名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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硝子の欠片3《3/3》(白馬×快斗)
──────────────────


『ありがとうございます』と白馬は言った。

そして『さようなら』と。



軽いノリ(のつもり)で自宅へ誘った俺に──たぶん憤りを覚えたんだろう。
つまり俺は軽いノリで白馬を傷付けてしまった。

白馬を連れて家に戻ろうと数歩いったところで、後ろから白馬の掠れた声が聞こえた。
振り向こうとしたら『こっちを見ないで下さい!』と強く止められ、バサッと制服の上着を頭から被せられた。
白馬は言った。

『誘ってくれてありがとう…黒羽くん。しかし、僕は』

『…僕には全く自信がない。こんな気持ちで』

『こんな想いを抱えたまま、君の家に押し掛けるわけにはいかない』

『君にとって僕はクラスメートの一人に過ぎないのだと───思い知るのはつらいのです』 

『僕の一方的な想いであることは承知している。押し付けたくはない…僕は』

『今の僕は…自分を抑える自信がないのです。君の良きクラスメートでいられる自信がない。だから』

『やはりここで失礼します。面倒をかけて申し訳なかった。忘れてくれたまえ』

『誘ってくれてありがとうございます。嬉しかった。…さようなら』



───そして、白馬の気配は消えた。



俺は白馬の温もりが残る白馬の制服を頭から被ったまま、自分がどれだけ迂闊な事をしたのか嫌と言うほど思い知った。

これまで通り白馬と距離を保ったまま誤魔化そうとした。自分に都合がいいように。 
白馬のあの告白を、俺はスルーしようとした。

もしも立場が逆だったら…?

そう考えたら、ずんと胸が苦しくなった。
自分の狡さが情け無くなった。
探偵だとか怪盗だとか、そんなのは俺の言い訳だった。
自分に想いを向けてくれた相手に正面から向き合おうとせず。自分の気持ちすら認めようとせずに。

俺は──白馬を、傷付けたのだ。













・・・  ・・・  ・・・ 







 
───おっは~、アレ白馬、上衣着てねえの?

ええ。家に忘れてきました。

そう応えると、僕に声をかけてきたクラスの男子生徒は『えええ? マジかよ』と仰け反って笑った。
昨日の夕刻、校庭にいた運動部の部員だった。

朝の教室。

射し込む朝日。

しかし僕の心は塞いでいた。

覚悟していたことだ。そう簡単に黒羽に想いが届くわけがない。

追えば逃げる怪盗。
しかし此処にいる僕にとって、彼は怪盗ではないのだ。
彼は…。

考えて考えて、一晩中考えたが堂々巡りだった。
正解なんてない。
それでも僕の想いは変えられない。

もし、あのまま黒羽の誘いを受け、クラスメートとして過ごすことが出来ていたら。
…そうしていれば良かったのだろう。そう出来ていたなら。

予鈴のチャイムが鳴る。
しかし、黒羽はまだ来ない。
毎度のことなので、席に着いたクラスメートたちもさほど気にしてはいない。
大抵黒羽はギリギリに駆け付けるか、先生が来る頃慌てて現れるか、授業中にそっと屈んで後ろの扉から入ってきたりする。
そして〝えへへ〟と頭をかいて席に着き、一頻り先生の小言をくらう。
ありふれた日常の光景だ。
そのありふれた光景を、今の僕は途轍もなく待ち望んでいる。

来てくれ…黒羽くん。
何もなかったことにしてくれて構わない。
僕はピエロに徹しよう。再び固く想いを封じ、離れた場所からただ君を見守るから。
だから…来てくれ、黒羽くん。


───先生、遅いね。

朝の打ち合わせが長引いているのか、先生がなかなか来ない。
クラスの皆がざわざわと私語を交わし始める。
誰かが窓の外を見て『あっ』と声を上げた。

───快斗だ。

───やっと来た!

───なぁにぃ? あの萌え袖!

「……?」

廊下寄りの僕の席から校庭は見えない。僕は皆の声を聞きながら、本を読む振りを続けていた。

───制服の上着、ブカブカじゃん!

───自分の制服じゃないみたい~。

そして誰かが言った。

───白馬の上衣だったりして。

───えっ、なんで?!

皆が一斉に僕を見る。
僕は上衣を着ていない。シャツの上はベストだけだ。

───うそお~。

───白馬くん、上衣は?!

───なんで快斗が白馬の上衣着てんだよ?

ざわざわと浮き足立つ教室。皆が席を立って窓際に集まる。
本鈴が鳴った。
扉が開き、入ってきた担任の先生が吃驚する。

───どうしたの? みんなちゃんと席に着きなさい! 何を見てるの。

───先生、ちょっとだけ待って。

───黒羽くんが。

黒羽くんが?と反復し、先生も教壇を横切り窓際へ近付く。
そして窓を開けた。

───こらーっ、黒羽くん、何してるの。早く教室に入りなさいーっ!!

先生の声は、思いのほか校庭に響き渡った。

───あれ、快斗のやつ真ん中で止まったぞ。

───黒羽くん、こっち見てる!







》》はーくーばーーーーー!!!《《





黒羽が叫ぶ。
わっ、と皆が湧いた。
(…はくば…はくば…はくば───)と、校舎に黒羽の声がぶつかってまだこだましている。

───白馬くん、ほら!

───白馬、快斗が呼んでるぞ!

───何やってんだよ、こっち来いよ!

僕はまだ動けず、席に着いていた。

黒羽が何を始めるのかとクラスには期待感に満ち、それぞれが小さく歓声をあげている。先生も暫く事の成り行きを見守る様子だ。

それでも僕は席を立てなかった。
覚悟をしてきたはずなのに。黒羽の次の一言が怖くて。



》》白馬ー、いねえのかーーっ!!《《



ガタガタガヤガヤと廊下に他クラスの生徒の気配がし、白馬いるじゃんか、と声が聞こえる。

───白馬くん、来て!!

駆けてきて僕の腕を掴み、引っ張ったのは中森さんだった。
誰かが後ろから僕の体を引っ張り上げる。昨日校庭にいた、さっきのクラスメートだ。


》》白馬ー!よく聞けー!一回しか言わねえからなーー!!!《《


(…いっかいしか…いっかいしか…) 


こだまする黒羽の声。
僕はクラスの皆に押され、窓辺にたどり着いた。
黒羽がいる。校庭のど真ん中に一人立ち、僕の上衣を着てこっちを見上げている。

目が合った。



》》白馬ー!!、俺も…お前の事がーーーーっ……《《



ドクン、と、心臓が跳ねた。








静寂。



学校全体がしんと静まりかえる。


遠くの電車の音が聞こえるほどに。


まるで人っ子一人、いないかのように───。











》》俺も、白馬が、好きだーーーーーーっ!!!《《













(…はくばがすきだー…はくばがすきだー……)





わんわんと校庭に黒羽の声がこだまする。

僕は小さな黒羽の姿を見つめていた。

いま彼は僕に背中ではなく、正面を向けている。

黒羽は僕を見ていた。

───白馬くん、早く捕まえないと快斗また逃げちゃうよ!!

───そうだ、逃がすな、白馬!

───急いで、急いで、白馬くん!

僕は我に返り、そして教室を飛び出した。

大きな歓声が廊下に響いていた。















「黒羽くん!」

「遅せえんだよ!」

駆け寄っていくと、少し頬を上気させた黒羽が眩しそうに目を細めて笑っていた。


───白馬ー、キスだ!キスしろー!

───白黒カップルおめでとー!!


キャアキャアと校舎から声が聞こえる。本当は駆け寄って黒羽を抱き締めたかった。
しかし、学校中の窓という窓から注視を浴びてしまっている。
黒羽の少し手前で立ち止まりかけた時────。


「Lady's & gentleman!!」


両手を広げた黒羽の指先に丸い物が挟まっていた。


ポン、ポン、ポン、ポン!!!!


煙幕弾。
目の前がパステルピンクの煙に遮られる。
奇跡的なタイミングだった。ほんの数秒間、校庭はほぼ無風状態に近かった。
煙幕の中で黒羽が僕に跳び付いてきた。僕は黒羽の体を受け止め、夢中で抱き締めた。
『イテッ』と黒羽が僅かに体を捩る。怪我のことを失念していた僕は、慌てて腕の力を緩めた。

そして煙幕が掠れ、周囲がうっすら見えてきた時、僕と黒羽はキスを交わしていた。
僕が校舎を背にしていたので、おそらく皆にはよく見えなかったはずだ。

黒羽がヘヘッと笑い、駆け出した。僕らのクラスへ向かって。

僕は黒羽を追いかけた。
煙が染みて目が霞んだが、気にならなかった。









20171213
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※肩透かしのお詫び・反省・言い訳・その他諸々は後ほど…(*_*;

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