名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

ブログ内検索
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カウンター
プロフィール
HN:
ronin
性別:
女性
自己紹介:
2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
Script:Ninja Blog 
Design by:タイムカプセル
 

放課後3《3/3》
カテゴリ★放課後(白快)
────────────────────────────────

「黒羽くん、君は……」

白馬の声が頭の中にこだまする。


「君は───泣いていたのですか」


バカ言うなと、否定しようとしたが声にならなかった。
自分でも気付いていなかったのだ。
流れ行く雲を目で追いながら、いつの間にか涙が零れていたことに。

俺は白馬に掴まれた腕を振り解いた。
だが勢いでバランスを崩して転びそうになり、再び白馬に支えられ囚われてしまう。

(あっ…!)

抱き締められた。強い力で。
白馬の掌に頸を支えるようにして持たれ、動きを封じられる。

……白馬の、匂い。

朦朧としながら抱かれた日の記憶が蘇る。
だが、それは決して嫌悪ではなかった。だからこそ───畏れていたのだ。だからこそ近付かないよう注意を払い、距離をおいていたのだ。それなのに。

動けない。どうしていいか分からない。


「はな…せ、白馬…!」

「いいえ。放しません」

「…な、せって!!」

このまま……白馬の側にいたら。

こんなに強く抱き締められたら───。

取り返しがつかなくなる。
温もりに惹かれて、離れられなくなる。それが怖い。
怖いんだ。だから放してくれ。独りでいられなくなってしまうから…!

俺はこの場を逃れようと必死にもがいた。しかし白馬も俺をきつく抱き締めて放さない。

息が、詰まる。
苦しくなって喘いだ。すぐ目の前に白馬の瞳がある。逸らした頬に白馬の唇が触れた。

「は…く…ば…!」

「黒羽くん…赦してくれなくてもいい。それでも───僕は…僕は、君が──」

「言うな!」

「何故です…?! 想いを伝えることすら…許してはくれないのですか」

「言うな…、それ以上言うなっ」

背中が何かに突き当たる。屋上の縁だ。鉄柵の硬い感触がそれ以上避けることは叶わないと俺に思い知らせる。

「───黒羽くん」

「…………」



風に半分吹き消されるほどの、微かな囁きだった。




〝 君 が 好 き で す 〟




そう───聞こえた。


風と共に俺の耳朶を震わせ、甘い響きは鼓膜から頭の芯へ……そうしてやがて胸に届いた。

俺の背を強く抱いていたはずの白馬の手が、その長い指先が、いつの間にか俺の頬を包み込んでいた。

柔らかく覆われる。甘い吐息に。






重ねられた唇。



───柔らかな、その温もりに安堵する。


分からない。いまも、どうしていいのか分からないでいる。なのに。

白馬の口付けの優しさに、覚えるのはただ、ひたすらな安堵だった。


抗い難い睡魔の誘惑のように。
この優しさに、この温もりにずっと身を委ねていられたら。もしそれが叶うなら……。



唇が放されても、俺はもう動けなかった。
白馬の唇に顔中を擽(くすぐ)られる。

〝調子に乗んじゃねえ〟

そんな言葉を吐いて強がるのが精一杯だった。

陽が完全に落ちてしまうまで、風の中で白馬に抱き締められ立ち尽くしていた。
互いにどうすることも出来ないまま。ただ身を寄せ合い、青白く霞む十二夜の月明かりに照らされて。

このまま屋上に取り残されても構わない。

離れがたさに零れた涙を、白馬の唇に掬われた。










20120630


拍手[15回]