上げた。


おまえに大空を翔ぶ自由はもうない。
私と共に暗い闇の中で生きるのだ。永遠に……私の毒に侵されて。
しかし苦痛はない。おまえには苦痛よりもっと堪え難い……〝快楽〟を与えよう。

私なしでは一時も過ごせぬように。

甘い声で鳴く、私だけに従順な美しいかごの鳥にしてあげよう……私の、キッド殿。

ク、ク、ク。


「ふっ。いい夢見てるみたいだな」

ハッとして腕の中を見た。

怪盗にはモノクルが付けられていた。きらりと反射した庭園の灯りが、私の視界を僅かに遮る。

「見せてもらうぜ、てめえの素顔も!」

腕を放し、飛び退こうとしたが間に合わなかった。

〝パシン!!〟

顔を打つ衝撃に言葉を失う。

────そんな。


「馬鹿な…!」

「おまえに拾わせたモノクルは偽もんだ。そう簡単に渡してたまるか!」

〝スパイダー〟の仮面にトランプ銃を直撃させた反動で、俺は〝スパイダー〟の腕から体を跳ねさせ人工庭園に降り立った。


パカリ、と、黒い仮面が割れる。



額の中心から、真っ二つに。



黒い仮面は左右に分かれ、ずるりと滑り落ちた。
その下に〝スパイダー〟の素顔が現れる。

まるで、氷の彫刻のような─────。


「〝スパイダー〟……おまえは…!?」




白銀の髪。


白い肌。


左の瞳は淡いブルー。


そして右の瞳は……


淡い、紅色をしていた。



(アルビノ───!!)


これが本当に〝スパイダー〟の素顔なのか。だとしたら。

「あ、待てっ〝スパイダー〟!!」

現れた時のように〝スパイダー〟はすいと闇に浮かび、片手で顔を覆いながら闇に溶けていった。

「〝スパイダー〟!!」


低い声が、遠のきながら俺の耳に響く。


────驚きました。私の素顔を暴いたのは、キッド殿が初めてです。

────決して誰にも見せぬと誓った素顔を暴かれた……私の負けと、認めましょう。あなたは私の仮面の僅かな死角に気付いておられた。見事です。


「逃げんのかっ〝スパイダー〟!」


────私の驕りが招いた結果でしょうか。あなたのフェイクを見抜けなかったとは。……いいえ、負け惜しみはやめましょう。キッド殿、あなたが勝ったのです。


姿はもう完全に見えない。徐々に届く声も小さくなってゆく。


────キッド殿に敬意を表して、私は手を引くことにいたします。


────残念ですよ…本当に。私は、本当にキッド殿が欲しかった。あなたを闇に、連れ帰りたかった。


「〝スパイダー〟!!」


────叶わぬ夢でした。ご機嫌よう、キッド殿。数々の御無礼、赦してはいただけないでしょうが…どうぞすべて悪夢だったと切り捨てられますよう。


────私はもとの闇に隠れます。いつかまた……闇を抜け出すチャンスが訪れるまで……失礼、怪盗キッド殿────。





風が吹き抜ける。


〝スパイダー〟の気配は完全に消えた。

落ちていたはずの〝スパイダー〟の割れた仮面も、失せていた。

かわりにその場所に落ちていたのは、奪わた俺の欠けたクローバーだった。

「………」

俺は恐る恐るクローバーに近付き、指を伸ばした。


そっと拾い上げる────。


周囲の気配を探ったが、しかしもう本当に何も起こらなかった。

なにも。


〝スパイダー〟は消えた。

俺の前から。

悪夢と共に、〝スパイダー〟は去ったのだ。













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「快斗!!」

「工藤…?」

走ってきた工藤に気付き、驚いて立ち止まった。
勢いのまま、がばっと工藤に抱き締められる。

「工藤、なんで……ここに?」

〝スパイダー〟との対決に勝ち、俺はクローバーを取り戻した。しかしなぜか気持ちは重いまま、独り街を彷徨っていたのだ。

「おまえがいると思ったから」

工藤がそう答えた。

「は…? バカじゃね? 何を根拠に」

「探偵の第六感さ」

言い方はナマイキだが、声は震えていた。吐く息も体もめちゃくちゃ熱い。

深夜二時をとうに過ぎているというのに、いったいいつから走り回っていたのか。

「…ただめくらめっぽう走り回ってたんじゃあ、第六感とは言えねーな」

「うるせえ。ちゃんと推理してヤマ張ったさ。だから見つけたんだ」

「ヤマってどんな」

「オレんちに向かう大通り」

「…………………」

そんな気はなかった、と言おうとしたが、そうかもしれないという気もした。

結局何も言えなくなった俺を、工藤はもっと深く抱き締めてきた。



しばらく、ただそうしていた。

二人して。
これでもかと、互いを抱き締め合いながら。









20121003


────────────────────────────────


あとがき

お粗末様です…(*_*;    一応このカテゴリはここで終わりというか区切りにしておきます。またそのうち快斗くんをイジメたくなったら、この設定をほじくり返して何か追加するかも?しれません~。

※アルビノという〝単語〟を持ち出したのはあくまで『闇に棲む』というイメージから連想し引用したもので、特に他意はありません。ご了承ください。


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