名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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ペガサスの翼《1/3》(白快前提 新一→快斗)
カテゴリ☆噂の二人《3》
※快斗くん視点にて。
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真っ直ぐに向けられた工藤の眼差しの矢。

それを俺はすぐに抜き去ったつもりだったんだ。

だけど……全部を抜くことは、出来なかった。

矢束を掴んで引っ張ったけど、尖った鏃(やじり)の先が欠けて、小さな欠片が残ったままになってしまった。
それか微かな熱を保って…俺の胸の奥で、思い出したように疼くんだ。

何やってんだろ、俺。
白馬を好きな気持ちは変わらないのに、工藤の事が気にかかるなんて。優柔不断で身勝手な……これって俺が一番キライなズル男じゃん。

白馬はそう遠くない日に俺が〝怪盗〟を封印すると信じて見守ってくれている。なのに、俺はそんな白馬に甘えてばかりだ。

白馬の腕を思い出す。
〝決して離さない〟と言って、強く俺を抱き締めた…あの腕の強さを────。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ベルツリータワー高層展望室。
予告時刻には警官隊が周囲を取り囲んでいた。当然予測通り。

少しだけ欠けた大きな月が夜空にぽかりと浮かんでいる。
今夜は風もない。絶好のフライトコンディションだ。

余計なことは、今は考えない。

俺は怪盗キッド。神出鬼没、確保不能の大怪盗。
誰にも邪魔はさせない────。



あらかじめ周囲に仕掛けておいた派手な爆竹で警官隊を誘い出して分断し、お宝に張り付いていたガードを投影した偽の俺に飛びつかせた。
それでも一人ジュエルのケースを抱えて離さなかった中森警部には、申し訳ないが特製ミニスタンガンでちょっぴり休憩してもらった。

警官隊員に変装していた俺は、警部を現場から移動させるふりをして、まんまとレッド・ダイヤ《赤眼の人魚》をゲットした。






「腕の怪我はよろしいのですか? 名探偵」

「ああ。ヒビだけだ。一応固めてある」

「では今夜はご無理なさらずとも」

「無理はしないさ。俺が来ないと、おまえが困るだろうと思って待ってたんだ」

まさかと思ったが、懲りない探偵は二日前にも対峙した同じ高層の屋外スペースで俺を待ち伏せていた。
その可能性があると分かっていて俺も予定を変えなかったんだが、それはあくまでも怪盗としてここが一番脱出に適していると判断したからだ。

「あなたにお会いしたかった訳ではありません。誤解のなきよう」

「そのジュエル、おまえの目的の物なのか?」

「………」

「まだ確かめてないなら、さっさと確かめろよ。目的の物でないなら、俺が戻しといてやる」

恩着せがましい。

「余計なお気遣いは無用です」

「確かめないのか?」

「…………」

月は明るい。翳せばすぐに判る。このジュエルの中に何かが在るか、無いか。

「目を離しても何もしないさ。オレのことは気にするな」

「どういう意味です?」

「さあ。ただ…慌てておまえを捕まえる必要はないと思って。ジュエルを戻すなら、だがな」

「…………」

「癪には障るが……実質この数ヶ月おまえが犯した罪に大したモンはない。せいぜいが器物損壊に公務執行妨害、業務威力妨害ってとこか。確保不能な怪盗の罪状にしちゃあ、つまらなすぎる」

「それは申し訳ありませんね、罪状までご心配いただいて」

身も蓋もない言われようだ。ムカつくがその通りだから仕方ない。目的はジュエルの先にある。

「それに」

「それに…?」

工藤は視線を落とした。

「いや、なんでもない。ここからはオレの個人的理由だ」

胸の欠片がチクリと痛む。何を言い掛けたのか。
────気にすまい。
工藤とは、こうして探偵と怪盗として月下で逢ってこそ通じるものがあるのだ。それだけだ。それを勘違いしてはいけない。

鉄のカラスが三機、近づいていた。
工藤が一歩前に出る。
俺は手にしたジュエルを投げ上げた。

キラリと光ったジュエルが月を横切る。レッドダイヤの中に、別の光は浮かばなかった。
それが判れば用はない。
柵にジャンプして飛び上がると、俺は宙を回転してジュエルを手に取った。そのまま工藤の方へジュエルを投げつつ自由落下に入る。高度はある。鉄のカラスにはついてこれない。真っ逆様に墜ちてゆく。

あばよ、工藤。
俺は怪盗。
おまえがもし、いつか黒羽快斗を捕まえに来たとしても、俺は絶対切り抜ける。

だって…俺はもう捕まっているんだ。もうとっくに、あいつの腕に捕まっているんだ────。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


キッドが投げ返してきたジュエルを受け取り、オレは柵から身を乗り出した。

気が遠くなるような高さだ。
小さくなって墜ちてゆくキッドの残像に息を呑む。

地上に墜落してしまうのではないかと目を瞑りかけた時、ぱっと白い翼が開いた。
超低空を、ビルとビルの間を縫うように飛び去ってゆく。たとえ腕のあるヘリのパイロットでも簡単に追うことは出来ないだろう。
やがて死角に隠れたところでキッドは消える。今夜も確保は不能だろう。

キッド。
オレは、おまえに惹かれてる。おまえと出逢ったあの時から。おまえの正体に気付く前から。

だけどこの想いに決着をつけるのは、もう少し先にしようと思う。
オレはおまえの本当の目的を探る。おまえがなぜビッグジュエルを盗んでは返すのか、その理由を調べてみる。

そうすれば本当のおまえが、きっともっとよく見えてくるはずだから。
怪盗の素顔を確かめるのはそれからでいい。

あのモノクルを、おまえ自身の手で外させたい。
おまえが本当の自分に戻る時…その瞬間に、オレは立ち合いたいんだ。





ペガサスの翼《2/3》へつづく

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