名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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噂の二人/江古田高文化祭/演劇・2年B組 『白雪姫』《3/3》

※ラストは快斗くん視点です。
★琥珀さん、37さん、拍手コメントありがとうございました(*^^*)! いただいたお言葉が何よりのオクスリですぅー♪♪
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振り上げた杖を魔女が舞台に激しく叩きつける。
直後に白光が閃いた。
暗幕の隙間をぬって轟く本物の雷鳴。


客席がどよめく。
体育館全体が魔女の呪いにかけられたかのように息をのんでいた。



場面転換。森に出かけたこびとたち。
こびとの家の留守を守る白雪姫のもとを〝リンゴ売り〟が訪れる。
────お婆さんになるのは『絶対にイヤ』と紅子がゴネた結果、黒のマントに身を包んだ〝妖しいリンゴ売り〟として現れることになった魔女。

「おや、これはかわいらしいお姫様。美味しいリンゴはいかが?」

「まあ…とってもキレイな赤いリンゴ!」

「ひとくち食べたら二度と忘れられない、それはそれは美味しいリンゴですよ」

黒い布の奥で微笑む魔女の唇。瞳は影になり見えない。

「くださいな! ええと、こびとたちにも一つずつ。八個あるかしら?」

「ありますとも。でもまず、おひとつ味見を。どうぞ…お姫様」

〝リンゴ売り〟がカゴの中から特別赤く輝く美しいリンゴを差し出した。

魔女の作った毒リンゴ。
小道具係が本物のリンゴになんかを塗ってツヤツヤ赤く映えるように加工して……あったはずだ。
白雪姫はそれをリンゴ売りから受け取り、ひとくちかじる。真似だけだ。
かじる音を効果音で表現する。だけど。

────とても、いい匂いがした。

マジで美味しそうな。思わずごくりと喉が鳴った。

照明を浴び、俺には〝リンゴ売りに化けた〟魔女の赤い爪と、その手の上にのせられた真っ赤なリンゴしか目に入っていなかった。魅入られるようにリンゴを両手で受け取る。

俺は台本どおり、そうっと手に持ち、少し高くかかげて香りをかぐ。
本当に美味しそうな、本物の果実の匂いだ。
どこかでなにか少し違うと思うのだが白雪姫の演技に没頭していた俺は────かじる真似だけでいいはずだったのに。
香りに誘われて……甘酸っぱく熟れた果実を、本当にひとくちかじってしまった。

すうと吸い込まれるように眠気に襲われる。

────あれ。

俺……何やってんだ?

真似だけでよかったのに。

どうして、ほんとうに……かじっちゃったんだろう?

かじったら、魔女の魔法にかかってしまうのに────。
森の奥から二度と……出られなくなって……しまう、のに……………。



白雪姫様! と、帰ってきたこびとたちが驚いて倒れた俺の周りを取り囲む。
みんな演技だと思ってる。意識はおぼろにある。だけど……うとうとして。半分夢の中にいるようで。
本番中なのに。ほんとに呪いにかかったように。
動けなくて……。



劇はつづいている。
うとうと。
〝硝子の棺〟に見立てた台に乗せられ、小道具が作ったカラフルな造花に囲まれて、俺は両手を胸で組んで音だけを聞いていた。


ごおおー、と効果音が響く。茨と紅蓮の炎が王子の行く手を阻む。『眠れる森の美女』から引用した、王子が魔女と対決するシーンだ。

幕裏で俺のそばに控えているこびとたちがアッと声を出す。
どうしたんだ? 何が起きてるんだろう…。

────王子よ、私の手を取りなさい。

冷酷な魔女の声にエコーがかかり響きわたる。

────白雪姫のことなど忘れよ。おいで。私のもとへ。



……あれ。王子の声が…聞こえない。
白馬。どうした?


────この赤い炎の中に〝真実の剣〟を投げ捨てなさい。そして私を愛すると誓うのです。

────さあ。この手を取りなさい。私を愛すると。キスをして誓うのです!!

ごおおおー。
激しい効果音。熱気までが伝わってくるようだ。



あ……!

魔女の前に跪く王子の姿が目に浮かんだ。 王子が魔女の手を取って。
その細い手の甲に……キスをする王子の姿が────。


なにやってんだ。王子の…バカヤロ。

魔女にそそのかされて。

白雪姫を忘れちまうのかよ……?

王子が助けてくれなけりゃ、

俺は…。

白雪姫は、永遠に眠りについたまま。

夢だけを見て。

いつか王子が迎えに来てくれると…その夢だけを見続けながら。

叶わぬ夢を見ながら、永遠に眠る────。





────王子さま、ダメーッ!!





────白雪姫を助けてあげてーっ、王子様ー!!



子供の声… 客席から?
手拍子が沸き起こっていた。王子を応援するように。手拍子がどんどん大きくなる。
どうなってんだろ…?
気になるけど、目が開かない。

────ドオォーーン……!!

激しい雷鳴。客席から悲鳴があがる。
音響か、本当の雷なのか、判らない。

ざわめきが漂い、広がっていく。


おいおい、いったいなにが起きてんだ?
劇、大丈夫なのかよ…?

「……?!」

ゴロゴロと俺の乗った台が移動し始めた。
舞台に出るのか。

じゃあ、ラストシーン……?

王子は魔女を、撃ち破ったのか……?



白雪姫様、白雪姫様、と声がする。

こびとたち。ちゃんと聞こえてるよ。

だけど目が開かないんだ。演技じゃなくて。マジで動けないんだよ。
俺…リンゴかじっちゃったから。

王子はいるの?




────そっと頬にふれる指先。

ああ。

王子が助けに来てくれたんだ……。
白馬の指だ。間違いない。
長くてきれいな。俺の好きな。白馬の、優しい指先……。


ふっと吐息が掠めた。

目が、開いた。


「……………」

「白雪姫」

「あ…れ?」


目は開いた。だけど、すげえ暗い。

頼りないような細い明かりが左上の方から何本か伸びていて────それがかろうじて俺と白馬を照らしていた。

「白雪姫。お迎えに参上しました」

「王子様…?」

「あなたを愛しているのです。白雪姫、どうか私の妃になってください」

「王子様。これは夢ではないの?」

なぜか、台本にないことを言ってしまった。マイクは活きている。声はちゃんと拾われていた。へんなの。こんなに暗くするとこだっけ……?

大勢が見守っているはずの舞台上なのに、周囲は真っ暗で。顔の半分を照らされた白馬の姿しか見えなくて。
そっか。このシーン、こびともいるはずだけど、台の横で跪いているから俺の位置からじゃ見えないんだ。

「夢はこれからですよ、白雪姫」

白馬の台詞も、台本にはないものだった。
俺は手を伸ばした。王子が俺を…白雪姫を抱き上げる。

パッと辺りが白く輝いた。
眩しさに目がくらむ。照明が戻った。

大団円だ────!
壇上すべてにライトが当たる。ハッピーエンドの音楽が鳴りだした。王子と白雪姫の周りで歓声を上げて踊り始めるこびとたち。

ほっとする。
終わりだ! 終幕だ! やったー!!
ワーッという拍手と歓声が耳に届いて、俺は客席の方へ顔を向けた。

そうして、俺はやっとハッキリ状況を認識した。
自分が白雪姫のカッコして、白馬に抱っこされて、体育館中にびっしり詰めかけた大勢の観客に注目されてることに。
そのコッ恥ずかしさに、ようやく気が付いたんだ。

うげええっ、なんだァこの観客の数っ(@@);;!
お、おれ、こんなおーぜーの前でお姫様やってたのぉ?!

「お、おろせっ! 白馬!」

「幕が下りるまでこのままでしょう」

「バァロッ! いーから早く降ろせっつーんだっ!」

「ダメです」

遠目には暴れてる俺がはしゃいでいるように見えたんだろうか。
なんだかさらに拍手が大きく湧き起こって……シぬかと思うほど赤面してる間に幕がやっっっと下りた。

あとは揉みくちゃになってわけが分からなくなった。走ってきた青子に抱きつかれて。カーテンコールでは上がれるだけの裏方もみんな壇上に出てお辞儀して。
アンコールでもう一度俺を抱っこしようとした王子ともみ合っているうちに、本当にすべてが終わった。




あとから聞いたら、王子が魔女に操られそうになった時、客席から応援が沸き起こったんだとか。そういや子供の声がして……手拍子が聞こえたっけ。
そして王子が魔女を打ち倒す瞬間に雷が落ち、なぜか照明だけが全部落ちた。
演出部はマッサオになったらしいが、二階の立ち見客がいるあたりから何本かの懐中電灯みたいな明かりが舞台に届いて、白馬はその中で演技を続行した。

────あの明かり、誰だったんだろう。誰に聞いても分からないと言う。お客さんじゃないかって言うけど、懐中電灯持ち歩いてるヤツなんかいるか? しかも一本だけじゃなかったようだし。
でもまあ、その集まった小さな明かりのおかげで〝王子の白雪姫へのキス〟がいい感じで演出されたんだから、生の舞台ってのは面白い。

え…?

王子は白雪姫に、舞台上で本当にキスをしたのかって?

まさか。

んなわけないじゃん。

〝ふり〟だよ、ふり。

なんか掠めたけど。温かな吐息が。

よくわかんなかった。

バァロ、白馬に訊くんじゃねえ!

いいんだよ、なんとなくで。劇は無事終わったんだから。

紅子に礼を言わなきゃな……。魔女の迫力が舞台を大きく盛り上げたんだ。何度も落ちた雷が紅子の力だったのかどうかまではわかんねえけど。
あの赤いカード…魔女の御守りのおかげで俺も大きくトチらずに演技できたし。
サンキューな、紅子。

…え?

あのカードの効き目、マジで俺しだいだった、ってどゆこと…?

信じれば叶う。
だけど疑えば暗鬼に囚われ、舞台の結末が変わっていたかも────だって?
なんだよそれ…?!
紅子っ、おめーよくもそんなアブないカード俺によこしやがったな!
あれ…カード消えてる。ちゃんと持ってたはずなのに。

でもまあ、いいか。

もう終わったんだ。

みんな頑張った。

俺たち頑張ったよな?

なんだかドッと疲れが出たよ。
こんなことなら、探偵や警察相手に怪盗やってる方がずっと楽だって。

俺寝る。もう眠くて。
さっきの毒リンゴ、やっぱあのせいじゃねえかな。あのリンゴをかじって動けなくなったのは、もしかしたら〝本物の魔女の呪い〟だったのかも……。

うう、もうだめ。起きてられない。
おやすみ。
起こさないでね。

俺、夕方まで教室で寝てっから。みんなは残り時間、文化祭を楽しんできてよ。

帰るとき、誰か起こして。

誰か俺を起こしにきてくれよな。

優しく、起こしに来てくれよな……。











20120923





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少々長いあとがき+ひとりごと(*_*;

軽いノリで始めた『白雪姫』、思わぬ長編?になってしまいました。もう一回付け足すと説明ばかりが増えそうなので、描写不足の点も多々ありますが、とりあえずはこれにて白雪姫編〝終演〟にしたいと思います。読んで下さった方、ここまでお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
心残りなのは、快斗くんがウトウトしちゃったため魔女との対決で頑張ったはずの白馬王子の描写と、紅子ちゃんの活躍をはしょってしまった事です。ゴメンね白馬くん、紅子ちゃん!!
さらにすっごく余分な説明を加えますと、照明が落ちた時に代わりに客席から舞台を照らした複数の小さな明かりは、新一と少年探偵団三人組の腕時計型懐中電灯です。客席から発せられた王子を応援する子供の声も、歩美ちゃんのつもりです。いずれ新一サイドの後日談が書ければその時書こうかなと思ってるんですが、いつになるか分からないので、先にここでぶっちゃけときます(汗)。

※個人的なハナシで恐縮ですが、じつは来週入院手術する予定でして。順調なら4~5日で退院できるはずなんですけど、全身麻酔って初めてなんで少々緊張気味です。
入院中でも可能な範囲でこそこそなんか書こうとは思ってるんですが、どうなりますか??
そんなわけで少し間が空くかも知れませんが、思い出したらまたお訪ね下さいませ。しばらく〝学園もの風〟づいていたので、またアブないイチャらぶな話を考えたいでーす(^^;)!


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