帰還《2/2》(新一×快斗)R18
カテゴリ★インターセプト《番外編》
※ぬるいですスミマセン(*_*;
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快斗からの折り返しはなかった。
メッセージを読んだかどうかも分からない。
ただ待つ時間は長かった。
もう一度連絡するか、直接携帯を鳴らそうかと思いながら、結局出来ずにオレは半分諦めてベッドに寝ころんだ。
カーテンの隙間から覗く夜空に月はない。
新月だ。
あの夜───煌々と輝いていた奇跡の月は、今もそこにあるはずなのに。
見えない月に手を伸ばそうとしてためらう。
快斗にはまだ時間が必要なのかもしれない。無理強いして苦しめるようなことがあってはいけない。
考え過ぎかもしれない。
だが…、もし今夜このまま快斗が現れなかったら、オレはこの先きっともっとためらってしまうだろう。
手を差し伸べたいのに出来ない。
抱き締めて…鼓動を確かめたいのに。
こんなに──。
「!」
ハッと目を開けた。
階下に気配がする。オレは部屋を飛び出した。
「──遅かったな」
上擦る気持ちを抑え、エントランスに立つ快斗に声をかけた。オレの気も知らずに、快斗はイタズラ小僧のように〝イヒヒ〟と笑った。
「来ないと思った?」
「……」
ふざけんな。
バカやろう。
待たせやがって。
以前なら言えたはずの言葉が出てこない。快斗の顔を見て、安堵して。切なくて。
オレが黙り込んでしまったからか、快斗も少し慌てた感じで言い訳してきた。途中で警官に出くわしたからだとか何とか。
『未成年が深夜徘徊してたら職務質問&保護するのが警官の義務だ』とオレが返すと、『だったら夜中に呼ぶなよ』と快斗が頬を膨らませた。
目が合い、互いに吹き出した。
オレはようやく快斗に歩み寄ることが出来た。快斗の肩を抱く。
春の夜風を纏った快斗の匂いはどこか懐かしく、オレの胸に染み込んだ。
オレがあんまりギクシャクしているもんだから、快斗が面白がって『そういえば』と話し出した。
あの時、名探偵めちゃくちゃテンパってたよなぁ。
あの時って…。
この前。最後にここへ来た時。
最後に…?
心臓を掴まれるような痛みを思い出し、苦しくなった。
あれは快斗が失踪する直前のことだ。ただし立場は逆だった。快斗はキッドの姿で現れ、オレを──。
へへへ、と思い出し笑いしていた快斗の目が不意に潤む。
戻ってこられないかもって思ってたんだ…あの時。そう言って。
オレも思い出していた。
快斗が戻ってきたら、文句を言ってやろうと思ってたんだ。
勝手に一人で覚悟を決めて、勝手に行っちまいやがって。白馬には告げたくせに、オレには何も言わず、オレを置き去りにして消えちまいやがって──。
快斗の唇が〝ごめん〟と動いた。
オレは快斗に口付けた。ずっとずっと夢に見ていた瞬間だった。
熱い。
互いの吐息がぶつかる。
深く穿つと、快斗は〝ああっ〟と声をあげ、顔を逸らせた。
快斗はオレが気付いてないと思っているのだろう。はっきりそうと解る(陵辱を受けた)痕はない。それでも。
なんとなく解るのだ。
オレを見上げる快斗の眼にちらつく影が。懸命に堪えようとする声が。
オレに気付かれまいとしていることが。
いいんだよ、と言ってやりたかった。
言えない代わりに口付けた。何度も。淡く、深く。漏れ出る嘆きのすべてをオレのものに…二人のものにしたい。
──あっ…、く…、くどう…っ!
ゆらゆら一緒に揺れながら、快斗の琴線を弾く。
快斗の肌が粟立ち、大きく震え出す。
まだだ、まだだ…。心の中で唱えながら、オレはさらに快斗を引き寄せた。
どんなに想い合っていても、近付けない平行線だったオレたちが、いま本当に交わり、一つになれたんだ。
どこにも行くな、快斗。
もう二度と、オレの手の届かないところに行くな…!
オレは快斗の手に自分の手のひらを重ね、指を通して強く握りしめた。
一つになったまま、両手を繋ぎ、唇を合わせた。
───ふっと息が止まる。
痺れが全身に伝わり、頭の先まで突き抜けた。
ともに到達した歓びに満たされながら、互いに抱き締め合った。
快斗。お帰り。そう呟くと、快斗は微笑み、そして小さく〝うん〟と頷いた。
20160428
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※お粗末様です…どこまでいっても甘々なので、ここらにしときます~(*_*;
●拍手御礼
「確率」「加虐実験」「ブラックシャドウ」「ウルトラキッス」「Love cuffs」「ためらい(仮題)」へ、拍手ありがとうございましたー(^^);;
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