名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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工藤邸襲撃事件《3》
カテゴリ★17歳
※快斗くん視点
─────────────────


“ベリアル” の件で、懲りたのに。

探偵どもと一緒に居るなんて、最初から無理だってわかっていたはずなのに。

なのに、どうして俺は戻ってきてしまったんだ…?




「快斗…!」

「情けねーツラしやがって。真後ろに立つまで俺に気が付かないとは焼きが回ったな、工藤探偵」

───工藤探偵。

言ってしまってから心の中でしまったと思う。

この呼び方は怪盗のときのものだ。黒羽快斗はこんな呼び方はしない。

いつもの工藤なら、俺のそんな綻(ほころ)びを見つれれば、きっとフッと笑って目を細めるに違いない。

だけど、今は。


「…帰ったと思ってた」

「なんで阿笠博士ん家に行かねえんだよ。せめて服部が残るなら、と思ったのに」

頑なに警察に通報しようとしないのは、もしかしたら怪盗である俺のためなのか。

「一人で…考えたかったんだ」

「どこでだって考えられるだろ」

「また誰かを巻き添えにするかもしれないだろう…!」

顔を上げた工藤とまともに目が合う。

「工藤?」

と、不意に力を失ったように工藤が体を傾ける。

「あ、あぶねっ」

咄嗟に工藤を抱き止めた。

接する工藤の体が熱い。

「おい、熱があるぞ」

「なんでもない。薬の副作用だ。…たまにこうなる」

副作用だって?

俺を押し退け、工藤はふらふらとソファへ向かい、ドスンと倒れ込んだ。

「少し…じっとしていれば治まる。なんでもない」

もう一度 “なんでもない” と呟いて、工藤は目を閉じた。







・ ・ ・ ・




『ああ、熱が出たの、そう。このところ落ち着いていたんだけど』

電話で工藤のことを告げると、宮野さんはアッサリ肯定した。

『本人の言うとおり副作用でしょうね。一晩ゆっくり休めば治まるわ。黒羽くんが付いててくれるなら、工藤くんも安心するはずよ』

「安心って…それで治るのかよ」

『工藤くんに薬を処方してるのは私なんだから信じなさい。心と体ってひとつなのよ。心が不調のときは体にも負担がかかる。精神的に安定すれば副作用も徐々に治まってくるわ』

「工藤が飲んでる薬って、強い薬なのか」

『一般に流通している医薬品ではないわ。知りたい?』

「………いや、いい。安静にしてて治まるなら」

電話の向こうで宮野さんが微かなため息をつく。

『いい? 無理させちゃだめよ。ただそっと寄り添ってあげなさい。たぶん、それが一番効くから。カレーは寝かせておくからって工藤くんに伝えといて』


電話を切って、工藤の様子を確かめる。

吐息が浅くて速い。熱っぽそうだ。
ちゃんと寝かせてやらないと……。

改めて邸内を見渡して、その広さに心許なさを覚える。

一人で暮らすには広すぎるんだ。


元の体に戻ってからも、工藤は薬を飲んでいたのか。
例の薬の解毒薬か、その安定剤か何かだろうか。

いくら宮野さんが優秀な科学者で、信用できる人物で、確かな効き目の薬を処方されているんだとしても。

こんな家に一人で居て夜中に目が覚めたら、何でもなくたって不安にかられそうだ。


(宮野さんの言うとおり、今夜はここにいよう)


工藤が荷物を受け取る前に警告すべきだった。
俺が荷物を取りに行っていれば。
本当の宅配業者かどうか、その場で判断できたかもしれない。

本当は──今朝この近くまで来ていながら、会合に参加するかどうか、俺は直前まで迷っていた。
立ち止まって、考えては歩き出して。
往生際悪く、いったんは工藤邸の門の前まで来たのに通り過ぎたりして。

そうしたら、通りの向こうから黒っぽい服を着たサングラスの男が工藤邸の方をじっと窺ってるのに気が付いたんだ。

男も俺に気付いたのか、腕時計を見るような素振りをしながら歩き去っていった。

あの、鈍く光る腕時計──。

宅配業者を装った襲撃犯も、同じように光る腕時計をしていた。

俺は自分がどうすべきか迷っていて、異変に気付くチャンスがあったのにそれを放置してしまった。

甘かったのは俺だ。

工藤のせいじゃない。

工藤、おまえが悪いんじゃないんだ…。






・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ボォーン、と階下の時計が鳴る音がした。

暗い。

夜中の1時か…。

ぼんやりと浮かび上がるように記憶が蘇る。


(───あっ?!)


オレ、なんで寝てんだ?!

起きようとしてドキンと心臓が震え、いつもの副作用の症状だと思い出す。

そうか…熱が出て、クラクラして。
それでダウンしちまったのか。

(!)

ふわりとおでこを撫でられてビックリして固まる。

「工藤。目、覚めたのか。大丈夫だから、まだ寝てろ」

(か…快斗…!)

快斗がヨコに寝てた。

正確には、オレが寝ているベッドの布団の上の端っこに乗っかって、横になってる。

「快斗、風邪引くぞ」

「へへへ、俺の心配する前に自分の心配しろよ。うなされてたぜ」

「え…」

「それでも、いくらかマシになったみたいだな」

「あ、ああ。ありがとう。あれからずっと付いててくれたのか」

「まあな。主治医の宮野先生の指示だし」

「宮野が?」

「無理させないで、側にいろって。そしたら治まるってさ」

…宮野め。

若干引っかかるが、今は確かに嬉しい。
快斗がいる。それだけで。

「ここまで運んでくれたのか。重かっただろう」

「まあ、なんとか。勝手に部屋に入って悪かったけど。ソファじゃちゃんと休めないと思って」

「中に入れよ」

布団を持ち上げる。

「窮屈だろ。落ち着いたんなら、下で寝るよ」

行こうとする快斗の腕を掴んだ。

「快斗、ここで…一緒に寝よう」

普段なら言えそうにない言葉が難なく出る。

「でも」

「一緒にいたいんだ。側にいてほしい。ずっと」

まるで夢の中でプロポーズしているみたいなセリフだ。
快斗も似たような事を思ったのか、少し笑って頷いた。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

布団の中に快斗が滑り込んでくる。

「温ったけ〜…」

額を寄せ合い、快斗の吐息を感じて目を閉じる。
何か、もっと伝えようとしていたのに、オレはすぐにまた眠ってしまったようだ。
快斗も一緒に。

二人で、丸くくるまって。

そっと指を重ねて…。





つづく
─────────────────





※もっとワーっという展開を想定してたんですが何故かこうなりました…(*_*;
   更新が遅いうえに進展も遅くてスミマセン!

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