Loving tag(白馬×快斗)
カテゴリ☆噂の二人《3》
※2012.12.4up『矢の痕』の続き。快斗くん視点、タイトルは造語(汗)。
────────────────────────────────
あれ……。
気が付いたら布団かぶって寝てた。なんで?
ベッドのスプリングがぎしりと鳴る。
白い天井。蛍光灯。ベッドを囲む白い布の衝立(ついたて)。
学校の保健室か……。
俺、いつからここに?
寝たままフワァと大欠伸をして体を伸ばす。
なんだかスッキリしてる。久しぶりによく眠った。
そして首を巡らして〝げっ〟となった。
────すぐそばに白馬がいた。
こいつ、ずっと付いてたのか……?
保健室は温かかった。腕を組んで椅子に腰掛けた白馬は、背凭れに寄りかかり、こっくりこっくりと微かに船を漕いでいる。
「………………」
珍しい。白馬がこんなに油断した姿を学校で見せるなんて。
普段大人ぶってる白馬だが、静かに目を閉じた端正な寝顔は年相応に素直なものだ。
てゆーか…ちょっと、カワイイくらい。
たった二ヶ月だけど、俺の方が白馬より生まれは早いんだよなァ、とか考える。
いっつも保護者みたく俺をお子様扱いしやがるけど…。
そうっと起き上がった。
そして思い出す。
俺は……なんか頭がぼうっとして…帰ろうとして立ち上がったけど、教室の後ろで白馬にぶつかりそうになったんだ。んで、よくわかんねーけど急にくらっときて……こうなった。
白馬を近くに感じたせい……?
ひとりでカアァと赤くなった。
まじか、俺ってば。ハズカシい。条件反射か。
白馬をチラと見る。
そんでここに運ばれて、今まで寝てたのか……。
────黒羽くん、起きたの?
げげっ。保健の先生。
衝立の向こうから突然声をかけられて、焦って『ア、ハイ』と返事する。 よくある青春ドラマじゃないけど、わりかしイケてる独身の女の先生だ。
────王子、ホラ、お姫様が起きたわよ!
ベッドサイドに姿を見せた先生が、白馬の肩をポンポン叩く。
うわぁああ、起こさなくていいのに(* *;
てか、保健室の先生まで白馬と俺を王子&姫とか呼んでんじゃねえよっ(^^;)。
しかし逃げ出すわけにもいかず、ベッドから降りかけた格好のままで、俺は目を覚ました白馬と対面するハメになった。
「あっ……」
気が付いた白馬が、慌てたように顔を上げ、俺の方を見る。
「黒羽くん。よかった、いた」
「……………」
心底ほっとしたように微笑んだ白馬がなんだか愛しく思えて、俺も笑った。お互い寝起きで寝ぼけた顔してたけど。
短時間でも熟睡してスッキリしたせいだろうか、ずいぶん落ち着いた。
探偵としての工藤がこの先どう出てくるか、不安は消えないけど。
「どこまでくんだよ、白馬。今日はお迎えねえのかよ」
「ええ」
少し間をあけ俺と並んで歩く白馬は、何を問うでもなく付いて来る。
俺は俺で白馬を近くに感じて実は秘かに安堵なんか覚えている。
〝好き〟って、こういうことなのかな。
何も話さなくても。
行き違いや誤解があったとしても。 ふとした瞬間、ほんの一時見つめ合っただけで澱みがすうっと溶けてゆく。
「白馬…」
「なんですか」
「工藤の申し込みはハッキリ断ったぜ」
「いつ」
「あの次の日、帝丹に行って工藤に会ってきた」
「えっ」
そしてバレた。
歩道橋の上で、工藤はおそらく気が付いた。俺が〝怪盗〟であることに。
立ち止まった白馬がじっと目を凝らして俺を見る。
「君は、だから目が離せない」
「俺にかまうなよ」
「そうはいきません」
「バァーカ、見くびんな。んじゃ、ここでな」
「待ちたまえ、黒羽くん!」
「やなこったー」
俺は駆け出した。自慢じゃないが脚は陸上部のエースにも引けを取らない。追い付けないと分かっているから、白馬は追ってはこない。いつもなら。
だが、この日の白馬は追いかけてきた。
すぐに振り切れる。そう思ったが、白馬は差が開いても追ってきた。
姿が見えなくなって、もう諦めたかと思って歩き出すと、いつの間にか後ろに迫ってきている。
何度かそんな事を繰り返しているうち、苦しそうに顔をゆがめてそれでも追ってくる白馬に、俺は呆れて立ち止まった。
はぁはぁ、と息を切らせ大きく喘ぎながら白馬は俺のそばまでやってきた。
いつも理路整然とした態度で汗などかく素振りも見せない白馬からは、およそかけ離れたフラフラぶりだ。
住宅街の路地裏だった。
陽はとっくに落ちて、通り過ぎる車のライトが俺たちを掠めて行く。
「……くろば、くん」
「帰れよ。しつけーな」
「帰りません。君を離さないと、僕は誓ったのです」
「…………」
アホか、と言おうとしたが、言えなくなる。
白馬があまりに真っ直ぐ見つめてきて。街灯を映して琥珀色した瞳が、どんどん近付いてきて。
「俺を…甘やかすんじゃねぇよ」
頼る気はない。面倒に巻き込みたくもない。
しかしフッと笑った白馬は、路地裏の塀際で動けなくなった俺を抱き寄せた。
「馬鹿、誰かに見られ…」
「僕たちは恋人同士です。誰にも文句は言わせない」
「そ、そーゆー問題じゃねーって」
「黙って。少しムードを大切にして下さい」
走って温まった体はポカポカして熱いくらいだった。白馬の制服に顔がぎゅうとくっつく。
白馬の鼓動が伝わってきて、俺はますます動けなくなった。
『君の背中が遠ざかるのを、ただ見送るのは、僕はもう懲り懲りなんです』
そう言って、白馬は長い腕と大きな手で俺を強く抱き締めた。
20121225
────────────────────────────────
※タイトルは『追いかけっこ』の英訳〝plaing tag〟をもじりました(*_*;
※本日はメリー・クリスマス!ですね♪
年末年始にかけて、白快スペシャル週間にしようかな~なんて思い立ちました。冬の怪盗キッドスペシャル的なノリで(^^;)。ただの思い付きなので、何本、どんなのが書けるか分かりませんが…(汗汗)。
[10回]