名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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噂の二人 partIII《3/3》R18

――――――――――――――――――

「まったく…君は。いいムードになりかけたのに、どうして我慢してくれないんです」

「チクショウ白馬、覚えてろっ」


――僕の恋人は、とてつもなく純情で照れ屋だった。
同じ高校に通うクラスメートであり僕とは同い歳であるわけなのだが、彼はどうにも子供っぽいところがあり、ともすれば〝悪ガキ〟とでも形容したくなるような少年だった。
ただしそれは彼の一面に過ぎなかった。

僕が日本に戻り江古田高校に編入して間もない頃…ある時、ひやりとするような鋭い視線に射抜かれて狼狽えたことがある。その視線の先にいたのが彼――黒羽快斗だった。
僕の行動を読み機先を制すような鋭さを垣間見せた時、隠し持つもう一つの貌を彼は僕に覗かせた。その時、僕は彼に射抜かれたのだ……この胸を。

彼のもう一つの姿――それが巷を惑わす月下の奇術師〝怪盗キッド〟であると知ったのはその後だった。
その頃には僕はすでにクラスメートである黒羽快斗に…彼の抱える〝危うい均衡〟に心を奪われてしまっていた。その危うさの正体を知り、僕はますます彼から目が離せなくなったのだ。

僕は何度も自問自答した。僕が惹かれて止まないのは日常をともに過ごすクラスメートの黒羽快斗なのか、それとも彼がミステリアスな笑みで探偵である僕を翻弄する〝怪盗キッド〟だからなのか…。
悩んだ結果の答えは簡単だった。どちらも彼なのだ。二つの貌を使い分ける彼に、彼が秘める危うさに…自由に飛び回れる翼をもつ反面、両刃(もろは)のように彼を苛む〝孤独〟から、彼を少しでも護ってやりたくて――僕は彼から目が離せなくなった。それがひとつの恋の形だと自分で理解するまで、僕は僕なりに逡巡したのだ。それでも。


「白馬…?」

「――好きですよ、君のことが。僕は……本当に」

戸惑いながらも僕を受け入れようとしている彼に、切ないほどの愛しさに僕はたまらなくなる。

『君が好きです。君が好きです…』

何度繰り返せば伝わるだろう。
どうしたら君にわかってもらえるだろうか。僕の想いを。胸を灼くこの〝恋心〟を――。



互いに裸になってしまうと、彼はいっそ清々したように笑った。
温かく滑らかな素肌を慈しむ……。なぞると震える素直さに、均整のとれたその姿態の美しさに眩暈すら覚えて。指を絡め体を重ねて口付ける。
漏れ出る小さな吐息さえ逃がしたくない。俯く目許。顰めた眉。上気し薔薇色に染まる頬。そのすべてが僕の目の前に、いまこの腕の中にある。夢に見た時が訪れたのだ……。

ああ、と、堪えきれなくなったように彼がついに声を上げた。その声音が僕を煽る。どうしようもなく僕を熱くする。
大切な想い人を苦しませないよう十分に時間をかけたつもりだが、熱に浮かされて意識は掠れ、もはや僕は冷静ではいられなくなっていた。自分を制することが出来なくなった。

僕が加える律動のたびに腕の中で弾かれたように全身を震わせる僕の恋人…。僕が僅かに体を揺らすだけで、追いつめられていくようにその声が切なく深くなる。彼のそんな反応に、僕はより夢中に懸命になる。

僕は――いま以上苦しめないよう気付いながら、彼の琴線を探り続けた。
突然、アアアッ、と彼が大きく身を捩った。肩を抱いてもう一度。彼の体が跳ねかえる。もう一度…。涙で濡れた彼の瞳が見開かれた。
光る瞳で僕を睨み、彼は堪えきれなくなったように僕に訴えた。

『バカ…ッ、もう……やめろっ、へんになる……!』

僕は彼を引き寄せ、髪に指を通して頭を抱えた。目尻を伝い落ちる彼の涙を唇で掬い、乱れる吐息を抑えて微笑んだ。彼を繋ぎとめたまま。

『また…僕に捕まってくれますか』

『…………』

『次はいつ、捕まってくれますか』

『……ず…りぃ、ぞっ…』

熱く火照った頬。潤んだ瞳。それでも懸命に自分を保とうと発せられる強情な声。

僕は手に入れた。誰にも見せたことのない――僕だけに見せることを許してくれた彼のこんな表情を。

『好きです。黒羽くん…僕は君を……』

誰にも渡したくない。渡さない。
誰にも君を傷つけさせない。誰にも。誰にも……。















いつの間にか眠っていたようだ。

もぞもぞと腕の中で寝返りを打つ恋人の様子に気付いて僕は目を開けた。まだ外は暗い。さほど時間は経ってないようだ……。

「どうしましたか」

「…………シャワー、浴びたい」

「いいですが」

僕は体を起こして傍らにうずくまる彼を見下ろした。

「動けますか」

「…………」

「動けそうですか?」

「……分かんねぇ」

顔を背けて呟く彼の拗ねたような横顔に僕は微笑んだ。

「もう一度しましょうか」

「え」

「せっかくだから、もう一度」

「バカふざけんな。いまやったらシぬっ」

「どうしようかな」

そっぽを向いた頬に触れると、かあと熱が指先に伝わってきた。

「ふふ」

「笑うんじゃねえ」

「笑ってませんよ。君を見ているだけです」

「見んじゃねえっ」

「さっき、返事してくれませんでしたね」

「………………」

「これからも時々君を抱いて眠りたいのですが」

「……………」

「僕ら恋人同士ですよね。まさか一度の〝関係〟で済ませるつもりではないですよね」

「カンケーとか言うな」

「君が素直になってくれないからでしょう。……僕はますます君に夢中になりました」

「…………」

「黒羽くん、せめてこっちを向いてもらえませんか」

「やだ」

まったく。僕はため息を付いた。
手に入れたと思ったのは僕の一時の夢らしい。

「やはり君を手に入れるのは一筋縄ではいかない。分かってましたが」

「……ばかやろー」

「さっきからちっとも想いを通わせた恋人らしい言葉をかけてくれませんね。淋しいな」

「ぜいたく言うんじゃねーや。こっちはマジで途中シぬかと思ったんだ」

「それはすみませんでした。すっかり夢中になってしまって。あまりに君の反応がよくて思わず」

「テ…テメー!」

真っ赤になった黒羽がようやく僕を見てくれた。
僕はすかさず唇に口付けた。重ねるだけの。重ねて唇の柔らかさを確かめた。


僕らが出逢ってからまだそう長くない。これからも何が起こるかわからない日々が続くだろう。
なにせ彼は普通の高校生ではない。翼をもつ〝怪盗〟だ。僕を虜にした唯一の存在なのだ。
きっと目が離せない。

明日も明後日も、彼の存在を追う日が続くだろう。それは僕にとって願ってもない事だ。
願ってもない、胸を躍らせるときめく日々が――きっと僕らを待っているだろう。










20120524


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※ようやく白快両想いバージョン〝成就〟(^^;)。お付き合いいただきましてありがとうございました。


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